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次の目覚めは、とても気持ちのいいものだった。
体を起こして、小さく伸びをする。
「知らない場所だっていうのに、案外私って図太いんだな」
窓を開けると、心地よい風が入り込んできた。
太陽はほぼ真上にあって、とっくに朝は終わっているらしい。
コンコン、とノックの音がした。
「聖女様、お目覚めでしょうか」
「はい。どうぞ」
返事をすると、マリアさんがドアを開けて部屋に入ってきた。
「おはようございます」
「おはようございます……私、寝すぎちゃったみたいで。すいません」
「お気になさらず。急に生活が変わったのです。疲れて当然です」
昨日と変わらず、マリアさんは寸分の隙もない姿だ。
対して寝起きのままの私。恥ずかしい。
現代日本では滅多にお目にかかれないような、大きなクローゼットから、マリアさんは一着のドレスを差し出した。
「本日は一日中暖かいそうです。これなら丁度いいかと」
ドレスを受け取ろうとした私の手を、マリアさんがそっと制した。
一瞬だけ、どうすればいいのか分からずに固まる。
でも、言われるままに腕を上げている自分に気づいて、少しだけおかしくなった。
ドレスというよりワンピースに近いそれのおかげで、着替えはすぐに終わった。
ドレッサーの前に座らされて、髪を整え終わるのと同時に、一人の少女が食事を運んできた。
美味しそうな匂いにつられて、お腹がくぅと鳴った。
「昨夜もお食事を運んだのですが、すっかりお休みのようでしたので」
少女から食事を受け取ったマリアさんが、
「お口に合えばいいのですが」
と言いながら、テーブルに配膳していく。
スープにサラダ、パンに綺麗に焼かれた目玉焼き。
白身はふちまで崩れず、黄身は真ん中に丸く収まっている。
湯気の立つスープからは、ほんのりとした香草の匂いがして、焼きたてらしいパンは表面が少しだけ色づいている。
私の世界と変わらない、美味しそうな朝ごはんだ。
スプーンを口に運ぶと、思ったよりも優しい味がした。




