28
順番表を開くと、白い部分が目についた。
数えるほどしか、名前がない。
昨日よりも、さらに薄くなっている。
私は、それを、特別なことだとは思わなかった。
今日は、少ない。
それだけだ。
マリアさんに、お茶をいれてもらった。
祈りに行く前の、いつものルーティンだ。
体は、軽かった。
最近は、重い祈りが入っていない。
回復日も挟んでいる。
祈れる。
そう思えるくらいには、元気だった。
私は、椅子に腰を下ろした。
呼ばれるまで、ここで待つ。
それも、いつも通りだった。
しばらくして、扉を叩く音がした。
ロディさんが、扉を開ける。
そこに立っていたのは、補佐だった。
彼は、部屋に入らず、扉の外から、静かに告げる。
「本日は……祈りは、入りません」
私は、一瞬だけ、言葉に詰まった。
「……今日は、ですか」
「はい。本日は、ここまでです」
声は、淡々としていた。
私は、頷いた。
「分かりました」
返事は、自然に出た。
でも、胸の奥で、少しだけ、引っかかる。
今日は、回復日ではない。
体は、軽い。
祈れないほど、疲れてもいない。
それでも、祈らない。
補佐は、それ以上、何も言わず、廊下へ戻っていった。
扉が閉まる。
静かだった。
私は、椅子に座ったまま、手を、膝の上に置いた。
姿勢は、祈る前と同じだった。
祈れる。
そう思える。
なのに、行き先がない。
鐘の音が、遠くで鳴った。
誰かの足音。
遠くの声。
時間だけが、進んでいく。
誰も、呼びに来ない。
私は、ただ、そこに座っていた。
順番表は、閉じたままだ。
誰も来ない。
それでも私は、ここにいる。




