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守護者の剣 - 男を動かすのは情か理屈か -  作者: 佐藤太郎
第3章 帰郷 そして....
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第56話 恋のキューピッド大作戦!

― ブティック街のひたすら奥へと足を進めるローズ


 丁度、彼が間抜けな格好で"エウレカ!"と叫んでいる頃合いだろう...


 フレッドが追いかけるのを諦めたともつゆ知らず、である。


「2000ゴールド...ねぇフレッド、このバックなんてどう...って、あれ? フレッド?」


どこ行っちゃったのかしら?


まさか自分一人で歩き回って....


まったく...折角のウィンドウショッピングに水を差されたわ。


私って、そんなに魅力ないかな...?


「確かジーニアス=コバヤシ流恋愛全書には、SMプレ...違ったわ、プレゼントが効果的だって...」


馬鹿じゃないの、ローズマリア!


SMプレイはショジョノ=オカーマ博士の著書"Mの目覚めシリーズ"第2部第5項の特例措置よ!


今は、清いプレゼントを考えないと!


うーん...アクセサリの類なら喜んでくれるかな?


でも、普通のものだと多分着けてくれないわね....


エリーカさんのお店なら面白いのもあるかしら...?


.........


「確かここね。 あれ、でも開いてない...?」


―彼女はブティック街からまっすぐエリーカの魔道具店へと向かった。


 勿論、幾度も展示されているバックなどに目を取られはしたが...


 しかしアパレルを物色したいという乙女の本能は、彼氏(そう思ってる)へのプレゼントを買いたいというこれまた乙女の本能と競り合った結果、僅かに及ばなかったようだ。


 だがそれほどの機会費用を無駄にするかの如く、いつもは不用心に開けっ放しされている店のドアはその口を閉じていた。


「うーん...開いてないのかしら?」


―そう言いながら彼女はノブへと手を掛ける。


「あれ? 動く...開いてるじゃない。

 エリーカさん! 殿方のためのプレ...って」


―彼女は言葉を少し口に含む。


 カウンターにいたのは老婆エリーカではなく、若く美しいエルフであったからだ。


 その表情はどこか虚空を見つめている...


「あぁ...いらっしゃい、ローズちゃん」


「えっ?」


誰よこのエルフ...それに私の名前....


「あなたは...? どうやら、私の知らない人のようで...」


―ローズは腰に携えたドルヒに手を掛ける。


「いやね、私よ、エリーカよ...」


「エリーカ...さん?」


ますます怪しいわ。


一体、何者...


「あぁ...この見た目だとそうね...."変装"」


「!」


「この見た目の方が良いかい、嬢ちゃん?」


―"変装"


 使用することで、名前通り変装するスキルであり、エリーカが頻繁に使っているものだ。


 だが、ローズはそんなことなど知らない...


 その反応も無理はないだろう。


...........


「"変装"....?」


「昔はこれでも有名人だったからねぇ。

 身を隠すために変装し始めたが....街で定着しからに、この姿にしてただけさね。」


「それでも、あなたはエリーカさんに扮した別の人物という可能性が残りますが?」


エルフの急所は人間と同じ。


ここから眉間まで早くて2秒かしら...


まずは組み付いて...いや、蹴り倒した方が良いわね。


―ローズは左足を少し下げると、自己強化(ステータスゲイン)の準備を始めた。


 その場に彼がいたならば良かったのだが、ローズが置き去ってしまったので致し方ない...


............


「"キャンセル"」



―場が強張る。


 しかし、女がまず発したのは答えではなく、切り捨ての合図だった。


 その言葉がトリガーとなり、歪められていた姿がもとの配置にもどる。


「そうね...坊やが知ってる筈だわ。

 彼に聞きなさい、"エリーカはエルフか"って。」


「ならなんで、さっきまで"変装"を解除して...」


「マルコに会いに行ってたからよ。

 昔の彼は筋骨隆々で武骨なまさに武人って感じで私、たぶん惚れてたの!

 なのに....なのに会いに行ったら....!」


「あぁ...」


確かにエリーカさんは会いに行ってたけど...


それは別人でも知ることが出来る筈よ。


現に、私だって知っているもの。


「あのデザインのタイだって、彼がよく身に着けてた物だったのよ?

 それで舞い上がって、若見えの秘薬だって使ったのに!

 なのに、出て来たのはとんだ変態ドワーフじゃない!」


........


確かにオネェ趣味の変わった人だったけど、まだ怪しいわ...


「そのショックでつい、解除したままだった...と?」


「ええ、誰しも絶望を覚えれば、そうなるじゃない?

 でも、もう諦めたの。 恋はもういいわ。」


「!」


―その瞬間、ローズの(シナプス)興奮が活発になる。


 乙女脳にとって、そんな燃えるシチュエーションなどそうそうないからである。


(燃える....最高に萌えるわ! まるで劇画じゃない!)


「エリーカさん...私、協力しま...「乙女を泣かせるとは...ふっ、ドワーフの風上にも置けない奴だな。」」


―彼女が協力を申し出ようとしたその時、店に風が吹き込み、彼女の言葉を遮った。


 そして、ドアにはまるでB 級映画の吹き替え版のようにダンディなドワーフがもたれている。


 そのダンディの名は...


「マルコ!?」


「花の様に美しくも可憐なエルフ王国が姫君...そして、儂が助け出したお嬢様...オネェに逃げた馬鹿はもういねぇ...」


―ごくり...


 誰か(十割ローズ)が息を呑む。


「斧使いのマルコとは、この儂じゃあッ!」


........きゃぁぁぁぁ!


  これって、凄く感動的だわ!


  まるで恋愛映画じゃない!


「マルコ....あなた....」


「ふっ、かつて自由のために王国を去り...

 新しい名とともに生まれ変わった麗しのレディ...冒険者"エリーカ"

 その美しさは悠久....か。」


「マルコ....」


「エリーカ....」


「マルコ....!」


「エリーカ....!」


「メェイルカォ!!」


「イリィクワァ!!」


―そして、2人は抱き合うと...


「「愛してる...」」


―小さな店にその言葉が静かに広がる。


 そして...


「あぁ、これだわ! これが私の...求めていたものだわぁ!!!!!!」


―暴走列車は大量のオイル(鼻血)とスチーム《鼻息》を排気すると、床にぶっ倒れた。

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