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鉄仮面と呼ばれた男  作者: カキヒト・シラズ


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第22話

 野島と青木は朝から警視庁本舎の大会議室に呼び出された。

 大会議室には「オペラハウス殺人事件特捜本部」の看板が飾ってある。

「マルボウの野島と青木です」

 野島は軽く会釈して大会議室に入る。

 青木が後に続く。

「野島君か」

 捜査一課の佐伯守だった。

 野島と同期入庁だが彼の方が出世は早かった。

 野島が警部なのに対し、佐伯は警視だ。

 特捜本部の本部長も彼が担当しているらしい。

 大会議実には長テーブルが横2列、縦10列に並び、50名弱の警察官が座っている。

 昨日、初台のオペラハウスで殺人事件が起きた。

 被害者は二人。一人は在日米軍司令部副司令官のトム・ガーシェンフェルド。もう一人は呉俊宇という中国人だ。

 呉は中国マフィア、青幇の幹部であることがわかっている。

 いずれもオペラ上演中に何者かに背中から銃で撃たれた。

「これを見てください」

 捜査一課の巡査部長、杉本が正面の巨大ディスプレイを指す。

 バイクに乗った黒い革ジャンの男がうつっている。

「野島警部は警察のNシステムをご存じでしょうか」

「聞いたことはありますが」

「全国の監視カメラで車両ナンバーをチェックしますと車両の全情報がコンピュータで検索できるというがNシステムです。これにより犯罪者の車両ナンバーがわかれば、車の持ち主がわかり、犯罪者が特定できるという仕組みです。

 もしその車が盗難車の場合は、盗難車であることがシステムに登録してあります」

「なるほど」

 杉本の説明では犯人と思われる男が乗っているバイクの車両ナンバーを調べたところ、車種はホンダCBR600RR。所有者は警視庁捜査四課、すなわちマルボウが所有者になっているというのだ。

「このバイクは鉄仮面のものです」

 野島が言う。

「鉄仮面というのはコードネームでして、冴島陽介という男ですが、彼はマルボウが雇っているフリーの工作員です。

 このバイクですが、彼の裁量で自由に使えることにしています」

「普段、どこに保管しているんだ」

 佐伯が訊く。

「それは私どもは把握していません。どこをバイクの車庫にするかも彼が決めています」

「じゃあ、そのコードネーム鉄仮面だが、今、どこにいるのかね」

「実は一週間ぐらい前にすでに死亡しました」

「なんだって」

 すると特捜本部に若い警官が入って来る。

「交通課の梶尾です。Nシステムの監視カメラで例のバイクが見つかりました。世田谷の住宅街を通過した模様です」





 鳳正太郎の自宅でもある四神会本部の応接室では、緊迫した空気が流れていた。

 四人の人物がソファーに座り、人民服を着た一人の用心棒が部屋の隅に佇んでいる。

 会長の鳳の隣には朱雀真宗の代表にして四神会幹部の玄武和義が座っている。

 政治家の増山大樹は鳳と向かい合い、その隣にはライジングストリート社の前川吾郎社長。

 そして用心棒役は娑婆に戻って来たばかりの祭林明だ。

「ご存じだと思うが」

 鳳が言う。

「昨日、トム・ガーシェンフェルドと呉俊宇が何者かに暗殺された。

 ワシの見立てでは例の鉄仮面が実は生きていて、われわれに刃向かっているように思えるのじゃが」

「その可能性はあります」

 玄武が言う。

「その鉄仮面という男ですが、今後、われわれにも銃口を向ける可能性はあるのでしょうか」

 前川が訊く。

「もちろん。あり得ることだと思います」

 玄武が答える。

「今後、私たちとしてはどう対処すべきでしょう」

 増山が言う。

 するとそのとき、応接室のガラス窓が割れる。

 黒いフルフェイスヘルメットが窓から見える。

 次の瞬間、アサルトライフルの銃口を部屋内に向け、数発発射する。

 部屋の中にいた全員が床に伏せる。

「会長」

 祭は鳳に駆け寄る。

 こめかみを弾丸が貫通していてもう動かなかった。

「早くやつを追え」

 脇腹を抑えながら玄武が這いながら言う。脇腹から大量に流血していた。もはや虫の息だ。

 祭は窓から外を見る。

 黒い革ジャンを着たフルフェイスヘルメットの男が日本庭園を横切り、壁を上って外に逃げる。

 祭は窓から庭に降りて賊を追いかける。

 壁をよじ登って外を見ると賊はバイクに乗って逃走するところだった。

 祭は駐車場まで走る。バイクが泊めてあり、ヘルメットとブーツが置いてある。緊急のときに発信できるためだ。銃は持っていた。

 祭はバイクに乗り、車道に出る。

 しばらく進むと案の定、賊は見つかった。

 国道20号を新宿方面に向かっているのだが、渋滞しているのでフルヘルメットの男のバイクが立ち往生しているのだ。

 賊はアサルトライフルを忍者の刀のように背負い、紐で縛って固定している。

 この近辺で大通りに出て遠方に逃げるには国道20号を使うしかない。

 そう考えた祭の直感は当たった。





「報告します」

 一人の刑事が特捜本部に入って来る。

「今、Nシステムで例のバイクが見つかりました。

 国道20号を新宿方面で向かっているようです。

 道が渋滞してますので、われわれが今から向かえば逮捕できるかもしれません」

「警視」

 野島が言う。

「われわれも現場に直行させてください。

 やつが向かう先はわかります。新宿歌舞伎町です。

 マルボウのバイクが事件に使われたとなると、責任はわれわれにもあります。

 だから、そのためにはここはわれわれで後始末をつけさせてください」

 佐伯は無言だった。

「報告します」

 別の刑事が特捜本部に入って来る。

「世田谷にある四神会会長の鳳正太郎宅で銃撃戦があった模様。

 Nシステムで調べましたが、例のバイクが監視カメラにかすかにうつっていたようです」


(つづく)


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