018 道すがら
次から章を変えます。あと、今回の話はグロいかも知れません。
胃に何もない時に読む事を推奨します。(念の為)
どうしようorz 更新が出来なさすぎて、物語のスタートラインにすら立っていない主人公(^^;;
ま、まあ。今の用事が終われば何とかなるでしょう!(というかします。)
ではどうぞ‼︎
《改稿したのは、以下にあった雑談を削除したため。》
空が白み始め、鳥のさえずりが聞こえる。
ヘリスの周りにはエルフの遠征隊が集合していた。
エルラからの報告では、エルムの息子であるエルオを指揮官に据えた防衛隊を、エルフを十人ほど村に残していくことに決めた様だ。
こちらは馬鹿トリオを含めた十人ちょい。
言い慣れたから馬鹿トリオと言っているが、元々素質が凄かったのか、代行者に扱かれて別人のようだったりする。主に人相が。
〔エルラお疲れ様。みんな揃ったな?〕
「はい。何かお言葉をお願いします。」
む? ……そんな無茶振りされてもな。
〔えー、じゃあ三つだけ。一つは相手に敬意を払う。一つは安全第一。一つは……敵は早急に無力化せよ? 身体を欠損させるのは最終手段で。〕
「わかりました。」
エルラは遠征隊に向き直り、息を吸った。
「聞きなさい! 」
少しざわついていたエルフ達が静かになる。
「ヘリス様の御言葉です。『我々はドワトランへ向かう。相手に敬意を払うが、我々の生命を脅かす敵が現れた場合は、それ相応の対処をせよ。皆の無事を祈る。』以上。」
ちょっとニュアンスが違う、様な気がしない事もないが……まあ、大まかな部分は同じだし良いか。
エルラは少し息を吐き、勢い良く吸った。
「これより! ドワトランへ出立する‼︎」
「「「「「おおおおおお‼︎」」」」」
遠征隊は拳を高く突き上げて応えた。
皆、ちょっと大袈裟だぜ。
十匹いる狼にそれぞれ跨がる。この時、エルフの方が数が多いので、二つほど二人乗りする組があった。
ニル、もといレイナから貰った馬は今回使わない。恐らく、黒狼の方が断然速いからだ。従って、ニルは村で飼う事になった。
黒狼が駆けている間に、色々整理しておこう。
まず、ドワトランへの遠征はここの生活をより豊かにするのが目的だ。豊かにするのには訳がある。
自分で救済というノルマについて考えてみたが、療養所やら孤児院やらすれば手っ取り早いのでは? とか理不尽に奴隷にされた人達を買取って、好条件で雇用する機会を作ってみるのも良いか? みたいな事を思い付いた。
将来的には保養地みたく運営できれば理想かな。
これらを達成するにはこの村の発展が不可欠。
まあ、そんなシンプルというか安易というか、自営業をやった事がない素人ができるかどうか怪しい計画を遂行する予定だ。
次は遠征の目的地のドワトランについて。実はトラルドで、遊ぶついでに下調べしていたのだ。
ドワトランは大洞窟の内部で繁栄した国家、というのは聞いていたが、驚く事に球状の空間が筒状の空間でつながった様な、分子模型の炭化水素の様な形をしているらしい。いや、蟻の巣と言った方がわかり易いか。
この独特な形はもしかすると、活動が停止した火山のマグマ溜まりが空洞となり、そのまま使われているのでは? と推測していたりする。実際に行って見ないとわからないが。
兎に角、規模が半端ないらしい。球状の空間一つ一つに自治体があり、それらを統轄する形で政府の役割を担う組織が設置されている。
"ヨルムンガンド"。これがドワトランを治めている組織の総称であり、権力の象徴である。そして首都の、ニダヴと呼ばれる最も広大な球状空間にヨルムンガンドの本部がある。
ヨルムンガンドの名前の由来は分かっていないが、統領が倒した大蛇の怪物の名前だとか。格好良過ぎるぞ統領。
ちなみに、統領は他の国で言うところの王様みたいな位置付けらしい。
ドワトランの最重要人物、ヨルムンガンドのトップにして、国家元首であるダナル=ドワール統領。この人は、噂を引っ括めると傑物の一言に尽きる。
ヨルムンガンドの話から分かる通り、戦う(魔)王様。
しかも、ヨルムンガンド討伐の噂には補足があり、ダナルが単独で、馬鹿でかい山のようなヨルムンガンドを仕留めたらしい。やはり一文字(魔)いると思う。
〔ヘリス様。〕
イカンイカン。ちょっと考え過ぎていた様だ。エルムの意思伝達で意識を引き上げられた。
エルム達はいつの間にか、もう少しで森が終わる所で姿勢を低くして待機している。やはり黒狼は馬より速い様だ。ゆっくり行っても4日ほどで着きそうだな。
ドワトランはテトリアより離れているからそのくらいだろう。テトリアは、馬で3、4日徹夜で走らせて着くとかだったし、それを考えると黒狼は結構速い。
〔エルム、どうした?〕
森が終わっても特に声をかける必要は無いよな。
〔あれを。〕
エルムが指を指した方向には、明らかに場違いな奇妙な物体が静止していた。
──胴体が長くて、緑や灰色のモヤモヤした模様があり、胴体から棘がいっぱい生えていて、その下には横に転がした複数の円柱の曲面に沿ってぐるっと板が回してあり──
〔 ……は⁉︎〕
俺、これ知ってる。
いや、これそのものは詳しく知らないけど、部分部分の名称が前世にあった。
まず、電車の車両の様に長い、迷彩塗装が施された車体。それの至る所から突き出す棘、否、砲身。
そしてそれらを支えるのは、大凡戦車二つ分の無限軌道。前後に分かれていて、独立して動きそうだ。
先頭には御丁寧にヘッドライト。そして放射状に板で仕切られた、円環状に空いた穴──形から見るに、恐らく吸 気 口。──があった。
ヘリス達は知らないが、これの正式名称は『兵站支援装甲車』。通称『魔裂車』と呼ばれる、魔導機構 を搭載した魔工兵器である。
無限軌道の台そのものが回転するため平行移動が可能であり、そして右に高速回頭する場合は前の無限軌道を右向きに、後ろの無限軌道を左向きに作動させ、左に回頭するならばその逆といった動作をするため、小回りが利き機動性に優れている。
長い車体と戦車二つ分の無限軌道で大量の物資と兵士を運ぶ事ができるが、森などでは長い事が逆に仇となり機動性が著しく落ちる為、主に平地や砂漠等での運用を想定されている。
〔何だと思う?〕
最近聞いた話に似た様な物があったが、確認の為にエルムに尋ねる。
〔皇国の物だと思われます。〕
返ってきたのは考えていた通りだった。
皇国か……ここら辺で飛び抜けて技術力がある様だ。動力が魔法かどうかとか色々調べてみたいが、下手に接触すると何が起きるかわかったもんじゃ無いしな。
しばらく見ていると、西の方角から武装した男が十人ほどやってきた。そしてその男達に護衛される様に、薄緑の作業着を着た男が一人歩いている。
武装した男達は灰色の軍服の様な不思議な服を着ていて、薄緑の作業着の男は武器の代わりに鳥を一羽捕まえていた。鳥は痙攣しているが息はある様だ。
男達が側に来る頃には、エルム達は既に黒狼から降りて潜伏系スキルを最大にしていた。だから男達は気がつかない。
男達は緊張を保ちつつ、何やら話している様だ。
「ユウマ殿、お急ぎください。昨今の神樹の森は騒がしく、何か嫌な予感がするのです。」
「そうですね……魔素の流れが少しおかしい。これではいつ、どこでC級の魔物が出てもおかしくありません。」
「だな。魔物の巣窟は南にあるレテナントの樹海。ここはエルフが管理する神樹の森。C級どころかD級も出るかどうかだってのに、何だよこれ。」
「噂では、神樹に異変が起きたとか。トラルドあたりが何やらこそこそしていたという話です。」
男達の大半は顔立ちが整っていて、品位と知性を感じさせるなかなかの美丈夫だ。
装備している武器は二種類あり、一つは左の太腿に着けている三十センチほどの長さのホルスターに仕舞われていて、もう一つは一メートルほどの長さの物を両手で構えていた。
ホルスターにある武器は背中の小さなタンクに繋がれていて、手に持っている方は独立しているのも特徴だが、この二つの最も大きな違いは太さである。
ホルスターにある武器は前腕部ほどの、手に構えるのは親指ほどの太さだった。
剣では無い、弓でも無い。しかし武器だとヘリスにはわかる。ホルスターという言葉通り、皇国の兵士が持っているのは銃の形をしているのだ。
ヘリス達は関知していないことだが、彼等は皇国軍の精鋭部隊『スフィア』のメンバーであり、現在は兵器開発の為のサンプル採取の護衛に就いている。
構えているのは『混針四式』と『砕筒六式』と呼ばれる武器であり、精鋭部隊に支給されている装備である。
混針四式の正式名称は『回転式属変魔戦小銃』。
リボルバーの構造を持ったライフルの様な外観をしている銃で、シリンダーと呼ばれる回転する部分に、型によって数の異なる穴があり、一つの穴につき一つの属性の魔法陣が刻まれている。
これの利点は、詠唱が既にある魔法陣と引き金に代替されているから戦闘に集中できる事や、複数の属性を戦況に応じて選択できる即応性と確実性である。
針の様な混針四式に対して、寸胴な砕筒六式の正式名称は『油式爆轟魔戦銃』。
グレネードランチャーの様に銃身が太くなっていて、背中の『魔呂』と呼ばれるタンクに充填された魔油を用いて作動する兵器である。
砕筒六式には主に二つの使い方があり、一つは魔油の膨張による衝撃波を利用する攻撃。もう一つは魔油を操作して魔法を行使する攻撃である。
前者は属性に依存しないため汎用性が高い。しかし至近距離で爆発を起こす事から、使用者が巻き込まれない程度に抑制されており、実際は手足を吹き飛ばす程度である。
後者は高い威力を望めるが、魔法陣が刻まれていないので詠唱が必要。
魔法陣が無い理由としては、衝撃波を利用した際に魔法陣が欠損する怖れがあり、その場合は魔法が暴走して使用者が死亡する最悪のケースが想定されるからである。
五人の男と緑服のユウマと呼ばれた男が 魔 裂 車に乗り込み、魔導機構を起動させた。練度の高い特殊部隊を彷彿とさせる動きで、一糸乱れず素早く動く軍隊蟻の様だ。
周囲の警戒を終えて全員が乗り込もうとした時、木陰から複数の陰が突然飛び出してきた。
男達は一人一人慎重に乗車していたので、外にいた三人がそれに気がつく。
「「グギャッ!」」
「ギギギ!」
「「キャワッ!」」
現れたのは五体のゴブリン。動物の毛皮の粗悪な衣服に身を包み、荒削りな棍棒で武装していた。
緑の肌に口から涎を滴らせて牙を剥き出し、血走った目でゴブリンは男達を見ている。
男達は目配せし合い、少々言葉遣いが粗野だった男が進み出た。どうやらゴブリンの相手を一人でするらしく、仲間は皆装甲車の中へと消えていった。
「──はぐれたゴブリンってとこか……いいぜ、相手してやるよ。」
男は野獣が興奮を抑えきれない様に笑う。
しかしそんな背中に、鋭く釘を刺す声がする。
「ゴトー。これより帰投する……と言ってもお前には無駄だろうな。ゴトー少尉、混針四式の使用を許可する。ただし、使用制限は緑で二十秒。行け。」
やれやれと肩を竦める指揮官らしき男の言葉と共に、ゴトーは弾かれた様に嬉々として突進する。
一番近くにいるゴブリンに、混針四式を持つ腕を引き付け突き出す。ただそれだけ。
明らかに間合いの外だ。
だが、それだけでゴブリンの心臓は貫通され、足元には血が溜まり、痙攣したゴブリンの亡骸は膝から落ち、倒れ伏す。
そしてゴブリンの死体をゴトーは蹴り飛ばした。
仲間の死にゴブリン達は硬直し、飛んできた死体と共に二体が吹き飛ぶ。
ゴトーは歯を剥き出し嗜虐的な笑みを浮かべ、再び疾走する。
「「グギャッグギャギャッ‼︎」」
残り二体は半ば自棄糞に棍棒を振り回す。近づく事すら拒む様に。だが──
「ふんっ‼︎」
二閃。
混針四式の先端から伸びた風の槍撃が、棍棒に風穴を開けて心臓を弾き飛ばした。血しぶきが弧を描き、拳大の二つの赤い塊が、少し離れた場所にグシャリと落ちる。
深紅の花が咲いた。
そしてその傍には死体と共に飛ばされた二体が、脚を引きずりながら逃亡を始めていた。
ゴトーはそれを眺めつつ、顔に掛かった返り血を拭う。
──はは、久しぶりの実戦だってのに張り合いがねえ。風属性《緑》なんか二秒も使ってないぜ。──
ゴトーは踏み締める様に歩を進め、体を引きずりつつも懸命に逃れようとするゴブリンを追い詰めていく。
引きずる、引きずる、引きずる。
引きずる、引きずる、踏み締める。
引きずる、踏み締める、踏み締める。
踏み締める、踏み締める、踏み締める──
ゴブリンはとうとう動くことを止めた。否、動くことができなかった。
ゴトーは混針四式を膝を曲げて腰だめに構え、詠唱しつつ先程より更にマナを込めて魔力を強化する。
ゴトーは最後にこう唱えた。
「ブラスト」
瞬間。飛ばされた死体と心臓、生死問わずゴブリン達の足元に緑色の魔法陣が現れ──荒ぶる風が全てを散り散りに搔き消した。
ゴトーは暫く棒の様に突っ立っていたが、指揮官の声で我にかえる。
小走りで戻ったゴトーを乗せた魔裂車は、颯爽とこの場を立ち去った。
およそ十八秒の間に魔法の風で刻まれた物は、影も形も無く。乾いた風だけが静かに草木を揺らしていた。
──怖ぇぇぇぇえ‼︎ は、初めて見た! あんな人種初めて見たぞ! ゴブリンには悪いけど助ける気が起こらんかった。
切実に皇国に関わりたく無くなったし、なんか……外怖い。籠りたい。環境が整ったら研究ヒッキーになってやる‼︎
ふう、ちょっと落ち着こう。
まずあの武器。銃かと思ったけど、色々使い方があってドン引きだなぁ。まあ、使っている奴の戦い方が特殊なのかもな。射撃が苦手とか、ありそうだ。
それにしても、綺麗さっぱり掃除して行ったな。慣れ過ぎだ、真っ黒だ。
〔……エルム、先に進もう。〕
〔はっ。〕
エルムの号令で遠征隊は再び走り始めた。
俺が心の中で手を合わせていたのは、俺だけの秘密だ。
これからは、龍坊が設定を生かせるかという事と心理描写がどこまでできるかで面白さが決まると思います。頑張ります。
お読みいただきありがとうございます。




