1.さよなら地球
俺は龍宮空、高2だ。家が古武術を伝承する古い家で俺はその家で小さい頃からすげー修行をさせられていた。強くなっていくのがうれしかったから全く苦に思ったことはなかったけどな。だけど俺が中1の時に親父や爺さんを手加減なしの組み手で倒してしまった時は針のむしろのようだった。その翌年に俺が開祖以外誰も習得したことがなく、秘伝書でのみ伝わり夢物語だと思われていた。秘奥を習得したときには何か吹っ切れたのか親ばか、爺ばか全開になったんだけどな。
だから俺にはこと”強さ”に関しては些かならぬ自信がある。並々ならぬ興味もある。しかし特に日本では、異常な存在は排除されるという風潮があるため日常的には運動神経がいいだけということにしておいて、深夜に地下コロシアムで殺し合いという緊張感の中技を磨いている。
地下コロシアムでは会場内で、決まった対戦カードで、という制約はあるものの不意打ち、暗殺何でもありという異常な空間だ。対戦相手が決まった瞬間から警戒が必要になってくる。対戦相手が発表になった瞬間後ろから首を落とされたやつもいる。
そんな中で俺は現在序列1位、中2で序列1位になって以来3年間1度も明け渡したことがないから名前をもじって『不落の龍神』なんて言われて一目置かれていたりする。
そんな俺だからあの時も楽勝だと思っていたんだー・・・
地下コロシアムからの帰り道、時刻は午前2時。俗に丑三つ時とか逢う魔ヶ刻とか言われる時間。闇夜に紛れる様に”それ”はいた。
”それ”は後ろ姿であったが目前のカップルに狙いを定めているようだ。今にも腕を振り下ろそうとしていた。
俺は考える暇もなく全力でアスファルトを蹴り、そいつを軽く小突いた。(全力で殴ると殴った場所が消滅してしまう)そいつは近くの民家の塀にぶつかり塀に軽く亀裂が入っていた。
街灯の明かりに照らされそいつの姿が露になる。
「ー・・・っ!!」
思わず息を呑む。
街灯に照らされたその姿は緑の肌に紅い目。頭上には1対の角が天を突いており背中には黒い翼が生えていた。
まさに想像上の悪魔の姿であり、そんなやつを俺は今までに見たことがなかった。
「ヒッッッッ!!!」
カップルは悲鳴を上げ逃げ出してしまった。
俺はそれを横目で見ながらも目の前の”悪魔”から警戒を外すことができない。
しかし強者特有の雰囲気はあるやつだが威圧感はない。おそらく問題なく勝てるだろう。
「キサマ、イッタイナンダ」
突然頭に直接響くような声が聞こえた。抑揚のない喋り方。
目の前の”悪魔”のものだろうか?状況から見て恐らくそうだろう。
人生何があるかわからないな、こんなやつとコミュニケーションをとるとは思わなかった。
「コタエロ、イッタイナンナンダ」
なかなか答えない俺に痺れを切らしたのか再び先ほどと同じ声が聞こえた。
「何だと言われてもね、正義の味方だよっと!」
喋り終わると同時に踏み込む、相手の実力を測りきれていないため1割程度の力で打ち込む。
狙いは水月、捌くか、それとも躱すかおまえはどうする?
しかしそんな俺の予想を覆し、拳は”悪魔”の水月に吸い込まれていった。
ガスッ!
「グハッ!ガ・・・ガハッ!!!」
・・・どうしよう、めちゃくちゃ咳き込んでる。こいつ、弱いぞ?雰囲気だけかよ
しばし拳を眺め呆然とする俺。
そのうちに息が整ったそいつが立ち上がりを俺を睨んできた
「ナンダソノチカラハ?マァイイ、ユダンシタヨウダ。シカシコノワタシニイチゲキイレタコトニケイイヲヒョウシテジゴクノホノオヲミセテヤロウ。」
そういいながらそいつは俺に向かって手を突き出してきた。
まずい!何かするつもりか!
『ヘルファイア』
”悪魔“の声が辺りに響く。咄嗟に俺は横っ飛びをする。受け身をとり、目を相手に向け現状把握。
しかし俺の目が捉えたのは”あいつ”の手から出ているライターくらいの火だった。
三度呆然とする俺。
何だよこいつ、見かけ倒しかよ。しかもそんな相手に過剰に反応した俺って・・・
「ははっ」
自嘲の笑いが思わず零れる。
何だよ、それなら軽くしめて帰って寝るか。
再び地を蹴り、相手に飛び込もうとした時焦ったような声が響いてきた。
「ナ!ハツドウセンダト!?サキホドカラフシギニオモッテイタガココライッタイカラホトンドマリョクヲカンジナイダト!?ク、ココハイチジテッタイダ」
”悪魔”はステップで俺から距離をとり手のひらの間に黒い球体を出現させる。
俺はそれを先ほどの”悪魔”の言葉から逃げるためのものと判断。
「逃がすかよ!」
ステップで”悪魔”に肉薄し、軽く吹っ飛ばして終わりだ、と思ったその瞬間。先ほどの黒い球体が突然大きくなり俺と”悪魔”二人の体を飲み込んだ。
その後のことはよく覚えていない。視界が真っ暗になったかと思うと、上下左右あらゆる方向に引っ張られたり揺れるような感覚を味わったかと思ったら
「何だここは・・・」
見渡す限りの荒野だった。電線もなければ家屋もない。
それにやけに体が重いし、思考にも靄がかかったような感じがする。
直感的に分かる。おそらくここは少なくとも日本、いや、地球ですらないだろう。
空や陸上に生物がいくらか存在しているが俺の常識の中には存在しないような色や形をしている。
俺が思考に埋没していると後ろから急に声がかかる。
「ようこそ我が世界へ、歓迎しよう”異世界人”よ」
・・・。
・・。
・。
さよなら地球
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