ペンダント
「これ、さっき二人を祓った時に聞こえた亀裂音の正体?」
沙織さんが言うと、光輝さんは「恐らく」と頷く。
「柚良の首にもチェーンがあるから、確認するよう言ってください」
私が光輝さんにお願いして確認してもらうと、柚良は胸元から緋一さんとそっくりのペンダントを出して声を上げた。
「やだ! 何これ……。私、こんな趣味悪いのつけない……」
柚良は嫌そうにペンダントを外し、テーブルの上に置く。
緋一さんも同様にし、私を含めた五人は微妙な面持ちでペンダントを見つめた。
光輝さんは「失礼します」と言ってペンダントを二つ手に取り、顔に近づけてスンッと匂いを嗅ぐ。
「間違いない。祓われて匂いは薄くなってるけど、二人に憑いていたモノと同じ悪臭がする」
誰からともなく溜め息をつき、沙織さんが尋ねる。
「二人とも、これをどこで手に入れたか覚えてる?」
言われて、緋一さんと柚良は顔を見合わせてから、気味悪そうな表情をして首を横に振る。
「私、知ってる!」
私は手を上げ、自分を認識できない人たちに必死にアピールする。
「そのペンダント、私ももらいかけた! 緋一さんと一緒にいたのが神野さんなら、彼が二人に『幸運になるペンダントだ』って渡したの。いつもの柚良なら、そんな怪しい物を絶対に受け取らないのに、めっちゃ喜んでました。緋一さんも嬉しそうにしていて、私、二人の様子を見てドン引きしてたの」
光輝さんは私の言った事を皆に話す。
柚良と緋一さんは、それを聞いて顔色を悪くしていた。
「神野さんは私にも『あげる』ってペンダントを渡そうとしたけど、気持ち悪いから『いいです』って断ったの。そうしたら物凄く怖い顔をして、普通じゃない雰囲気だった。『親友とおそろいだと嬉しいでしょ?』って無理矢理渡そうとしてきたけど、断った」
あの時の神野さんは、普通じゃない雰囲気だった。
彼は緋一さんと似た感じの、仕事ができそうな格好いい大人の男性という印象だった。
でも『暗くて陰湿そうな人だな』と直感で感じた私は、本能的に拒絶感を抱いたのだ。
私はイケメンが大好きでミーハー気質だから、自分でもそんな反応をした事に驚いた。
けれど祖母からは『直感を大事にしなさい』と言われていたから、『神野さんと関ったら駄目だ』と自分に言い聞かせたのだ。
「……じゃあ、神野さんが黒幕? 彼の所に千秋ちゃんの体がある?」
緋一さんが呟き、全員、犯罪の予感に緊張を滲ませる。
「どうでもいいから、早く千秋を助けたいです! 行方不明になって一週間経ってるんですよ? 千秋が死んだら私……っ」
切羽詰まった表情で言った柚良は、そこまで言って両手で顔を覆う。
……うん、その気持ちはありがたいけど、まだ死んでないと思うから!
その時、いきなりカクが降りてきた。
《このまま神野の所に突入してもいいけど、そのペンダントも、千秋の魂を縛っている道具も普通の人間では手に負えない呪具だ。ペンダント一つで意のままになっていたなら、突撃しても一網打尽になる可能性があるよ》
「じゃあ……、どうすればいいの?」
私はカクに尋ねる。
《とりあえず、光輝は呪具に抵抗できるでしょ。霊体の千秋は……、それ以上状況が悪くなりようがないから大丈夫かな。……いや、相手が悪霊をぶつけてきたら一発か》
「ちょっと! 真剣に考えて!」
私はカクにビシッと突っ込みを入れる。
《まぁ、いざとなったら僕が守ってあげる事もできる》
「私、神降ろしできるの!?」
目を輝かせて期待すると、《できるわけないでしょ。千秋ができるのは大根おろしぐらいだよ》とすげなく言われた。チクショウ。
「でも現実的に考えて、この人数で行ったら警戒されない? 二人ぐらいは警察に通報する準備をするとか?」
《『呪具を使って人を呪ってました。捕まえてください』って?》
カクに意地悪く言われ、私は唇をひん曲げる。
《必要なのは、神野をとっ捕まえて千秋と関わりがあるか吐かせる事。多分、奴の家にも何らかの呪具があると思うから、耐性のある人が向かったほうがいいと思うけどね》
私はカクの言葉を聞き、腕組みをしてしばし考える。
「力尽くが必要として、凪さんにお守りを作ってもらう事は可能かな? だったら緋一さんに同行してもらって、女性二人は待機のほうがいいと思うけど」
《……いいってさ。今日中に片づけたいなら、店に入れるようにしておくから早めにおいで。あと、凪が『処分するから、そのペンダントは何かに包んで持っておいで』って》
「分かった」
カクが消えたあと、光輝さんは今までのやり取りを三人に伝えた。
「じゃあ、俺は光輝と一緒に凪さんという人の店に行く。……沙織と柚良ちゃんは、千秋ちゃんが心配だろうけど、待っていてくれるか?」
「分かったわ。気をつけてね」
「千秋を宜しくお願いします」
緋一さんはすぐ出かける支度をし、全員で彼の家を出た。




