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願わなければよかった|両親の死とおぞましい秘密

語り手の話に潜む『恐怖』を、あなたは見抜けますか?

推理が終わったら、本編下部の解説で答え合わせしてください。

 その小さな祠(ほこら)には『何か』がいて、多くの人の願いを叶えてきたという。


 ただそれを教えてくれた友人によると、叶うのは『願わなければよかった』と後悔するような願いだけだそうだ。


 たとえば大金を願った人は、それが元で強盗に命を奪われた。他にも結婚を願った人は、叶った後で相手の無視できない欠点を知るなど、数々の恐ろしい噂がある。


 でも私の『両親に死んで欲しい』という願いだけは、叶ったところで絶対に後悔なんてしない。


「保護者の義務として養ってはやるが、なるべく俺たちの前に顔を出すな。用もなくしゃべるな。存在を示すな」


 これは普段から、あの人たちが私に繰り返し言う台詞。


 ご飯を食べさせてくれる。家に住まわせてくれる。服もくれる。学校にも通わせてくれる。でも、それだけ。


 あの人たちは他人に知られても虐待だと責められずに済む最低限のことをしているだけ。物心がついてからの外出や旅行は、私だけいつも家に置き去りだった。


 なぜ自分の娘をそんなに嫌えるのか分からない。両親のどちらにも似ていないならともかく、私は子どもの頃の母にそっくりらしいのに。


 理由は分からないけど、私が嫌いならいっそ捨ててしまえばいい。両親と違って母方のおじいちゃんは、私を愛してくれているんだから。


 おじいちゃんは私が小学生の頃。たまに学校の帰り道で待っていて、美味しいものを食べに連れて行ってくれた。


 そしてアイスやパフェを食べる私をニコニコと眺めながら、よくこう言った。


「アイツらお前が可愛くないなら、俺にくれればいいのになぁ。じいちゃんのところにくれば、お前の母さんにしたこと全部してやるのに」


 おじいちゃんは私と暮らしたがっている。私もおじいちゃんと暮らしたい。


 しかし両親にそれを話すと「とんでもない!」と激怒して「アイツには二度と会うな!」と猛反対した。


 おじいちゃんにも電話で抗議したみたいで、前のように会えなくなった。


 私がいらないなら手放せばいいのに。アイツらは自分が愛さないだけでなく、他の人が私に向ける愛情まで奪おうとする。


 だから中学生になり、祠の噂を知った私は迷わず両親の死を願った。そうすれば保護者を失った私は、自然と母方のおじいちゃんに引き取られるはずだ。


 おじいちゃんはまだ元気だし、かなりのお金持ちらしいから生活の心配はいらない。何より今でも私を愛してくれているだろうだから、きっと幸せな毎日になる。


 どう考えても後悔するはずのない願い。だから私はためらいなく、その小さな祠に願った。


『私の父と母が死にますように』と。


 その願いどおり、その日のうちに父と母が死んだ。二人が亡くなったのは別々の場所だけど、同時刻に同じ死に方をしたことが、願いの結果だと示していた。


 しかしその結果、おじいちゃんとはかえって絶対に暮らせなくなった。


 それが理由ではないけど、私は噂どおり、あの日からずっと両親の死を願ったことを死ぬほど後悔している。


 願わなければよかった。願わなければよかった。こんなこと知りたくなかった。




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■ 解説■

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 語り手は両親の死を願ったせいで、知りたくないことを知ってしまった。


 また願いの結果、かえって祖父とは絶対に暮らせなくなったとも言っている。


 どんなに困難な状況でも、お互いが生きている限り可能性はゼロではない。逆に言えば、可能性がゼロになった=祖父は亡くなったのだ。


 両親の死を願ったタイミングで祖父が亡くなったのは、彼こそが語り手の本当の父親だから。


 語り手は両親の死を願った結果、父ではなく祖父と母が死んだことで、自分のおぞましい出自を知ってしまい後悔した。

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