第24話
まだ日は上っていなかった。
薄暮の空間の中でベッドから起き上がる。全裸だった。
TKは伸びをする。
日美子はまだ隣で寝ていた。起きる様子がない。
新大久保のラブホテルはひさしぶりだった。
シャワーを浴び、着替える。
ジーンズにTシャツ。
ジャンパー、手袋、ブーツはお揃いのデザインだ。赤、白、黒の三色を使って独特の模様を作っている。
「行かないで」
日美子が突然ベットからTKの腕をつかむ。しばらくすると腕を離す。
しかし顔を近づけてみると日美子はまだ寝ていた。
TKは日美子の額にやさしく接吻し、黒のフルフェイスヘルメットをかぶる。
ガラステーブルに5千円札を置いておく。宿泊代はこれで足りるだろう。
TKは日美子を起さないよう、できるだけ音を立てずに部屋を出る。
バイクはラブホテルの駐車場に停めていた。
ホンダCBR600RRのエンジンを始動する。
駐車場から出て、路地を走り、国道20号に出る。
早朝なのでまだ車は少なかった。
おれはだれなのか。おれは本当に鉄仮面なのか。
四谷方面に向けて、ストットルを全開にする。
風とバイクと自分が一体になる感覚。
おれは風だ。
朝日がまぶしく、シールドに虹が見える。
おれは虹だ。
TKの脳裏に様々な想念が沸き起こる。
おれはだれなのか。
おれは鉄仮面でもあり、風でもあり、虹でもあるのかもしれない。
首の肌に当たるナイフのような冷たい風が心地いい。
朝の国道20号を鉄仮面を乗せた1台のバイクが疾走していた。
(了)




