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召喚された聖女は、秩序を守る  作者: はたの


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7





返事はなかったが、気にした様子もなく、パウロスさんは扉を開けた。


そこには、苦しそうにベッドに横たわる、小さな女の子がいた。

五歳くらいだろうか。胸が浅く上下していて、そのたびに、ひゅ、と小さな音が漏れている。


部屋に入った途端、澱んだ空気が肺に絡みついた。

息を吸っただけなのに、私まで苦しくなる。



こんなに小さな子が苦しんでいるなんて。

見ていられなくて、私は思わず駆け寄った。


けれど、パウロスさんは扉の前から動かなかった。

中へ入ろうともせず、ただ、そこに立っている。


ロディさんだけが、私の少し後ろを追ってくる。

ぴたりと寄り添うわけでもなく、離れすぎることもなく、一定の距離を保ったまま。




どうすればいいんだろう。

祈りって、どこから、どう始めるんだろう。


不安になって、私は振り返った。


ロディさんは一瞬だけ私を見て、小さく頷いた。

それ以上、何も言わない。


……分からない。

でも、考えている時間はなかった。


私はベッドへ向き直り、少女の頬にそっと触れた。


冷たい。


そのまま、細い手を包み込むように握る。

浅く乱れた呼吸が、手のひら越しに伝わってきた。




──祈り。

私が祈るだけで、苦しみはなくなる。


聖女だから。

それだけで、十分だった。


……できる。


目を閉じて、私は祈った。


エレノアちゃんが助かりますように。

この小さな子から、苦しみがなくなりますように。


冷たかった手に、自分の熱がじんわりと移っていくのを感じる。頬に添えた手のひらからも、同じ温度が伝わっていく。


——大丈夫だ。


理由は分からないのに、そう思えた。

このまま手を離さなければ、きっと助かる。


私はただそう信じて、エレノアちゃんが治りますように、と祈りを深くした。


どれくらい時間が経ったのだろう。

二分ほどだった気がする。


遠くから、「おぉ……」という声が聞こえた。


目を開けると、白い光がエレノアを包んでいた。

握った手から、触れていた頬から、光が静かに広がっていく。


彼女の呼吸から、明らかに苦しさが消えていた。

青白かった顔に、ゆっくりと血の気が戻っていく。


「エレノア……!」


声になりきらない呼び声を漏らして、パウロスさんはふらりとベッドのそばに膝をついた。


エレノアを包んでいた光は、だんだんと小さくなり、

やがて、何事もなかったかのように消えていった。


すぅすぅ、と穏やかな寝息に変わったのを確かめて、私はそっと手を離す。


パウロスさんは、エレノアの頬を何度も撫でながら、

「よかった……よかった……」と嗚咽を漏らしていた。


覚えのある気だるさを感じながらも、それでも私は、祈って良かったと思った。




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