12.ギルドマスター、アズール
今回、次回も説明会です。その次くらいから話が動きます。もう少しお待ち下さい。
「5年前の約束と聞きましたが、あなたが黒鴉なのですか?」
偉丈夫が俺に話しかけてきた。は?なんで俺?そして黒鴉ってなんぞ?
疑問符が頭に飛びまくっているのを見かねたのだろうウミが口を開いた。
「黒鴉はぼくのことだよ、しかしキミはギルドマスターだったんだね、人間にしては強いと思ったけど。子供は元気かい?」
「おお、あなたでしたか、女性だったのですね。強いと言ってもあなたに軽く転がされる程度ですよ。この町ではトップレベルという自負はありますがな。子供はおかげさまで元気に過ごしています。ありがとうございます」
「僕たちに性別はないのだけれどあまり詳しく話す気はないよ。それならよかった。ところで街に入りたいのだけれど融通してくれないかい?」
「ふむ・・・、もちろん問題ありませんよ、約束ですからな。おい!儂が身元を保証する故この二人を連れて行くぞ!」
相変わらず蚊帳の外の俺だが、同じく蚊帳の外だった門番Aが話しかけられ、慌てた様子で左胸に拳を当て口を開いた、あの仕草、敬礼なのかな?
「は、はっ!もちろんです、どうぞ!」
そういって門を開けてくれた。門の中には石でできたような家が両側に並び、マン化には大通りのようなものが通っている、少し進むとバザーのような市が立っているようだ。かなりの活気があるように見える。
そして、少し目につくだけでいわゆる獣人や、エルフやドワーフのような見た目の種族など様々な人種が生活しているようだ。これだけ多くの種族が生活しているのは珍しくないのかな?色んな国があるってことだから対立していてもおかしくないと思っていたんだけど。
そんな事を考えながらアズールと呼ばれたおっさんの後をついて歩く。ウミとは手をつなぎながら歩いている、さっき念話で『色々聞きたいことがあると思うけど後でね』と言われたし、おとなしく異世界観察に努めよう。実際今まで荒野とウミの城にしかいなかったから興味深いのは確かだ。
大通りを真っ直ぐ行くとおそらく砦であろう建造物が見える。それほど大きな砦ではないな。3階建てのくらいかな?跳べば最上階まで行けそうだ。街には独特な活気がある、しかしジュリアとかってやつのときも思ったけど言葉通じるんだな、何言ってるかわかるわ。便利だからいいんだけど。流石に獣みたいなやつは口の動きと合ってないみたいだけどな。しゃべる構造になってないから仕方ないか。
異世界だから自然が多いのかと思っていたが、魔族料だからなのか砂漠の町みたいなイメージだ。石でできた建造物に乾いた風。緑はパット見た感じでは見えるところにはないようだ。
しかし、このアズールっておっさんも有名人なんだな。さっきからすれ違う人たちのほとんどが何らかのリアクションをしているし、それに対しておっさんも律儀に返している。人格者ってやつだな。
「付きましたぞ、これが冒険者ギルド、アスーラの街支部です。儂の部屋で話をすることにしましょう。そちらの青年の話も聞きたいことですし」
「そうだね、案内頼むよ」
物見遊山気分を味わっているうちにギルドに着いたようだ。石造りなのは変わらないが他の建物よりひときわ大きく、体育館くらいかな?どことなく立派に見える。軒先には2つの手と真ん中に盾?のような紋章が描かれた木札がかかっている。あれは何を表しているんだろうな。
とりあえずおっさんについていこう。
「どうぞ中にはいって、好きにくつろいでいてください。儂はお茶の準備をするように言ってきます」
「ありがとう、最近僕も人間の食べ物に興味が湧いたからね、美味しいものを期待するよ」
「なんと、そうなんですな。わかりました。とっておきを持ってくるように言っておきます」
そう言っておっさんは席を外していった。日本人的な感覚でいうとウミはかなり態度がでかいな。まぁ俺はウミファーストだし、何も気にならないけど。
「それで、色々聞きたいこともあるだろうけど、僕も全部答えられるかわからないし、彼にまとめて教えてもらうとしよう。立場もあるみたいだから色々詳しいだろうし。ああ、でも一つだけ言っておくと黒鴉っていうのは僕の異名みたいなものだよ、10〜5年前くらいにここらで遊んでいた時期があってね、そのときに見た目が黒いのとフラフラ飛んでいること、通った後に死体があることからそう名付けられたみたいだ。それで討伐対象扱いされちゃってね、彼が討伐に来たのが知り合ったきっかけというわけさ」
「そうです、あのときは大変でした、儂も若かったですからな、自分は誰にも負けないという無駄なプライドばかり高くて黒鴉討伐も片手間でこなせると思っていました。そんな鼻っ柱はバキバキにおられ、無様な命乞いが通じて今なんとか生きながらえております。」
突然お茶を持って現れたおっさんがそう言って禿頭を叩く、まぁ近づいていたのは気配でわかっていたんだけどな、この部屋の周りにも4人が様子をうかがっているようだし、ウミも気づいているみたいだし、ウミが何も言わなければ俺も何も言うつもりもないけどな。
改めて3人で席に付き顔を合わせる。さて、事情を知っているやつが場を回すのを待ってみるか。
そう考えているとウミとおっさんが目で合図しおっさんが喋りだした。
「改めまして、儂は冒険者ギルドアスーラの街支部ギルドマスターのアズールと申します。あなた方は黒鴉殿と、そちらの青年はどなたですかな?」
「僕はいまウミという名前があるからそちらで呼んでくれ、僕の大事な旦那様がつけてくれた名前なんだ」
そう言って俺の方に流し目を向けてくる。色っぽいからやめてくれ、流石にこのシリアスムードとむさいおっさんの前でいちゃつくつもりはないぞ。
「俺は龍宮空だ、先程話に出たがウミの旦那をやっている。結婚という形式をとったわけではないけどな、強いて言うなら事実婚というやつだ」
「ウミ殿に空殿ですか。ところで空殿の名前とその見た目、、、星人、いや、違う世界から来ましたかな?」
その言葉に衝撃を受ける。うすうすは想像していたが星人という名前があるからには一定数こちらに迷い込んだ人間が俺以外にもいたのだろう。いろんな疑問がなんとなく氷解していく。
「星人?というのは初めて聞いたが違う世界から来たのは確かだ。地球の日本という国からウミについて来た」
「ああ、日本ですか、出身酒はたくさんいますよ。数でいうとトップクラスだと思います。それじゃあなぜ言葉が通じるのかとか色々疑問に思いませんでしたか?」
「もちろんだ、便利だから通じる文には特に問題ないんだけどな。」
そういうとアズールは豪快に笑う。
「はは、そうでしょう。まさにその便利のためにありますからな。ウミ殿、空殿はこちらの常識に疎い様子。儂から説明してもよろしいか?」
「もちろん、そのつもりでついてきたんだよ、僕も人間社会には詳しいとは言えないから僕にも教えるつもりでよろしく頼むよ」
「これは責任重大ですな、それでは少し長話に付き合ってくだされ」
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