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召喚された聖女は、秩序を守る  作者: はたの


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最近、両親のことを思い出す。


順番表は薄くなって、祈りの合間に、何もしていない時間が増えた。

忙しさに追われていないと、考えなくていいことまで、浮かんでくる。


私は、補佐のもとを訪ねた。


部屋は静かで、書類をめくる音だけがしていた。

補佐は顔を上げると、私を見る。


「どうしましたか、聖女様」


「……元の世界に戻った聖女は、いますか」


補佐は、すぐには答えなかった。

一度、視線を机に落としてから、ゆっくりと言う。


「記録の中では……戻った方は、いません」


言い方が、少しだけ柔らかかった。


「一人も、ですか」


「はい。残っている限りでは、一人も」


まるで、言葉を選んでいるみたいだった。


「理由は……」


「はっきりしたことは、分かっていません」


補佐は、私を見る。


「戻りたいと願わなかったのか。それとも、そもそも戻れなかったのか。どちらなのかは……誰にも」


そこで、言葉を切った。


「そうですか」


それで、十分だった。


部屋を出て、廊下を歩きながら、私は、少しだけ息を整えた。


──やっぱり、そうなのだろう。


それなら、それでいい。


窓辺に立つと、ふと、父の声が浮かんだ。


「受け手としては、悪くない体だな」


そう言われたとき、私は、ただ頷いた。

意味を考えるより、それが当たり前だった。


母は、少し笑って言った。


「浄めは、怖くないでしょう?ちゃんと器に馴染んでるもの」


私は、「うん」とだけ答えた。

痛いかどうかより、それが普通だった。


✕✕様の器が終わったあと、私が、受け手になった。

決められていたことだった。



両親は、それを当然のこととして受け入れていた。

あの人たちにとっても、それは自然なことだったから。


「選ばれたんだから。ちゃんと務めなさい」


そう言われたとき、私は、誇らしいとも、怖いとも思わなかった。

そういうものだと思った。


……私の代わりは、もう見つかっているんだろうか。


考えても、答えは出ない。


戻れないのなら、仕方がない。


私は、順番の中にいる。


いつもの通り。

決められた通りに。




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