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魔王♂に転生したけど、勇者パーティの僧侶に恋しています。  作者: アオ
序章

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2/13

ep.01:転生したら秒で勇者に殺された件



「────……」


ふ、と意識が戻る。

体が、重い。目が開かない。いや、開けたくない。

全身が痛い。骨という骨が文句を言ってる。


( ……ここ、病院? 事故に遭ったんだよね?

 歩きスマホしてた私も悪いけどさ。

 信号無視のトラック、あいつは許すまじ…… )


ぼんやりとした思考を繋ぎ合わせていると、

鉄と煙の匂いが鼻を突いた。

でも、これは……焦げた匂い?


( ……なんか、病院っぽくないな……

 もしかして、まだ現場!?

 運ばれてない系!?)


トラック運転手に救護義務違反を脳内で叩きつけながら、

恐る恐る目を開けた瞬間――


「────魔王、覚悟ッ!!」


耳をつんざく怒号。

反射的に顔を上げると、目の前には光る剣。

こっちに向かって突き刺さる軌道。


「えっ、は!? ちょ、待っ――」


咄嗟に横へ転がる。

地面は石。しかも、冷たい。

どこだここ!?


視界の端で、燃え落ちる玉座。

瓦礫。

そして、空を切り裂く稲妻。


「……え、これ……()()()()のラスボス戦の背景じゃない……?」


自分の手を見る。

白くない。

灰色がかった皮膚に、黒い紋様。

指先には鋭い爪。


「……あれ、私……、魔王だな???」


現実感が一気に遠のく。

ていうか、そう言えば今の叫び声――


剣を構えた勇者リュカ。

その後ろに、戦士ガレス、魔法使いヴァネッサ、弓使いエイラ、召喚士リシア。

そして……


僧侶ノエル。


こんな終末系の背景でさえ、映える推し。


( んー、ちょっと待って。なんで推しが目の前に!?!? )


震える指先を見つめながら、理解した。

これは夢じゃない。

私、スマホゲームの中にいる。

しかもラスボス側。


……いやいや、笑えない。


勇者が剣を構える。

ノエルが光の魔法を唱える。


「魔王ダリオン・ラス! 

 この世界の穢れと共に滅びよ!」


「いやいや!?

 私、ただのファンなんだけど!?!?」


叫んだところで届くはずもなく。

光が弾ける。


世界が、白く染まる。

胸の奥が焼けるように熱い。


( ……え、これ、死亡エンド? )


最後に見えたのは、僧侶ノエルの琥珀色の瞳。

憐れむような、でも優しい表情。


そして、意識が、途切れた。


暗闇。

どれくらい時間が経ったのか分からない。

音も、感覚も、何もない。


けれど、不意に、声がした。


『我らが主、再びここに……』

『魔王ダリオン・ラス、────再臨せり』


ドクン、と心臓が鳴った。


( ……え、リスポーン……? )


目を開けると、見慣れない天井。

玉座。

そして、跪く魔族たち。


「……え、えっと……」


全員、私を見上げて口々に叫んだ。


「我らが王に、永遠の怒りと栄光を――!」


( いや、待って。私の人生どうなってんの!? )


こうして、私は二度目の人生を――

いや、“三度目”の人生をスタートさせた。


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