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守護者の剣 - 男を動かすのは情か理屈か -  作者: 佐藤太郎
第二章 回り始める世界
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第47話 ロッソシュナイダー戦 - Ⅱ

―その日もエールは平和そのものであった。


 冬を目前にした空気は澄み渡り、街の家々に差し込む柔らかな光は人々の意識を夢から優しく引き戻す。


 街は生きる活力に溢れ、まるで世界の祝福を表しているようだ。


 だがしかし!  そんな美しい景色に全く似合わない顔をした一組の男女がいた。


「ねぇフレッド、昨日...私達、何をしてたかしら?」


「あははは...何言ってるんだいローズ。 昨日は安息の日曜日、二人でゆっくり休もうって決めたじゃないか?」


―ローズの問いに、フレッドは乾いた笑みを浮かべて即答する。


「うーん、なんだか"熱いコト"をした覚えはあるのよね。でも、肝心なところが思い出せないの...」


「あははは...何言ってるんだいローズ。 昨日は安息の日曜日、二人でゆっくり休もうって決めたじゃないか?」


「あなた.....?   ちょっと、私の話聞いてる?」


「あははは...何言ってるんだいローズ。 昨日は安息の日曜日、二人でゆっくり休もうって決めたじゃないか?」


 ―何を言っても壊れたテープのように同じ言葉を繰り返すフレッド...また、その目は明らかに遠くの虚空を見つめている。


  昨夜の心労が、彼の精神を限界まで削り取ってしまったようだ....


「いい加減にして.....フレッド!!」


「わっ! びっくりした....それで、どうかした?」


「"どうかした?"じゃないわよ!  昨日のことを聞いてるのに、ずっと同じことばっかり...」


「だから何度も言ってるだろう?  昨日は安息の日曜日...」


そうだ、昨日のは...そう、ナイトメア、悪い夢だったんだ。


うん、きっとそうに違いない。


―そう自分に言い聞かせるフレッド


 ローズが不審に思うのも当然である。

 

 しかしその時、彼女はようやく"違和感"の正体に気づく。


 バスローブ一枚の自分、自室にいる(1人の男)、そして妙に火照っている体....まるで"事後"の様相だ。


「わ、私.......バスローブ.....フレッド.....ここ、私の部屋....」


「ローズ?」


どうしたんだ、急にブツブツ呟き始めて?


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


―耳を(つんざ)く金切り声と共に、枕という名の弾丸が彼の顔面を直撃する。


「変態! 破廉恥! エルフの皮を被った獣!」


「ちょっと待って、僕は何もしてないよ!」


「嘘つき! 淫魔! ケダモノ!」


―荒ぶる彼女はとどまることを知らず、彼への暴言はマシンガンの様に飛び出す....


「僕は何もしてないよ、信じてくれ!」


「私の純潔を奪っておいて、よくそんな言葉が出てくるわね!」


―どうやらマシンガンの様に弾幕を成すのは言葉のみではなく、ベッドに置かれたままの角瓶(元凶)も含まれるらしい。


「痛ッ! だから本当に違うって!」


「本当に.....?  本当に何もしてないのよね....?」


「誓って、何もしてないよ....」


「そう? そうなら....うん....」


― その言葉に今の今まで暴言を浴びせていた彼女はすっと平静を取り戻す。


「ローズ....?」


「どうしたのよ?」


「信じてくれるの....?」


「あなたがそう言ったんでしょ? それとも嘘なの?」


「いや....」


まさか、すぐに信じてくれるとは思ってなかった....


「何よその歯切れの悪さ....やっぱり、何をしたのか正直に言いなさい!」


―再び業を煮やした彼女は彼の肩を掴むと強引に揺らし始めた。


「うわっ、ちょっと、ちょっと待って!」


「止めて欲しければ正直に言いなさい、この淫獣!」


「ローズが...ローズが、酔ったまま僕の"初めて"を奪おうとした!」


「何言ってるのよ! そんなわけ....あっ...」


―フレッドの正直過ぎる告白に、今まで強気であったローズの端正な顔はみるみる歪んでいく...


 きっと何か思い出したくないものが記憶として蘇ってしまったのだろう。


 今そんな彼女を襲うのは、羞恥心という名の絶望である。


.........


「ローズ....?」


「見ないで....」


「ロ...「見ないで! もう.....顔向け出来ないから...」」



―昨夜の淫獣はどこへ行ったのか、センチメンタルレディが取って代わったようだ。


 ローズはその場にうずくまり、全く動こうとしなくなってしまった。


 だがここで、フレッドは彼女に救いの手を差し伸べる。


「昨日...ローズは"お願い"を使って、僕の"初めて"を奪おうとした....だから、こうしよう?」


「うっ............早く言って...」


―何気なく開示された"お願いを使って襲う"という、もっと汚い過去の自分にローズは悶絶する。


 だからこそ、彼から提案されることも気になって仕方ない。


「"お願い"を上書きしてよ、それで全部なかったことにしよう?」


「上書き.....?」


「ほら、ローズの望みは?」


― 彼はまるで病める者に救いを与える(ウーシア教徒)ような口調で彼女の説得(救済)を試みる。


 奇しくも、昨晩の彼女が発した"上書き"という言葉を使って....

 

「私の....望みは.....」



― 彼から差し伸べられた手を彼女は藁にもすがるような.....


 それほど切実に握ろうとしたことは言うまでもなかろう。


........................


という騒動を経て、現在.....


「フレッド、足が止まってるわよ?」


―ローズが自らの痴態を消し去るために選んだ"上書き"....



 その内容とは、Bランクへと進級し、醜態以上の名誉を立てることであった。

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