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守護者の剣 - 男を動かすのは情か理屈か -  作者: 佐藤太郎
第二章 回り始める世界
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第49話 ロッソシュナイダー戦-Ⅳ

退路は断たれたか....


―彼らの背後で重なり合う巨木の残骸が、冷酷に"逃亡"の文字を塗りつぶす。


.......


絶望に浸るな!


そんな時間はない、思考を加速させろ。


まずは....


「ソナー!」


―波紋状に広がる魔力の響き...


 障害物に跳ね返ったその反響が、非自己の存在を(しら)せるスキルである。


 "紅毛(ロッソシュナイダー)"は今、2人の目の前でまるで獲物を値踏みするように留まっている。


 ならば当然"ソナー"に反応する筈であるが....


.......


「反応なし、定位出来ない....」


何故だ?


反応がない...つまり、反響が返って来ていない...?


―その瞬間、彼の脳裏にある1つの仮説が生まれる。


あの目に刺さるような深紅.....


あの毛皮か... 魔力の波を減衰・吸収する特殊な構造。


それが"ソナー"を無効化したのか....


「ローズ..."アサルトレイ"は?」


「狙ってるけど...駄目だわ。

 魔力を流してから発動までの間に、軸をずらされる...!」


―"仕立て屋(シュナイダー)"の名は伊達ではない。

 

 獲物の呼吸、魔力の揺らぎさえも、奴にとっては"裁断"の目安に過ぎないのだ。


........


どうする....?


近接戦は言うまでもない。


"アサルトレイ"はタイムラグが大き過ぎる。


ならば、頼みの綱は弓か.....


鉄の(やじり)ならば、あの毛皮も貫ける。


だがエルフの聴覚をもってしても、"ソナー"なしに当てるのは難しいか....


そうなれば....!


「ローズ、陽動....頼めるか?」


「ええ、勿論! それで作戦は?」


―フレッドが作戦を説明し、ローズはそれに頷く。


 そして、それが終わると"紅毛"は期を待っていたかの様に前足を高く振り上げる....



「「来た!」」



―振り下ろされたその足からは斬撃が放たれ、2人の丁度間に溝を掘る。


 その瞬間、二人の意思が重なった....


「こっちよ、この獣!

  私のドレスに触れたいのなら、まずは追いついてみせなさい!」


―ローズの挑発を受け、紅き獣はまるで職人のように静かに、しかし重厚な殺気を伴いながら彼女を追い始める。


 しかし、その注意がその場にいるもう1人から外れることはない....


....


「上手くやってくれてるな。」


木を背にしながら、上手く射線を切っている...


奴も追いかけるのに必死で、"罠"には気づいていない....か。


そろそろ頃合いだな。

........


「ローズ!  今だ、こっちに!」


「はぁはぁ...了解ッ!」


―ローズは舵を直角を切ると、彼の真正面へと飛び込む。


 その後を追うのは、怒りによってさらに鋭さを増した"紅き突風"


 ターゲットがローズからフレッドへと移行した、その刹那...


「.....掛かったな、行けッ!」


―ドォォォンッ!


 突如、ロッソシュナイダーの側面に位置していたブナの古木....その影からあらかじめ滞留させられていた炎の弾丸が爆発的に射出された。


 "グラヴィティコントロール"で位置の固定と発射を行う"ファイヤー"のトラップである。


「グォォォッ!?」


―回避不能の多角攻撃...(あか)き毛皮が爆炎に包まれ、奴の誇る"隠密性能"が物理的に焼き落とされる。


 焦げ臭いその臭いに、彼は勝利を確信する。


.........


作戦通り...いや、それ以上だ!


元々毛皮の焼失が目的だったが、このままなら...


―彼は火達磨(ひだるま)の"紅毛"を見て、気を抜いてしまう。


 その光景を見れば、誰もがもう倒れたと思うことだろう。


 彼も、彼女も追撃を躊躇った...


 しかし...


「グウォォォォォン!!」


―ロッソシュナイダーは咆哮を上げ、爆発的な加速を見せる。


 そして風を纏うことで、その身を焼く炎を強引に引き剥がし鎮火させたのだ。


 焼け(ただ)れた紅.....だが、その下から覗く瞳は先ほどまでの冷徹さを失い、深紅の狂気一色に染まっていた....


.........


鎮火された!


流石はAランク...一筋縄ではいかないということか!


―ロッソシュナイダーはその四肢から、蒸気のような熱気が立ち上げさせる。



 それは奴の爪が客人を仕立てるための"ラシャ切鋏"から、ただ獲物を(ほふ)るためだけの"凶器"へと変貌した合図だった。

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