表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚された聖女は、秩序を守る  作者: はたの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/29

24


目が覚めたとき、体が少しだけ重かった。


動けないほどではない。

ただ、布団から起き上がるのに、いつもより少し時間がかかった。


昨日は、祈りが多かった。

よくあることだ。


鏡の前に立つと、マリアさんが、いつの間にかそばに来ていた。


髪を整え、ブランケットを手に取って、私の肩にそっと掛ける。

その動きは、いつもと変わらない。

慣れた手つきだった。


「本日は、回復日です」


耳元で、静かに告げられる。


「分かりました」


私は、小さく頷いた。


言われる前から、そうだろうと思っていた。

昨日の最後の祈りは、少しだけ長かった。


そういう日には、こういう時間が入る。

そういう仕組みだ。


身支度を終えたあと、私は部屋に戻り、窓辺の椅子に腰を下ろした。


何もすることがない。


本を開こうとして、やめた。

文字を追うのが、少しだけ億劫だった。


代わりに、ただ外を見ていた。


人の行き来は、いつもと変わらない。

神殿の鐘の音も、いつも通りだ。


世界は、何も変わっていない。


「お茶をお持ちしました」


マリアさんが、静かにカップを置く。


「ありがとうございます」


両手で包むと、湯気がゆっくりと立ち上る。

その温かさが、少しだけ心地よかった。


「……お身体、大丈夫ですか」


「はい」


私は、すぐに答えた。


本当だった。

祈れないほどではない。

ただ、少し重いだけ。



「回復日があって、助かります」


そう言うと、マリアさんは、ほんの一瞬だけ、言葉に詰まった。


でも、すぐに、いつもの顔に戻る。


「……はい」


それ以上、何も言わなかった。


しばらくして、廊下を歩く足音が聞こえた。


ロディさんだった。


扉の前で立ち止まり、声をかけてくる。


「今日は、出立はありません」


「はい」


それだけの会話だった。


でも、去っていく足音が、いつもよりゆっくりだった気がした。


昼を過ぎても、体の重さは抜けなかった。


横になろうかと考えて、やめる。

寝てしまうほどではない。


これも、いつもの範囲だ。


「昨日は、少し多かったですね」


私がそう言うと、マリアさんは、はっきりとは頷かなかった。


「……そうですね」


曖昧な返事。


私は、それ以上、気にしなかった。


夕方になるころ、ようやく、体が少し軽くなった。


深く息を吸って、ゆっくり吐く。


「……明日は、また祈れそうです」


そう言うと、マリアさんは、微かに微笑んだ。


「はい。きっと」


私は、その言葉を、そのまま信じた。


祈れそうだ。

それで、いい。


回復日があって、よかった。


そう思いながら、私はまた、窓の外を見た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ