走り出した世界の行き止まり
「少女が泣いた後の世界状態」「傭兵が辞めた後の世界状態」の後の話。
大事な幼馴染がいなくなってから4ヶ月。わたしは海の限界を知る旅に出た。この旅をする前にかつての仲間のもとへ赴き、幼馴染の言葉を届けた。皆は優しい。言葉を聴いて涙を流す者もいた。わたしは、泣けなかったのに。
なぜ泣けなかったのか。その答えを見つける旅。それが、海の限界。幼馴染がいなくなった海は既に何回か行ったことがある。だから今度はいろんな海に行く。答えを知るために。
そういえば、仲間の一人が探し物をしていたはずだ。言葉を届けるときに聞いたら、見つかったと言っていた。積極的に人と関わることがない人だったが、そんな彼にも探し物があった。彼が見つけたんだ。きっとわたしの探し物も見つかる。きっと。
「はぁ、はっ……ぐっ……」
森の動物に追いかけられた。深呼吸をして、息を整える。
わたしが旅を始めて1年。いろんな海を見てきた、といっても互いに隣接するものばかり。1年では見ることができないと考えると、世界もまだまだ広い。
目の前に広がる海。この海は緑色らしい。透明感があって、魚の群れが泳いでいるのがよく見える。
探し物は着々と見つかっている。海を見るたびに、あの日の感情を思い出す。そして、今。
「ははっ、ようやく見つけた」
そうだ、わたしは泣かないんだ。泣けないんだ。幼馴染がいなくなって心が泣いた。心は、泣いた。わたしは泣いていない。わたしは、泣いていない。
「キル……」
君はいつでも、わたしの近くにいたんだ。
これは、少女の物語。あの日の涙はオードの涙。わたしが泣くことは、もう無い。
黒い世界に白があった。
白い塊はもぞりと動く。
「やっと、見つけてくれた」
そうしてまた、静寂は続く。
誰よりも、そばにいるから。