9.旅に…まだ出れない
「貴様たち何者だ!名を名乗れ!」
美少女が殺気を向けたまま険しい目つきでそんなことを尋ねてきた。
あ〜なんか職質受けてる気分だな、地球ではよくあったからな。別に何もしてないんだけど。
地下闘技場に参加してるようなプロのプレイヤーはちゃんとルールを守って会場外では仕掛けて来ないんだけど、そこに来られないようなプレイヤー気取りが俺を倒して名をあげようと襲撃してくるからよく返り討ちにしてたからな。無理だってわかれよ。
戦闘シーンはきっと早くて見えないだろうけどいつも俺の近くに倒れた奴らが居るからな、そりゃ怪しいわ。
職質されるたびに龍宮流だって名乗ったらなんかすぐに引き下がったけど。なんでなんだろう?
まぁそれはおいといてなんで俺はこんなに敵意向けられてるんだろう?周りを見渡してみる。
ウミが居る、軽装だ。
俺が居る、軽装だ。
よくわからん集団を見る、重装だ。食料やら野営道具のようなものもある。
辺りを見回す、鍛えられた俺の視力を持っても人里が見えない荒野だ。
・・・うん、怪しい。
「俺は空だ、こっちがウミ」
「よろしく」
ウミを指さし紹介してやる、ウミも笑顔で手を振っている。うん、笑顔は人間関係の基本だからな。
すると何か気に障ったのか美少女さんが激昂してきた。
「っ!愚弄するか!我らはアースラの街付き検非違使だ!先日この方角にて異常な自然災害を目撃した!急ぎ準備を整え急行したところそこには貴様らが居た!これを怪しいと言わす何を怪しめというのだ!」
?ああ、俺がはしゃぎすぎたときのやつか、確かにそれは怪しいわな、はっは。
しかしこの美少女さん今にも刀を抜きそうだ、いやん、こわい。
しかし今検非違使とか言ってなかったか?それって昔の警察の名前じゃなかったか?それに普通に日本語が通じてる?唇も言葉とあってるしな。なんだろう、この違和感?
・・・まぁいいか。
「しかしそんなこと言われてもな、俺たちはただの、あ〜と・・」
「冒険者」
「そうそう、それそれ。だから怪しくない」
ウミ、ナイスフォローだ!ところでアヴァって何!?
しかし目の前の美少女さんには通じたようだ、先ほどより若干、本当に若干だが敵意が薄らぐ。
「冒険者だと?こんなところでなにをしていた?AVRをみせろ!」
「ここにきたのは君たちと同じ理由だよ?ここらがなんだか愉快になってたから様子を見に来たんだ。AVRはちょっと無くしてしまってね」
「理由はまだ納得してやってもいいがAVRをなくしただと?あれは冒険者にとって命と金の次に大事なはずだが?・・・貴様本当に冒険者なのか?」
「AVRを無くしたのは僕の不注意だから何も言うつもりがないよ、だから証明に関しても君たちの満足するものは出せそうにないね」
「ふん・・・まぁいい。実際に何をしていたわけでもないのだから今日のところは見逃してやろう。・・・で?貴様は?貴様も冒険者でAVRを紛失したとでもいうのか?」
置いてけぼりだった俺に唐突に美少女さんが話を振ってきた。
え?なに?何のことだか全然わからないよ?ようやく刀から手は離したし、敵意はだいぶ減ったけど警戒心はあんまり変わってないから目は鋭いままだし、ど〜したらい〜の〜?
・・・と、頭の中に声が響いてきた。
(すまないね、ちなみにこれは僕とキミがつながってるからできる念話だよ。あとで色々説明するからとりあえず肯定しておいてくれないかな?)
なんだかよくわからないがとりあえずウミの言うとおりにしておこうか。
「まぁな」
「まぁそうだろうな・・・改めて自己紹介しようか。私はアスーラの街付き検非違使少尉、ジュリア=G=藤原だ。知っていると思うがここから1番近い街はアスーラで、冒険者登録しないと身分証明ができないからな、アスーラのギルドで再登録するならまた会うこともあるだろう。」
では、といい振り返ると俺たちが話していた間微動だにせずじっと待っていた忠実そうな人たちに号令をかけ一糸乱れぬ行軍で去って行った。・・・きっとあの方向に行ったら街があるんだろうな。
っていうか藤原!?それも完全に和名だよな!?なんなんだこれは?
・・・と、ウミが俺の方を笑顔で見ていた。
「・・・行くのは明日にするか」
「そうだね」
お久しぶりです。お待たせした方申し訳ありません。
次回はおそらく説明回になるのでそれなりに早く投稿できると思います。
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