第41話 契約 - Ⅱ
「それじゃあ、契約の儀式だけど...」
「何をどうするのか、知らないんだけど?」
「取り敢えずは教会に行くところから、かな...」
「教会で儀式、って結構複雑なことでもするの?」
「いや、儀式自体はそこまで難しくないよ。
教会で契約書を貰って、血のサインをするだけ....」
「血のサイン....よくあるものね。」
いや、そんなにはないと思うが....
まあローズがそう思っているなら、それで良いか...?
「そう言えば、何かデメリットでもあるの?」
デメリット...か。
これを言ったらローズは契約を躊躇するかも知れない.....
だが聞かれた以上僕は黙らない、そう決めたんだ。
―そこから暫く間を置いてから、ようやく彼は口を開いた。
...............
「.....もしローズが致命傷を負った時....
その時、僕の目は"死"を迎える。」
.................
これこそ、僕が躊躇っていた理由だ。
だって、目がなくなるなんて誰でも怖いだろう?
「......"死"って、何か遠回しな表現じゃなくて?」
「そのままの意味だよ。
一応、契約主が許可すれば魔法での治療は可能になるけど...」
「その頃には、契約主...要するに守護対象の私は生きてるか分からない....」
「そういうことになる。」
「本当に...あなたはそれでも良いの?」
「ああ...」
「それでも....私と結びたいの?」
「もう、覚悟は出来ているよ。」
「言葉にしてくれないと分からないわよ?」
それを言わせるか...
だが.....ここで言わねば守護者の名折れだ!
.......
「ローズ!
僕は...一人の守護者として、必ず君を守ってみせる!」
陳腐な台詞かも知れないけど....それでも!
―少々ありふれた言葉かもしれないが、彼は彼自身の言葉で彼女に誠意を伝えたつもりだ。
だが、彼女から帰って来た反応は彼の予想とは少し異なるものだった。
.......
「そんなに、"わ · た · し"と契りを結びたいの?」
「えっ? ―うん、ローズと結びたいってことだけど...?」
―その言葉に、何故か彼女の頬は赤みを帯びていく。
「そ、そんな急に言われてもまだ準備が.......!」
「え? 準備もなにも...今からするんだけど?」
なんで照れてるんだ? それに、準備はまだで当然では?
「そうね、あなたはちゃんと私のことを待ってくれる...
そんな人、違った....エルフだものね。」
何が言いたいのかさっぱりだが....
「うん、しっかりと待つ...よ?」
「ふふっ、まるで私の騎士様ね。」
「?」
駄目だ、もう会話が噛み合わない...
さっきから、ほぼローズの一人語りだ。
だが、乙女を守る騎士か.......悪くない、いや至極の響き!
........
―恋愛小説の読み過ぎ乙女の思考は、"不治が病の囚人"には通じなかったようだ...
在りし日のある少女の話
「わぁ〜! この人がお母様なのですか?」
―ある少女はその母親と一冊の物語を読んでいた。
その部屋は少々狭いがしっかりと内装が施されており、並ぶ家具も質の良いものばかりだ。
「ええ、そうよ。
お父様は昔から、凄腕の剣士だったの。 それでね....」
........
お父様、凄い!
いつも私のことを甘やかし過ぎだ、ってお母様に怒られてるのに凄い格好良い!
........
―その後も彼女はページを捲り続けた。
「盗賊の集団はその一太刀で薙ぎ払われた.....
彼の一撃はその深紅を穿ち、全てを砕いた....
彼は戦友の大賢者"ジーニア=スコバヤシサン"と共に荒ぶるドラゴンを鎮めた......ん?」
うーん、知らない文字だわ....
なんて書いてあるのかしら?
「お母様、ここはなんと書いてあるのですか?」
「ごめんなさい、実はそこは私も読めないのよ。
それに、お父様も意味は教えてくれないし.....」
お父様がお母様に黙っておくなんて......
本当になんて書いてあるのかしら?
「さあ、マリー? 読書はここまでにして。
そろそろ勉強の時間ですよ。」
「はーい!」
―その文字の意味は"勇者の俺超Tueeeeeeeeから、その国のお姫様フって、超絶美人のお嬢様と愛し合います!!"というものであったそうだ。




