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鉄仮面と呼ばれた男  作者: カキヒト・シラズ


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第5話

 4枚の30型OLEDモニタが世界の金融市場の動向をリアルタイムで伝えている。

 株価をはじめ各種有価証券の値動き、各国通貨と為替レート、先物取引などのデリバティブ、株価変動を金融工学で分析したデジタル信号処理のグラフ……。

 トレーディングルームにはワークステーション用タワーPC、デジタル複合機、WiFiルータなどOA機器が鎮座し、中央のデスクにはPCに接続したマルチディスプレイが並ぶ。

 八重樫祥子はキーボードとマウスを素早く動かしながら、デイトレードに余念がない。

 ときおりデスクチェアを軽く回転させ、別のモニタを確認する。

 日本時間では真夜中だが、この時間、ニューヨーク証券取引所では取引が活発になる。

 この一週間の累計で億単位の取引はしているかしら。祥子は深呼吸をする。

 以前、投資信託会社に金融取引の大半をまかせていたが、最近は自分でオペレートするようになってきた。

 パチンコ店『ガチンコ』を経営しているくらいだから、ギャンブルは得意な方だ。

 株のデイトレードはギャンブルといっていい。

 だから人まかせにしてマージンを取られるより、自分でオペレートした方が手取りは多い。

 取引の半分は祥子の個人名義の預金で運用し、残り半分はエイトナインスリー社の法人名義だった。

 祥子はマウスを持つ手を休め、ライターで煙草に火を灯す。

 陽介ちゃんはもう寝てるかしら。それともまだ起きていて、PCでも動かしてるかしら。

 祥子は煙草を一口吸うといらいらしながら灰皿に煙草を押しつぶす。

 ほどなくして席を立つとトレーディングルームを後にする。


 先ほど鉄仮面、冴島陽介をバー『酒池肉林』で見つけると、6階の自宅に連れてきた。

 自宅内にはユニットバス付のゲストルームがあり、冴島はしばらくはそこで寝泊りしてもらうことにした。

 冴島は以前より、かなり寡黙で大人びているように祥子には思えた。

「どうかしら」 

 祥子が言う。

「府中刑務所のスイートルームより狭いかもしれないけど、我慢して」

 冴島は終始、無言だった。それが祥子には少し不気味だった。

 ゲストルームは八畳ほどのスペースがある。ベットと事務机が置かれ、タワーPCとWiFiルータがが設置してある。





 PCの電源を入れるとドラゴンと言うよりタツノオトシゴに羽が生えたようなイラストがディスプレイに映し出される。

 OSにはカーリーリナックスがインストールしてある。

 鉄仮面(=TK)は吐息を漏らす。

 世界中のハッカーが好んで使っているとされるカーリーリナックス。本来はセキュリティ対策に優れたOSだが、ハッキングにも応用できる。

 グラフィックユーザーインターフェイスからライン入力に切り替え、試運転してみる。

 『八重樫ビル』の地下2階はデーターセンターになっていて、複数のサーバーが設置してある。

 その中のスーパーコンピュータが、このPCからクラウド環境で自由に利用できる。祥子からそう聞いていた。

 今回のプロジェクトを遂行するには申し分ない環境と言える。

「陽介ちゃん」

 振り向くと祥子が立っている。ノックもなしに部屋に入って来た様子だ。

「姐さん、どうしました」

 TKは立ち上がる。

「君がなにやってるか、ちょっと見に来ただけ」

「……」

「今度の仕事、どんな内容なの。あたしに教えてくれない」

「野島警部から聞いてませんか。これは姐さんにも話せない機密事項なんです」

「まあ」

 祥子が体を摺り寄せてくる。

「あたしの性格わかってるでしょう。男を屈服させるのがあたしの趣味。

 君の口を絶対、割らせてみせるわ」

 祥子はTKの耳元でささやく。

「あたしが肉食女子だって知ってるわよね」

 祥子はやや屈んでTKのスボンのファスナーを下げ、社会の窓に手を入れ、男根をまさぐる。 

「ちょっと……なにするんですか」

 TKは驚いて祥子の手をどけ、後ずさるとファスナーを閉める。

「おやっ、陽介ちゃん、いけないわ。女の誘いを拒むなんて……童貞じゃあるまいし」

 祥子はほくそ笑む。

 英雄色を好む。極道の(かしら)も色を好む。祖父の源太郎組長も若い頃は女好きで有名だった。

 だけどわたしは女。だからわたしが侍らせるのは女でなく男なの。

 祥子の脳裏にそんな考えが駆け巡る。


(つづく)


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