表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽香の庵 幽霊女子大生、神降ろしのサラリーマンと体を探す  作者: 臣 桜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/71

神野晶

「……そ、そう見えませんでした」


 光輝さんも神野さんの所業にドン引きしている。


「……俺もその話を聞いた時は『嘘だろ』と思った。確かに神野さんからは嫌がらせを受けたし、彼は少しねちっこい所がある。でも俺にとって彼は活躍している憧れの先輩で、そういう真似をする人に思えなかったんだ。……だから、トイレにいた人たちが、嫉妬を交えて脚色しているんじゃ……と感じていた」


 嫌がらせを受けていても、緋一さんにとって神野さんは憧れの先輩だったんだ。


 だからこそ、今の状況はとてもつらいに違いない。


「……けど、俺や関係ない人にまで害を為したなら話は違う。……憧れていた先輩だからこそ、俺の手で引導を渡さなければ」


 緋一さんはその横顔に、並々ならぬ決意を宿していた。






 やがてタクシーは神野さんのマンションの前に着き、緋一さんがカードで支払いをする。


 賃貸マンションはごく普通の外観で、ここに私の体がある……と思うとゾクリとする。


 頭に浮かんだのは、ワイドショーでインタビューを受けた人が「そういう事をする人に見えませんでした」とか、「まさかうちの隣で……」と言っている図だ。


〝事件〟と聞くと遠い世界の出来事に思えるけど、いつどこで何が起こるか分からない。


「隣の部屋にどんな人が住んでいるか分からない」と言うけど、いい人かヤバイ人かなんて、付き合ってみないと判別がつかない。


 地方ならご近所付き合いがあるかもしれないし、世代によっては「お互い顔を知っていたほうが安心できる」と思ってもおかしくない。


 けれど特に都会に住む若者に関しては、隣人の事なんて分からないほうが防犯に繋がるんだろう。


 もしも私が一人暮らしをしたとして、下手に〝お隣さんへの挨拶〟をして「若い女の子が住んでいる」と知られたら、逆に危ない目に遭うかもしれない。


 けど、親切な人が住んでいる可能性もあるし、そればかりは何とも言いようがないのだ。


 隣人だけじゃなく、人付き合いはガチャみたいなものだ。


「人気があるしいい人そう」と思って近づいたら、実は裏の顔があって酷い目に遭うなんて事もざらにある。


(飲食店で少し話しただけで、こんな目に遭う私もいるしなぁ……)


 私は溜め息をつき、二人のあとについてマンションのエントランスに入る。


 緋一さんは緊張した面持ちで呼び出しボタンを押した。


 しばらくして《はい》と男性の声がした。


「神野さん、俺です。猟沢です。壱島もいます。……入れてください」


 緋一さんが言うと、神野さんは少しの間沈黙し、尋ねてくる。


《何の用だよ》


「あなたが俺にくれたペンダントや、行方不明になっている女子大生について聞きたい事があります」


 彼は何も隠さず、真正面から神野さんに立ちむかう。


《はっ、あのペンダントが何なのか分かっていながら、俺の家に来たのかよ》


「正直、〝何〟なのかは分かっていません。ただ、あれを着けた俺がどうなったかは自覚しています。それについても話を聞きたいです。大体の理由は察しますが、あなたの口から『なぜ』かを聞きたい。……加えて、行方不明になっている女子大生もあなたが関わっていますよね? ――――すべて聞かせてください」


 緋一さんが凄みのある声で言ったあと、光輝さんも続ける。


「警察などの第三者にはまだ何も言っていません。とにかく、俺たちは事情を知りたいし、彼女がどこにいるのか知りたいんです」


《ま、警察に言っても『ペンダントのせいです』なんて言ったら、頭のおかしい奴扱いされるよな》


 神野さんは半笑いで言う。


 何がおかしいのか分からないけれど、彼は自分の悪事がつまびらかにされたのに、一向に焦っている気配がない。


 だからこそ嫌な予感がするし、彼の家に上がったあと、さらなる〝何か〟が襲いかかってきそうな気がしてならない。


「あの子は神野さんの家にいるんですか!? いるなら……、警察案件になりますよ」


 光輝さんは覚悟の宿った声で告げた。


《いない》


 けれど彼はあっさり答え、私たちは三人とも「えっ?」と声を上げる。


《疑うなら来いよ。本当にいないから》


 神野さんはそう言ったあと、オートロックを開けた。


 私たちは顔を見合わせたあと、とにかく行ってみる事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ