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召喚された聖女は、秩序を守る  作者: はたの


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2



「理解が早くて助かります。聖女様、こちらへ」


促されて立ち上がると、さっきまでいた人達は疎らになり、私に向かって跪いていた。


聖女って、偉いんだ。






案内された先は、陽の光の入る暖かな部屋だった。白で合わせた家具が可愛らしい。


繊細な装飾のテーブルと椅子のセットに座ると、先ほどの優しげな男の人が説明を始めた。


「改めまして、私は神殿長補佐を務めております。聖女召喚の責任者でもあります」


責任者。

なるほど、ここにはちゃんと決まりがあるらしい。


「この国では、災いが起こる兆しが出た時、聖女をお迎えする儀式が行われます。今回、その対象として選ばれたのがあなたです」


ティーセットを持った女性がやってきて、音を立てずにお茶を置いた。


「ご負担をおかけしますが、もう少しだけ話を聞いて頂けますか」


勧められてお茶を一口飲んだ私は、ずっと気になっていたことを尋ねた。


「なぜ、私なんですか?」


「聖女の選別に、おそらく理由はありません。今までの聖女様は皆、善性で心優しき人ばかりだったと記録されています。ですので理由があるとすれば……あなたがとても良い人だったから、でしょうか」


良い人。

元の世界で悪いことをした覚えはないけれど、特別善人だったとも思えない。


「ああ、時間が差し迫ってきてしまいました。このあとは、この侍女に対応を引き継がせていただきます。

非常に優秀な者ですので、何かございましたら彼女にお尋ねください」


そう言って、補佐さんは私と女性に一礼し、部屋を後にした。


さっきお茶を運んできた女性が、私の前に立つ。


「はじめまして聖女様。聖女様のお世話をさせて頂きます、マリアと申します」


マリアさんは綺麗な姿勢を折って、丁寧なお辞儀をしてくれた。

隙のない所作から、本当に優秀な人なんだろうと思う。


「この部屋には鍵が付いておりません。不安でしょうが、部屋の前に護衛の騎士を立たせますのでご安心ください」


お風呂とトイレの場所、食べ物が入った棚、好きに着ていい簡素ながらも手触りの良いドレス。

この部屋には、十分すぎるほど色々なものが揃っていた。


一通り説明を終えると、マリアさんは私の様子を見て口を開いた。


「お身体の具合はいかがでしょうか。痛い所や、気分の優れない所はありませんか」


「特に痛い所も悪い所もないです」


「でしたら少し、聖女様のことをお聞きしてもよろしいでしょうか」


「もちろんです。聞かれて困ること、ないです!」


マリアさんは少し雰囲気を柔らかくして、紙と万年筆を取り出した。


「お名前と年齢は?」


「あ……星野、ナナ。18歳です」


紙に書き込みながら、マリアさんは時折こちらに視線を向けていた。

私の表情や動きまで、全て記録しているように思えた。


マリアさんが訝しげな顔をしたのが分かった。私は少し気恥ずかしくなって、


「先生くらいしか、そう呼ばなかったので……」


と伝えた。


「そう、なんですね。18歳ということでしたが、伴侶の方はいらしたのでしょうか?

この国では、聖女様の年齢で家庭に入る者も少なくないのです」


「いえ、結婚はしてないです」


お茶を飲もうとティーカップに手を伸ばすと、マリアさんが新しく温かいお茶を淹れてくれた。


「は、ということは恋人が?」


「いえいえ! 言葉の綾です!そういう、特別な人はいないです」


マリアさんは一度だけ筆を止め、その後は何事もなかったように書き込みを続けた。


「ありがとうございました、聖女様。記録は取れましたので、私はこれで下がります。聖女様から、聞きたいことはありますか?」


聞きたいこと……たくさんあるような気もするけど、今は……


「大丈夫です。お気遣いありがとうございます」


一礼して、マリアさんは部屋を出ていった。

ちゃんとした大人といると、なんだか私も姿勢が良くなっちゃう。


人目が無くなった部屋で、私は思いっきりベッドにダイブした。


ふわふわだ……。

国の危機らしいのに休ませてくれるなんて、優しい人たちだな。

こんなにいい部屋、いつから用意してたんだろう……。


柔らかい布団に沈みながら、私はいつの間にか目を閉じていた。









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