第45話 墓地探索 - Ⅲ
「なぁ、本当にこっちで合ってるのか?」
「ふっ、愚問だ....運命の導き、それ即ち天啓!
だが我は神のマリオネットには非ず....運命を切り開きし者なり!」
「それって、結局分からないつぅーことだよな?」
「汝、愚かなる者よ....何故貴様は先を視るを欲するか?」
「さっきから何言ってんのか、全然分かんねぇよ...
いい加減元に戻れ!」
「これは血の契約...我は我で...「後でローズマリアにバーでお前が言ってたこと...全部教えてやる。」」
「分かったよ...これで良いか?」
「ああ、それで良い...うッ...また、酷くなってきた...」
「冥府が門は疼くか...ならば我が...「止めろ!」」
そっちが誘ってきたクセに....まぁ、仕方ない....か?
―だがその時、微かな、だが聞き慣れた絶叫が彼らの耳へと届く。
「ギィーャー! た、助けて〜!」
.....
「今なんか聞こえたか?」
「...なんだか嫌な予感が...」
―案の定、その声の主は....
「「サイモンか....」」
―サイモンはいつも通り叫びながら走り回っている。
どうやら、彼にとって走る場所など関係ないようだ。
「なぁ、アイツなんで走ってるんだ?」
「さぁ....? いつもならスライムとかに追われてるけど....」
今回限りはそういうわけでもなさそうだ....とうとう走らないと気が済まない病気にでもなったのか?
―若干サイモンに失礼なことを考えている間にも、徐々にサイモンは2人のもとへと迫ってくる。
「たす、助けて....ハッ!」
あっ、見つかった。
「助けてくれ〜! フレッド、フレート!」
―だが、その表情には普段にない青ざめたものがある。
彼らのもとへと辿り着いたサイモンはフレッドの足にしがみつき、その恐怖を訴える。
「助けてくれよ...フレッド、フレート!」
「近づきすぎだ、あと僕の足を掴むな......で、どうかしたのか?」
「ゆ、ゆゆゆ....!」
「「ゆ?」」
―怯えた様子のサイモンの口からはただ一文字"ゆ"の響きが出るのみだ。
「ゆ...ここで"ゆ"つったら....」
「墓地で"ゆ"と言ったら.......」
まさか....
「幽霊が出たんだよ、助けてくれ!」
はやり、幽霊か!
「見たのか!?」
「えっ? なんというか.....こう、靄みたいな...とにかく助けてくれよ!」
「別に幽霊が追いかけて来たわけじゃないだろ?
そんなことよりも、幽霊はどこに!?」
幽霊....実に惹かれる!
「え? そりゃ、俺が走ってきた方にい....ッ!」
「サイモン...? サイモン!」
返事がない...
―彼らに伝えようと後ろを振り向いたサイモンは、その目を"何か"に当てたまま動きを止めてしまった。
「安心して気絶したんじゃねぇか? でも、どれどれ? 一体何が...って....あっ」
「アルフレート!?」
―サイモン同様、アルフレートまでもが白目を剥き、倒れ込んでしまった。
.......
「おい、アルフレート!」
2人とも気絶するなんて一体何があるって言うんだ...
―フレッドはサイモンの来た方向を見てみると...
「ん? 人はいるけど...幽霊なんてどこにも...」
人はいるけど...他に何かいるか?
それにしてもあの人....もっとも僕が言えたことじゃないが、墓場に緑色のスーツで来るとは...
おっと、目があってしまった...
―フレッドは少し微笑んだ後に視線を外そうとするも、スーツの男は奇妙そうな顔をした後、フレッドの方へと歩み寄ってくる。
.........
「えっと....どうかされましたか?」
―緑スーツの男は彼目の前へと"ぐっ"っと距離を縮めると、さらに驚いたような表情をとる。
そして......
「君の目に....私はどう映る?」
「え? 綺麗なスーツ姿だと思います.....よ?」
どうしたんだこの人? なんで自分の格好なんて...
それにしても、何か違和感が....ん?足元に影がない...
―男は暫く考える様な仕草をした後、怪しげに口角を上げる。
「そうか....そこまで見えるか....ならば、少し君の体を拝借させてもらうこととしよう。」
「え? それはどういう......あっ」
あっ、そういうことか....
―男がフレッドの肩に手を乗せると、たちまち男の姿は靄が切り裂かれる様に消え去る。
「うむ、やはり体があるというのは素晴らしいものだ....さて、一先はこの忌々しい墓地を出ることとしよう。」
―その声は普段の彼のものとは違い、低く、また体の底を震わせる様なトーンであった。
この2人の青年は...体の持ち主の知り合いであるか....
ならば連れ出すのもやぶさかではない。
― "エルフの姿をした者"は地面に横たわるサイモンとアルフレートを抱えると、墓地の外へと歩みを始めた。
...........
「やはり2人分となると、重いものだ....」
―"その男"は歩く、だがその歩みは何を見据えているのかはまだ分からない...




