洞窟探索
お読みいただき有難うございます。
お気に入りが増えていてちょっと感動です。
これからも頑張ります。
翌日、俺達は洞窟の前で最後の確認をしていた。
「先頭をアントニー、真ん中に俺とエレナ、最後尾がマサキだ。
アントニーはランタン、マサキは松明を持って照らす。
炸裂する球や広範囲に影響を与える嵐の魔法は自爆する可能性が高いので避けること。
気づいたことは些細なことでも声をかけること。
以上質問は?……無いな。よし、出発。」
俺を含めた4人は慎重に洞窟の中に入る。
当然、明かりなんて無いので光が届かない部分は真っ暗だ。
アントニーさんが見える範囲を慎重に確認しながら進む。
そんな緊張感あふれる探索中に俺が考えていたのは、
(前方確認したかったら、光魔法をゆっくり放てば良いんじゃなかろうか。
こっちの世界に来る前はよく使ったなぁ。敵が光源見つけると間抜けにも声を出すから
居場所まるわかりだったんだよなぁ、あっはっは)
という、すげえゆるい事だった。
最近のゲームはリアルだからなんていうかこう、見慣れてる。
テレビとかで見るような凄い険しい洞窟じゃないというのもきっと原因の一つ。
一本道なので、後ろに気がついたら居るということも無さそうだ。
アントニーさん曰く、罠は無いだろうが虫や動物、魔物の中には身を潜めて襲い掛かってくるものも居るから、たとえ天然の洞窟でも警戒して進まないと命取り。なんだそうな。
時折、さくさくとナイフで殺してるので何か居るんだろう。そう思うとおっかないな。
アントニーさんとロックスさんが交代しながら先頭を歩いて行く中、
こっそりスマホで時間を確認しようとしたら、電池切れだった。がっくし。
あとで手回し発電機つかって充電したいけど、人目に付くから町に帰ってからかなぁ。
前方を確認していたアントニーさんが前方が曲がり角になっているのに気づき、
停止の合図を出してからランタンのシャッターを絞って先行した。
様子を伺っていたアントニーさんが、戻ってきてロックスさんに報告する。
「ゾンビとスケルトンが居た。それぞれ二体ずつがこの先の広くなっている部屋でウロウロしてたぜ。」
「情報通り居たか……マサキ、エレナにエンチャントのやり方を教えてもらっただろう。
アンデッドは生命力を感知するから光源の有無は関係ないが、遠距離から攻撃すれば
こちらの攻撃場所を探すような頭は無い。矢に光魔法をエンチャントして一体づつ
仕留めるぞ。」
「分かりました、エレナさん矢を。」
「えぇ、頼むわね。」
「念の為威力3倍でかけますね。」
「……そうだな、まずはその威力でやってみよう。」
エレナさんから矢を受け取り、人差し指を鏃の先端に触れながら呪文を詠唱する。
光属性、指先が触れている場所に付着、着弾時に魔力を全周囲に開放、威力3倍、
光付与。
一瞬淡く光った後、見た感じは普通の矢に戻った。
先端に触れないようにエレナさんに渡す。
エレナさんは矢を受け取った後、曲がり角から少し体を出した位置で狙いをつけている。
3秒位したあと、弓を放った。その直後に通路が一瞬光った。
エレナさんの様子を見ると上手く当たったらしい。小さく「よしっ」って言ってる。
その後、驚いた顔をしながら戻ってきた。
「どうした、エレナ。まだ一発しか撃ってないぞ。」
「全滅したわ。光魔法がアンデッドを消滅させるっていうのは本当らしいわね。
火魔法ではこうは行かないと思う。」
「嘘だろおい……うわ、ほんとだ。全部吹っ飛んでる。」
「ふむ……マサキ、今の魔法はあと何回使える?」
「え?えーと、使い捨て3倍かけで詠唱が約30文字だから20回です。」
「十分だな、アンデッドが複数居たら同じ魔法、単体なら1倍でたのむ。」
「わかりました。」
その後、アンデッドを倒しながら進んでいき、全ての分岐の終点を確認した所で、
入り口まで戻ってきた。
「くあーっ、やっぱ洞窟とかダンジョンってのは肩が凝ってだめだぜ。」
「まぁ、色々気を張り詰めている必要があるから大変よね。」
「とは言え、今回は光付与した矢で全部片付いたからな、接近戦が無かったという
だけでもずいぶんと楽だった。」
「あー、山の中とはいえ外の空気バンザイ。死体臭くない空気バンザイ。」
いい忘れていたが、洞窟の奥は臭かった。ゾンビの腐臭がして鼻が曲がるかと思ったよ。
「うはははは、まぁ死体が転がってる洞窟なんてそんなもんだ。早く慣れるんだな。」
「慣れるほど嗅ぎたくないです。」
「それには同意するわ。」
「同感だが、そろそろ昼だ。動きたくなくなる前に昼飯とかの準備をしてしまおう。」
「「「了解です。」」」
そんなこんなで、初めての洞窟探検とパーティでの仕事を完了したのだった。
お読みいただき有難うございました。