第31話 スタンピード - Ⅱ
その後、中心地ノールダンジョンに向かったのだが、
ダンジョンの扉の前には厳重なバリケードが、
その周囲には高台が築かれていた。
おおよそ高台から弓矢などでバリケードに引っ掛かった
モンスターを狩るという寸法だろう。
だが.....
「ローズって、弓矢使えたっけ?」
何故かローズはその手に弓を持っている。
「え? 弦を引いて放すだけでしょ?」
駄目だ....弓の難しさが分かってない。
誰しも一度は思ったことがあるだろう、
"別に的のどこでもいいなら当てられるだろう"と。
標的がただの的ならそうかもしれないが、
今回の標的は動くモンスターだ。
そう簡単には当てられないし、一撃で仕留めるのは
さらに難しい。
僕だって難なく当てられる様になるまで、
2ヶ月間ほぼ毎日練習してようやくだ。
「使い慣れない武器を使うよりは、魔法とかで遠距離
攻撃した方がいいと思うけど?」
確か、"アサルトレイ"ってスキルを持ってた筈だ。
「アサルトレイの事?
3発で魔力切れを起こすくらい魔力を消費するのよ。
まだ、撃つには早いわ。」
ローズの魔力量は中々の物だが、それでも3発が限界...
そんなに燃費が悪いスキルだったとは.....
「それにもし危険な状態になったら、その時は剣で
戦えばいいじゃない?」
「まぁ、そうだな。
勿論 弓矢が使えるに越したことはないけど。」
―その時、扉の奥から物音がする。
「ん? この音...遂に来たか!」
それはスタンピードの始まりを告げる音だった。
.........................
「来るぞ! 全員、気を抜くなよ!」
この場はマッスルさんが指揮を執るのか...
ギルドの受付人とは言えこういう経験もあるだろうし、
知らない人が指揮を執るよりはずっと良いだろう。
段々と物音が大きくなっていくにつれて、
冒険者達の集中力は増していく。
そして....
「扉が破られたぞ!」
遂にモンスターの大群がその重厚な扉を破り、
外界へと溢れ出てきた。
「前方の弓使い、矢を放て! 敵に近づかせるな!」
その言葉を受け、その場にいたアーチャー達は一斉に
射撃を開始する。
......................
「あれ? 全然当たんない!」
ローズはやはり弓矢が使えない様で、まだ一矢も
当てられていない。
今のところ出てきているモンスターはコボルトやスライム
といった小型種が中心のため、無理もないだろう。
「チッ、きりがねぇな。
もういい、バリケードごと魔法で破壊しろ。
その後、ダンジョン内に突撃する。分かったか!」
そう言いながら、マッスルさん自身も斧を構えだした。
スタンピードを収めるためにはダンジョン内部の魔物をある程度まで減らさなければならない、だから突入は必至だ。
危険だが、その分早く事態を終息させられる。
...............
「ふふっ、どうやら私の出番のようね。
―アサルトレイ!」
―まず誰よりも早くローズが攻撃を仕掛ける。
矢が当たらず苛立っていたせいか、その威力は
前に見た時よりも格段に上昇していた。
これなら3発限りでも申し分ない威力だ....
というか、もっと魔力を使ってる様な気が....
..............
―その後も彼女に続くように攻撃が畳み掛けられる。
「喰らうが良いモンスターめ、サンダーショット!」
「ここに女神の裁きを...ジャッチメントレイ!」
「この手の疼き....時が我の顕現を求めている!
―ブラッディジャベリン!」
........最後の人とは良い友になれそうだ。
それにしても皆、技名を叫ばなければ気が済まないのか?
もっとも僕が言えたことではないが.......
そんなことはさておき、これで外に溢れ出していた
モンスターの大群は壊滅した。
"何だ、簡単なことじゃないか"とか思っただろう?
スタンピードの大変なところは、この後だ。
「俺がこのスタンピードを止めた英雄になる男だ!」
こういう者が出て来るのが一番の問題だ。




