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出発

『また?』

暗闇の中で目を覚ました咲は、忽ち表情を曇らせた。しかし、これを機に咲は、哀に以前浮かんだ疑問を伺おうと考えた。

『哀さん』

咲が声を張り上げて言うと、暗闇の中、どこからともなく声が聞こえた。

『この前はごめんね。気持ちが抑えきれなくて』

『哀さんは私の中にいるのね?』

咲は辺りを見回しながら尋ねると、遠く姿を現した影は、静かに微笑んだ。

『時間は進むしか方向がないの。止まることも、戻ることもできない。当たり前の摂理に彼は逆らってしまった』

『彼って、お兄ちゃんのこと?』

咲は哀のもとへ駆け寄りながら尋ねた。

『私は見守ることしかできない。だから、あなたが最後まで笑顔で包んであげて』

咲は哀が立っていた場所に近づくと、影は次第に薄れてゆき、実像が見え始めた。

『哀さん?』

咲は彼女に触れようと手を伸ばそうとしたが、そこには大きな鏡が一枚立っており、制服姿の咲が映し出されているだけであった。

息を切らし、くやしそうにうつむく咲は、鏡に映っている制服が自分の学校のものではないことに気がついた。

(哀さん?)

咲は慌てて顔を上げたが、そこには確かに咲の顔が映し出されていた。

 咲が目を丸くしていると、鏡の中の自分がゆっくりと口を開いた。

『今、彼に必要なのはあなたの笑顔。過去である私の笑顔ではなく、現在のあなたの笑顔。そして、願わくは未来まで』

そして、鏡の中の人物は悲しい瞳をしながらも聖母のように優しく微笑んだ。

『哀さんなの?』

咲は困惑しながらも鏡にゆっくりと手を伸ばした。しかし、咲が鏡に触れた瞬間、鏡は粉々に砕け、その破片が咲を包み込んだ。

『笑顔でいてあげて』

哀が穏やかな声でそう言うと、目映い光が乱反射しながら咲を暖かく包み込んだ。

 

 咲は陽の光に包まれながら、いつになく穏やかな目覚めを迎えた。そして、咲はゆっくりと起き上がると、リビングへと向かった。すると、リビングでは戒と里絵が旅行パンフレットを広げながら、何やら楽しそうに話をしていた。

 学校は夏休みに入ったため、いよいよ旅行の計画をたてようと、里絵は咲の家に訪れていたのである。

「おはよう、起こしてくれればいいのに」

「何度も起こしたよ。さぁ、顔を洗っておいで」

眠い目を擦りながら言う咲に戒は呆れた表情を浮かべた。

「はーい」

咲は気のない返事をすると、ゆっくりと洗面所へと向かった。

 三人は昼食を終えると、行き場所と日数、時間について話し始めた。

「お兄ちゃん、仕事はいつからどれくらい休みをとれるの?」

「八月の二日から三日間かな」

咲がパンフレットを眺めながら尋ねると、戒は自分の手帳を見ながら答えた。

「じゃあ、八月二日から二泊三日で」

里絵は手際よくチラシの裏にメモをした。

「場所は?」

戒が二人の顔を見て尋ねると、二人は互いの顔を見合わせ、

「沖縄」

決まっているといわんばかりに声を揃えて答えた。

 その後、沖縄のどこにするかをあれこれ思案していると、自宅の電話が鳴り出した。戒が電話をとりに席を立つと、二人は思案を続けた。

「……はい。わかりました」

戒は暗いトーンのまま受話器を下ろした。そして、一息つくと戒はリビングへと戻っていった。

「誰?」

「ん、仕事の話」

咲が心配そうな表情で尋ねると、戒は咲の頭をポンッと叩き、席に着いた。

「で、場所は決まった?」

戒は話しを戻すように尋ねた。

「石垣島」

二人は再度声を合わせて答えた。

 双子のように声を揃えて答える二人を見て、戒は思わず笑ってしまった。その顔を見た咲は、

『笑顔でいてあげてね』

という哀の言葉を思い出した。そして、咲は天使のような笑顔で戒に微笑んだ。里絵も二人につられるように自然と笑顔になっていた。

 三人が宿泊場所を決め終える頃、陽が傾き始めていた。

「じゃあ、そろそろ帰ります」

里絵が席を立つと、

「送っていこうか?」

何気なく戒は声をかけた。

「いえいえ、いいです。まだ明るいですし」

里絵は慌てた様子で答えた。

「じゃあ、今度はスケジュール決めだね。いつにしようか?」

その様子を見ていた咲はニヤニヤと笑いながら、玄関まで里絵を送りながら尋ねた。

「うーん。 ……戒さん、今度の休みはいつですか?」

里絵はしばらく考えた後、戒の様子を窺いながら尋ねた。

「明日はお客さんが見えるから、今度の休みは来週の木曜日かな」

「じゃあ、来週の木曜日がいい」

戒が里絵の目を見て答えると、里絵は笑顔で咲に答えた。咲はニタニタと笑いながらうなずいた。

「それじゃあ、お邪魔しました」

里絵は玄関の扉を開けて勢いよく駆けていった。

「明日、何時にお客さんが来るの? 仕事の邪魔になるといけないから、私は里絵のところに行っているね」

 二人がリビングに戻ると、咲は戒に気を利かせた。

「明日見えるお客さんは北島さんなんだ。コートを返しに来るって」

戒は表情を曇らせ、咲に話した。

「だから話し方が暗かったの? 私はもう大丈夫だよ」

「……ああ、わかっているよ」

戒は不安な表情を浮かべたが、咲と目が合うと、二人は互いに互いを見て優しく微笑んだ。

「夕飯一緒に作ろう」

咲は戒の背中を押してキッチンへと向かった。咲は幾度となくその背中に哀との関わりを問うとしたがその度に胸が苦しくなり、聞けずにいた。

「ん、どうかした?」

 咲がボーっとした表情を浮かべていると、戒は振り向き咲に尋ねた。

「ううん、何でもない。さぁ、ご飯、ご飯」

咲は笑顔を浮かべてそう言うと、戒の背中を強く押した。

 夕飯を終えると、いつものように夜が更けていった。

「咲、明日は早く起きてくるように」

「大丈夫。お兄ちゃんが起こしてくれるから」

強い口調で言う戒に対して咲は笑いながら答え、舌を出して部屋へと逃げていった。

「叩き起こしてやるからな」

戒は声を上げた。そして、戒も部屋に戻ると静かに床に就いた。


 翌日、戒は息をつきながら咲を起こしに向かった。

「咲、いい加減起きなさい。北島さんはもう来ているよ」

「うん、もう起きる」

戒が咲を揺すり起こすと、咲は目をこすりながらゆっくりと起き上がった。

「顔洗って、着替えておいで」

戒は呆れた表情を浮かべると、リビングへと戻っていった。

 咲は顔を洗い、着替え終わるとリビングへと向かった。

「北島さん、お久しぶりです」

「あ、どうも」

咲は椅子に座っている北島と会釈を交わした。

「この前はすみませんでした。その後、具合はどうですか?」

北島が心配そうに尋ねると、

「ええ、もう大丈夫です」

咲は落ち着いた口調で答えながら席に着いた。

「元気すぎて困ってしまいます。よく寝るし」

お茶を運んできた戒が、横から口を入れた。

「もう、お兄ちゃん」

咲が恥ずかしそうな顔をしながら、戒の肩を叩きながら言うと、

「本当にお元気そうだ」

北島は二人の元気な顔を見て笑った。

「まずはこれをお返しします」

 戒が席に着くと、北島はビニールに包まれた白いコートを差し出した。

「何一つ疑わしいものは出てきませんでした」

と続けると、咲と戒は安堵の表情を浮かべた。

「咲さん、その後事件のことで何か思い出したことはありませんか?」

北島は苦渋の表情を浮かべて咲に尋ねたが、咲は黙って首を横に振るだけであった。

「どんな些細なことでも構いません」

「すみません、本当に何も」

咲は哀のことを話そうかと考えたが、思いとどまった。哀が実在するのかどうかさえわからなかったし、万一哀が実在し、哀が夢の中で言うことが真実であるとすれば、戒に迷惑が係るのではないかと考えたからである。

「捜査は難航しているようですね」

戒は北島の顔を見ると、静かに口を開いた。

「ええ。どうやら一件目と二、三件目とでは使われた凶器が違うようでして、その特定が難しくなっています。ここだけの話、もしかすると犯人が異なるのかもしれません。それに今回の事件は意図がわからない」

北島は戒のほうを見ると、くやしそうな表情を見せた。

「あの、私たち旅行に行く予定なんですけれど、気晴らしに北島さんも一緒に行きません?」

咲は突然話を切り出し、いつものように微笑みかけた。二人は一瞬唖然とすると、北島は声を上げて笑った。

「申し出はありがたいのですが、捜査がありますので」

「そうですよね」

笑いながら北島が答えるのに対して、咲は残念そうに答えた。

「当たり前だろう」

戒は呆れた顔でため息をついた。

「じゃあ、私たちを監視している人たちはどうするんですか?」

「一人はついて行かせることになると思います」

咲が笑みを浮かべながら尋ねると、北島は申し訳なさそうに頭を掻いた。

「私たちはまだ疑われているのですか?」

戒は北島の言葉を聞くなり、顔を強張らせながら北島に尋ねた。すると、咲も悲しげな表情を浮かべながら北島の様子を窺った。

「疑っているわけではありませんよ。関連性の可能性が捨てきれない限りは、ということです」

北島は二人の顔を見ながら優しく微笑んだ。

(疑っているのと同じことだろう)

戒は納得のいかない表情を浮かべたが、

「わかりました。それじゃあ、スケジュールが決まったら連絡しますね。いちいち調べるのも手間でしょうから」

咲がすぐさま笑顔で答えたため、言葉にはしなかった。

「助かります。同行させるのは馴染みのあるほうがいいかと思うので咲さんを監視している小柳を行かせましょう。あいつはまだ二十代ですから、こんなおじさんがついていくよりいいでしょう」

北島は不満げな表情の戒を横目にしながら、咲に優しく微笑んだ。

「では、今日はこの辺で帰ります。また、時折伺いますので」

「あ、はい」

咲が北島を見送るために席を立つと、戒も渋々席を立ち見送った。

「もう、お兄ちゃん」

咲は相変わらず不満そうな表情を浮かべている戒の横腹を突っつくと、恥ずかしそうに笑った。すると、北島も苦笑を浮かべた。

「一刻も早く事件を解決しますので、それまで辛抱ください」

「すみません、少し大人気なかったですね。捜査、頑張ってください」

北島が戒に対して深く頭を下げると、戒は笑顔を作りながら北島に答えた。すると、北島もそっと微笑みながら軽く頭を下げた。

「それでは、失礼します。旅行、楽しんできてください」

「はい。ご苦労様でした」

バタンっと玄関の扉が閉まると、戒は頬を引きつらせながら咲に笑いかけた。すると、咲は呆れた表情を浮かべ、何も言わずにリビングのほうへと歩いていった。戒は咲を怒らせてしまったと思い、頭を掻きながら咲の後へと続いた。

「北島さん、仕事できているのよ」

「わかっているよ」

やはり怒った口調で言う咲に、戒は恐縮しながら答えると、

「子供ね」

咲は振り向き、戒にイーっとして見せた。

「だよな」

戒は北島に対して申し訳なさそうな表情を浮かべると、髪をクシャクシャに掻きむしった。

 

 北島が訪れた次の週、宿泊場所とスケジュールを決めるために里絵は朝早くから戒の家に訪れた。

(咲はまだ寝ているかな?)

里絵が薄ら笑みを浮かべながらインターホンを鳴らすと、しばらくして玄関の扉が開いた。

「おはようございます」

里絵が元気よく挨拶をすると、玄関の扉を開けたのは咲であった。

「なんだ、咲か」

「なんだとはなんだ」

残念そうに言う里絵を見て、咲は腰に手を置き、頬を膨らませた。

「あ、いや、咲、いつも寝ているから」

里絵は慌てて弁解をした。

「ごめんね、お兄ちゃんじゃなくて」

「だから」

頬を赤らめる里絵を見て、咲はクスッと笑うと、

「さぁ、どうぞ。お兄ちゃんがお待ちですよ」

咲は里絵を家の中へと招き入れた。

 そして、二人がリビングに行くと、戒がテーブルを拭いていた。すると、咲はニヤリと笑い、里絵の背中を押した。

「おはよう、里絵ちゃん」

「あ、おはようございます」

勢いよくリビングに入ってきた里絵を戒が笑顔で向かえ入れると、里絵は頬を赤らめたまま笑顔で応えた。

「さぁ、席に着いて。咲も」

二人は戒の声で席に着いた。

「じゃーん、パンフレット集めておいたんだ」

「私も」

咲と里絵が集めたパンフレットを広げると、三人は宿泊場所とスケジュールを決め始めた。

「泊まるところは?」

戒が二人に尋ねると、二人は目を見合わせて、

「ここ」

と、パンフレットに記載されている一つの宿を指差した。

「民宿マブヤか」

「うん。海に面していて景色が綺麗なんだって」

戒は怪しげな名前だと感じつつも、二人が強く推薦するため、民宿はそこに決定した。

「じゃあ、後は向こうで何をするかを大まかでいいから決めておこうか?」

「ダイビング」

戒の問いに二人はすぐさま声を揃えて答えた。

「本当に仲がいいね」

最近、あまりにも声が揃うことが多いため、戒は二人を見て思わず笑った。

 三人はある程度スケジュールを決め終わると、必要なものを買い揃えるために、暑い陽射しの中、近くのショッピングモールへと買い物に出かけた。必要なものといっても三人で選ぶのは旅行カバン程度で、残りは咲と里絵の水着や衣服が中心であるため、戒は居場所を無くしていた。

「俺、必要ないんじゃない?」

「だめ。荷物が持ちきれないもん」

荷物持ちのために連れてきたと言わんばかりの咲の一言を聞き、思わず戒はため息をついた。

「すみません」

里絵は苦笑を浮かべながら、戒に一声かけた。

「いいよ、別に」

戒が里絵に微笑みかけると、

「さぁ、次行くよ」

咲は二人の背中を押し、洋服屋に入っていった。

 陽が傾き始めると、買い物客の数が急にひき始めた。

「夕飯、家で食べていこうよ」

咲は里絵を誘いながら戒の顔を窺った。

「里絵ちゃんさえよければ、食べていって」

「じゃあ、よろこんで」

戒の言葉を聞くと、里絵は笑顔で答えた。

 一通り旅行の買い物を終え、ついでに夕飯の買い物もすると、いよいよ大荷物になってしまった。

「買いすぎたね」

里絵が両手に荷物を抱えながら言うと、戒は汗を流しながら苦笑いをした。

「旅行に行くまでにお金がなくなるな」

「何とかなる。それより、今はこの荷物をなんとかしないとね」

強気で発言をした咲は、突然後ろを振り向くと、

「小柳さん」

両手の荷物を下に置き、大きな声を上げ、手を振った。

「おい、咲。やめなさい」

戒は咲の考えを見抜くと、必死に咲を制止した。

 夕暮れの中、荷物を持ち歩いてゆく影は四つに増えていた。

「咲、何か性格変わったよね」

「そう?」

咲は里絵の顔を見ると、首を傾げた。

「うん。大胆になったというか、たくましくなったというか」

咲と里絵は自分の旅行カバンを一つだけ手に持ち、足早に歩いていった。

「すみません、咲が無茶を言って」

「いいえ、構いません。それより、北島さんには内緒にしといてくださいね」

一方、戒と小柳は両手一杯に荷物を抱えると、足元を確認するように一歩一歩足を運んだ。

「小柳さんもよかったら家で夕飯を召し上がりませんか?」

 家の前まで来ると、咲は小柳の荷物を受け取りながら夕飯に誘った。

「いえ、仕事中ですからそういう訳にはいきません」

小柳は戸惑いの表情を浮かべながらも真面目に答えた。

「そうですか」

「当たり前だろう」

戒は呆れ顔で咲の頭を小突いた。

「それでは、失礼します」

小柳はクスッと笑うと荷物を咲と里絵に返し、逃げるように立ち去っていった。

「さぁ、帰ろう。夕飯を作らないと」

戒は二人を持っている荷物で押すと、階段を上っていった。

「ありがとうございました」

 咲は小柳に一礼すると、赤ん坊のようにクシャクシャな顔をして、満面笑みを浮かべた。三人は咲のほうを見ると、夕焼けに染まる咲のその笑顔に心を打たれ、しばし見とれた。

 夕飯を終え、三人はお茶をすすりながらしばし雑談を楽しんだ。

「じゃあ、遅くならないうちに帰るね」

里絵はそう言うと、席を立った。

「えー、泊まっていったらいいじゃん」

「うん、でも旅行に持っていく荷物をまとめたいし、宿題もある程度は進めておきたいから」

テーブルにうな垂れる咲を見て、戒はクスッと笑った。

「咲も見習いなさい」

戒は席を立つと、

「もう暗いから送っていくよ。荷物もあるし」

里絵にそっと微笑んだ。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

戒は里絵の荷物を持つと、二人は玄関に向かった。咲も重い腰を上げると、里絵の見送りに行った。

「じゃあ、今度は旅行の日だね」

「うん」

こんな些細な別れのときでさえ、咲は寂しそうな表情を浮かべた。

「里絵ちゃん、行こうか。咲、鍵は閉めておきなさい」

「わかった」

戒は玄関の扉を開けると、里絵と戒は家を出た。

「さて、私も宿題を減らしときますか」

咲は玄関の鍵を閉めると、自分の部屋へと入っていった。

 

 旅行当日の朝、咲と戒はタクシーに荷物を乗せ、里絵が来るのを待った。

「荷物があるから迎えにいったほうがよかったんじゃないか?」

「あ、そうだね」

咲はハッとした表情を浮かべた。その顔を見た戒は横でクスクス笑った。

 それからしばらく待つと、里絵がカバンを両手で持ちながら走ってやってきた。

「ごめん、ちょっと遅れた」

里絵は息を切らしながら言うと、カバンを地面に置き、呼吸を整えた。

「おはよう」

二人が薄ら笑みを浮かべながら里絵に声をかけると、

「おはようございます」

里絵は未だ呼吸が整わないまま返事をした。

「じゃあ、行こうか」

戒は里絵のカバンをタクシーに載せると、二人にタクシーに乗るよう言った。そして、三人がタクシーに乗り込むと、タクシーは静かに発進した。

 また、それと同時に後ろにタクシーが止まり、小柳は慌てて乗り込むと、咲たちの乗るタクシーについていった。

「一緒に乗ればいいのにね」

咲は後ろを見ながらクスクス笑いながら言った。

「あれが仕事だからそういう訳にもいかないんだろう」

戒はそう言うと、

「後ろの車を撒かないようにお願いします」

戒はタクシーの運転手にお願いした。

 あまりに滑稽な注文に運転手が目を丸くしているのを見て、咲と里絵は声を押し殺して笑った。


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