第36話 ノールとの決闘
「では、始めるとしよう。」
―静かな闘技場には、ノールのその声のみが響きわたる。
「青年よ、剣を構えよ。」
―フレッドはその言葉に応じ、剣を縦に構える。
そしてその眼光は確かな鋭さを孕んでいる。
だが、両者の剣には魔力の一切が込められていない。
それもひとえに純粋な剣での勝負のためだ。
.........
先に動き出したのはノールの方であった。
彼は洗練された踏み込みで、剣を進める。
―キンッ
アルフレッドの咄嗟の防御によって、二振の剣が交差し
硬質且つ短い金属音をあげる。
フレッドは力では抗うことが出来ないと悟り、
ノールの剣を体の横に受け流す。
.......
やはり力では勝てないか......
だが、全く抗えないわけではない!
「ハッ!」
―フレッドは短く息を吐くと、その右足を前に置き、
素早く刃を突き出す。
「ッ! 実に美しい筋だ....
さながら鋭さと理性の共存といったところか....」
―ノールはその素早さに心内驚かされつつも、
その剣を確実に受け止め、絡め取る。
「素早さには自信があるので...ねッ!」
―フレッドは急ぎ剣を引き、ノールから距離を取る。
捉えられるか....中々に上出来の一撃だと思ったのに...
「それでは、今度はこちらから.....」
ノールは剣を持つ手を引き、その左手を刃に添える。
それに応える様にフレッドも剣を斜に構え、
ノールを迎え撃つ準備をする。
暫く時を見計らった後、ノールの急襲が彼を襲う。
その剣先はアルフレッドの肩を捉え、突き抜く。
「くッ! だが、まだ!」
アルフレッドは体を大きく後退させ、続く追撃を躱す。
だが、ノールはさらに彼を壁際に追い詰める。
それによって、もはやアルフレッドがノールから
逃げるのは不可能に近くなってしまった。
........
まずい! このままだと.....
こうなったら..........
一撃だ.......この一撃に賭ける!
アルフレッドは彼の持てる力を足に集中させ、
それまでで最速の剣を放つ。
「ハァッ!」
...........
「..............これ以上は礼を失する。 見事である、貴君よ。」
―その先端はノールの胸元に触れた。
両者共に剣を下ろし、一礼をする。
そして、その一礼によって闘いは幕を下ろしたのだった。
.......................
「君はその剣で何を成し得たいのか、決めているのかね?」
―闘いを終え、ローズを抱えテレポーターで急ぎ帰ろうと
するフレッドにノールはそう問いかける。
「私は.....」
―アルフレッドはそう言いながら、その腕に抱える
ローズマリアの方を少し見て考える。
「守りたいです........自分にとって...大切なものを...」
―そこで魔力切れにより、アルフレッドの意識は途絶えた。
「そうか....ならば、殊更励むことだ。」
―意識を失ったアルフレッドに対して、
ノールはそう言葉を掛ける。
その次の瞬間、テレポーターが起動し、アルフレッド
から吸い取られた魔力が周囲を青白く包む。
...............
転移先、エリーカの店...
「何! またかね、坊や!」




