千歳慎也の人生
初ファンタジーです。
この物語はフィクションです。実在する団体、人物とは関係ありません。
「もう駄目だ。」
俺は県内の普通の高校に進学して、部活にも、趣味にも走らず、堅実に勉学に励んでいた。
他に特技と呼べるものが無いので、勉強が全てだった。
だが、大学受験でこけた。
受験会場にはちゃんと行った。
受験票や筆記用具一式、カイロまで準備していた。
それなのに酷い頭痛、目眩、吐き気、腹痛が1度に来るという状態に陥ったのだ。
高校受験の時もそうだった、本来ならもっと上の高校に行けるのにと、先生や周りの人たちによく言われていた。俺は所謂、本番に弱いタイプだったのだ。
だが、本番は本番でも高校受験と大学受験ではプレッシャーが違った。比べるまでも無い。
名前等の必要な項目は書いた、始めは何とか解いていけた。
半分くらいに所で記憶が曖昧になり、最後は何が何だかわからなくなっていた。
全て終わったときには机にしがみ付いて、荒く息をしていた。
俺はマンションで母と二人暮らし。
母は毎日働きに出ている。母は専業主婦をしていたので、仕事をするのに苦労しているようだ。
毎日疲れ果てて帰ってくる母を見て本当に感謝している。
父は俺が高校に入る前に交通事故に巻き込まれた。
車を運転していた奴は酒を飲んでいたそうだ。
酒を飲んで車に乗る奴がいるなんて、呆れかえって涙も出なかったよ、ちくしょう。
自分の部屋に中は机(今はコタツ)やタンス、ベッド。
そしてベランダにはちょっとでもリラックスできるようと、母が買ってくれた観賞植物。
自分でも殺風景な部屋だと思う。
そして今、俺は部屋で蹲っていた。それも隅の方で。
落ちたらどうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしよ…待て、待て落ち着け、でも気になる、落ちたら浪人?いや、うちにはお金がないからバイト浪人?勉強以外取り柄のない俺が?仕事になるかどうか怪しいぞ?あ、また頭痛が酷くなってきた……
俺はベランダの方に這って行き、ゾンビのように窓を開けた。
気分悪りぃ……
外に出て、ベランダ柵にもたれかかるようにして一息ついた。
あー、早く楽になりたい。
下を向くと吐きそうになるので、遠くを見た。
まぁ、遠くって言っても向かい側はマンションだけどな………うげぇ……出てくるんじゃなかった。
向かいのマンションは塗装していた。それはそれは強烈なシンナーの匂いが……
ちくしょう、こんな時にに限ってこれかよ。
中に戻ろうとして、ふとそれに目がとまった。
母が買ってくれた観賞植物だった。
うーむ、いつ見ても鮮やかな緑。母はセンスがいい。これを見ていると気分が良くなる気がする。シンナーの匂いも遠くにいった感じだ。
そう思いながら、大きめの吊り鉢に入ったそれを少し触れてみた。
そういや、これって図鑑で調べてみたけど名前は結局わかってなかったよな。ネットにもなかったし、不思議なやつだよな。
そう思っていると風が強く吹き、更に強烈なシンナーの匂いが鼻腔に直撃した。
「うげぇぇぇぇえ!」吐
目眩がして倒れ込み、思わず吊り鉢を掴むーーーー
ブチッ
ゴッうっ?ガシャン
えっ!?
俺はベランダにへたり込んでいたが、すぐに起きあがって柵から乗り出して下を見た。そこにはーーーー
頭に吊り鉢が当たり、血を流して男性が。
うわっ119番!!
急いで部屋の中へ戻ろうとすると、
ガゴッ
乗り出していた頭に強い衝撃ーーーー横を、砕けた破片が飛び散り、通過する。
一瞬何が起きたかわからなかった。
どうやら、さっきの音に驚いた人が偶然植木鉢を落としたようだ。くそっ、このままじゃ…………
グシャ
そこまで考えたときにはベランダの柵を体が乗り越え滑り、頭から地面に落ちていた。
頭を打ったせいで意識が朦朧とし、地面が迫っているのがわからなかった。
まだ何も母に返してねぇ。それどころか事故で人を死なせちまう。ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょーーーーーーーー
俺の頭は今までにない速度で回転し、意識がふつりと途切れた。
こうして俺、千歳慎也の魂は、罪人の魂として神に捕らえたのだ。
お読みいただきありがとうございました。