ep.03:スキルツリー開いていたら、祭が始まった件
────ピン、と張り詰めた空気の中に、淡い光の粒が舞い上がる。
それはやがて線を描き、目の前にひとつの光のプレートを形作った。
まるでホログラムみたいに、ゆらゆらと宙に浮かんでいる。
しかも、どこか見覚えのあるUI。
( ……うわ、これ完全に"セブオン"のステータス画面じゃん )
恐る恐る目を凝らす。
そして、そこに浮かんだ文字を見て、私は息をのんだ。
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【STATUS】
名前:ダリオン・ラス
レベル:1
称号:憤怒の王(休眠中)
体力:5
魔力:3
状態:瀕死(外見ほぼ終末)
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「……外見ほぼ終末ってどういうこと?!」
叫んだ声が石造りの天井に反響する。
ズガァンッ!! って、最早地響き。
( やば、ボイス爆音設定なの!? )
焦る私を他所に、傍にいた配下と思われる魔物たちは嬉々とした声をあげる。
「おお……! 王の咆哮が玉座を震わせておられる!」
「外見すら終末と評されるとは……さすが我らが王!」
誉め言葉なのかけなしているのか、区別が難しい言葉を受けながら私は頭を抱えた。
こんなゾンビフェイス、爆音ゾンビヴォイスで推しのノエルくんに会えるわけがない。
いや、そもそも目が合った瞬間に浄化されるまである。
「……やだ、推しの前でボロ雑巾とか絶対むり。
まずは顔面再生からスタートだな」
ため息をついて、気持ち小声で独り言を零すように言いながら、ステータス画面の隅をスクロールする。
……あった。スキルツリー。
懐かしい、ゲームでも見慣れたアレ。
細い枝がいくつも広がっているが、いくつかはまだ灰色でロックされている。
「えーっと……“筋力増強”……“痛覚無効”……“魔力増幅”……」
(うーん、どれも戦闘用ばっか。
美容に効きそうなのは……あ、あった!)
《超速再生》:魔力消費500/解放条件:Lv10/再生スキル習得済み
「これだぁぁぁ!!」
玉座の間に、私の歓喜の声が響いた。
しかし、それも再びの"スガァン!"
学ばない私の地響き爆音ボイス。
「我らが王が……歓喜の咆哮を!!」
「ついに戦乱の火蓋が切られるのか!?」
戦乱の話なんかしてない。
美容の話!火蓋は切らないし、切るなら目頭切開だな!
勢いよく立ち上がると、ガタッと玉座が鳴った。
まわりの魔族たちは一斉に平伏。
「……よし、まずはレベル10まで上げる!
推しの前で堂々と会えるまで、魔王、美容修行を開始します!」
玉座の間が静まり返った。
それから数秒後、ひとりの魔物が感極まった声で叫ぶ。
「王が……! 自ら修行を宣言なされた!!」
「ついに時は満ちたのだあああ!!!」
歓声とともに、魔族たちが勝手に祭りを始めた。
( 配下だからなのか、全肯定すぎない? )
私は溜め息をつきながら、ステータスの隅々まで確認する。
どうやら元から持っているスキルの一つに「カリスマ補正(パッシブ)」というものがあり、こいつがどうやら発動しているらしい。
魔族たちが肯定的な反応を見せる要因が分かってホッとしつつ、私はステータスを閉じて、半分溶けかけた腕を見下ろした。
「まぁ、何にせよ……推しに会うためなら頑張れる」
こうして、“推しに会える顔面”を取り戻すための魔王レベル上げが、今始まる。




