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召喚された聖女は、秩序を守る  作者: はたの


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その日は、祈りの予定はなかった。


回復日だ。


体の重さも、前日よりは抜けている。

いつも通りの朝だった。


廊下を歩いていると、神官の一人が、マリアさんを呼び止めた。


小さな声で、何かを伝えている。


私は、少し離れた場所で、そのやり取りを見ていた。


マリアさんは、すぐにはこちらを見なかった。

一度、視線を落としてから、ゆっくりと振り向く。


「……聖女様」


「はい」


「本日は、予定通り、回復日です」


私は、頷いた。


それ以上の説明は、なかった。


部屋に戻り、窓辺の椅子に腰を下ろす。


外は、静かだった。


遠くで、馬車の音がする。

人の声も、かすかに聞こえる。


世界は、今日も、動いている。


昼前、また、廊下が少しだけ騒がしくなった。


扉の外で、誰かが低い声で話している。


聞き取れたのは、ほんの一部だけ。


「……順番が……」

「……もう……」


マリアさんが、扉の前で立ち止まった。


ノックは、なかった。


しばらく、そのまま立っていたが、

結局、何も言わずに、その場を離れていった。


私は、何も聞かなかった。


聞いてはいけないことだと、思ったわけではない。


ただ、聞く理由が、なかった。


夕方になって、ロディさんの足音が、廊下を通り過ぎた。


いつもより、少しだけ、早足だった。


それだけだった。


その夜、食事のあとで、私は、ふと口にした。


「……今日、何かありましたか」


マリアさんは、ほんの一瞬、動きを止めた。


「……いいえ」


それから、少し間を置いて、


「特には」


そう答えた。


私は、それ以上、何も言わなかった。


回復日だ。


祈りは、していない。

だから、私は、何もしていない。


でも。


その夜、なぜか、胸の奥が、少しだけ重かった。


理由は、分からない。


きっと、昨日までの疲れが、まだ残っているのだろう。

私は、その理由を考えないまま、灯りを消した。



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