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鉄仮面と呼ばれた男  作者: カキヒト・シラズ


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第21話

 池袋のネットカフェ『ラスボス』の特別個室にはシャワールームもついていることを見つけた。

 TKはスーパーコンピュータでネットサーフィンを楽しんでいた。

 クイーン・ヒミコのブログや動画も見つけた。


 日本民族党の支持母体は宗教団体、朱雀真宗であることは有名だが、選挙になると朱雀真宗の信者は手伝いをさせられる。民族党のポスター貼りや候補者の演説を拝聴するさくらの観衆をやらされるのはまだしも、不正選挙の片棒を担がされる。

 一人の信者が、選挙に行かない自分の知り合いから投票用紙をもらったり、ときには買ったりして投票日には複数回投票するのだ。投票するのはもちろん民族党の候補だ。

 この他、公務員に朱雀真宗の信者が多数いて、彼らのうち選挙管理委員になったものは、不正に選挙結果を左右することができる。


 クイーン・ヒミコの動画にはこうした政治の裏話や陰謀論をよく上げていた。


 スーパーコンピュータを使うと、様々なサーバーをハッキングして不正アクセスすることが可能だ。

 初台オペラハウスの事務局のサーバーに不正にアクセスしたとき、TKは興味深いデータを見つけた。

 明日、上演されるオペラ、『トーランドット』にトム・ガーシェンフェルドと呉俊宇がS席に並んで予約しているのだ。

 ガーシェンフェルドは在日米軍司令部副司令官。呉は青幇の極東支部長。ともに日米合同委員会の特別臨時分科会の重鎮だ。

 彼らを暗殺すれば、日本を東京公国、米国ジャパン州、中国日本省に三分割する計画は頓挫、または滞るはずだ。

 人工地震や人工津波など日本を気象兵器で攻撃する計画も然り。

 こいつはおもしろくなってきた。

 TKはそう思い、さらに情報収集を試みる。





「これなんだけど」

 TKはサイレンサー付ケッヘラー&コッホをタカシに手渡す。

「海水に濡れたんで、壊れたかどうか見てほしいんだ」

 歌舞伎町商事の細長い部屋は棚と壁に銃がびっしり並んでいる。

 タカシは銃をいじってみながら、

「だいじょうぶですよ。試射場でお試しになりますか」

「そうなんだ。それともう一つ、今日はアサルトライフルがほしいんだ」

「かしこまりました。こちらです」

 タカシについて行くと、アサルトライフルが多数並んでいる棚が見つかる。

「うちはこれがおすすめです。USM16A2です」

「じゃあ、それ」

 

 試射場は屋上にあり、打ちっぱなしのゴルフ場やバッティングセンターのようにグリーンネットで全体が覆われていた。

 時刻は夕方だった。

 TKはまずサイレンサー付拳銃を撃ってみる。

 以前にくらべ、特に遜色はなかった。

 次にアサルトライフルを撃ってみる。

 標的のど真ん中に命中する。さすがライフルだ。TKはそう思う。

「チューニングが必要でしょうか」

 タカシが横で言う。

「いや、このままでいい」

 試射を続けていると、一人の女が屋上に上がってくる。

「あら、陽介ちゃん、生きてたの」

 祥子だった。

「ええ、このとおりです」

 TKが言う。

「おれが生きてること、野島警部にはしばらく言わないでください」

「わかったわ」

 祥子はそう言い、スミス&ウエッソンの拳銃で射撃を始める。





 初台に来たのははじめてだ。

 ホンダCBR600RRを走らせ、駐車場に停める。

 TKは全身黒ずくめだ。

 頭に黒のフルフェイスヘルメットをかぶり、黒の革ジャンのつなぎ服。黒のブーツ。

 背中のナップザックだけが不釣り合いな緑色だ。

 バイクから降りてもフルフェイスヘルメットは脱がない。

 1階のICカード改札機にスマホの予約券をかざし、入場する。

 そのままエレベーターで2階に上る。

 トイレのボックスに入り、だれにも見られない環境を作る。

 ナップザックから拳銃を取り出し、サイレンサーを装着する。

 右手に銃を持ったまま、青いタオルを上からかぶせ、トイレから出る。

 扉6から劇場に入場すると、1列目の中央付近の席にいた。

 ガーシェンフェルドと呉俊宇だ。TKは2列目の彼らの真後ろの席に座る。


「オペラはよくご覧になりますか」

 ガーシェンフェルドが英語で言う。

「生まれてはじめてですよ」

 呉が英語で答える。

「われわれマフィアはオペラなんて興味ある連中はいませんよ」

「同じです。われわれ軍人もオペラには縁がない方ですが、昔、上院議員の招待でオペラを観まして、それ以降、やみつみになりました。オペラははまりますよ」

 呉は内心、忸怩たる思いだったが、ガーシェンフェルドとの人脈は今後の極東地域における青幇の発展には不可欠だという考えもあった。

 ここは上流階級の連中の趣味や嗜好をたしなんでおくべきかもしれない。呉はそう思った。


 『トーランドット』が開演する。

 プリマドンナ扮するトーランドット姫がひときわ大声量で歌うアリアがある。

 そこがTKのねらい目だった。歌声が大きいほど、サイレンサーの音がかき消されるからだ。

 ついにアリアの場面がやってきた。

 TKはまずガーシェンフェルドの座席に青いタオルで隠したサイレンサー付拳銃を当て、引き金を引く。

 周囲の人間はだれも気づいていない。

 続いて素早く呉の座席にも同様に銃を当て、引き金を引く。

「失礼」

 TKは隣の客に言い、席を立って、屈みながら客たちの前を通り過ぎる。

 扉10から劇場の外に出る。

 エレベーターに乗り込むとき、悲鳴が聞こえた気がした。

 1階につき、改札機を通って建物を出ると非常ベルが鳴る。

 TKは駐車場まで全力で走る。

 ホンダCBR600RRにまたがると、できるだけ早急にオペラハウスを後にした。


(つづく)


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