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幽香の庵 幽霊女子大生、神降ろしのサラリーマンと体を探す  作者: 臣 桜


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カクの手助け

 ドヤったまま内心で絶叫していた時、「……ぷっ」と光輝さんが噴き出した。


 彼は「ごめん」と謝りつつもクスクス笑い、目尻に浮かんだ涙を拭って言った。


「……ありがとう。今までこんなにストレートな言葉をぶつけてくれる人はいなかった。学校では目立たないタイプだったし、視える事で〝変な奴〟扱いされた。……でも、広い世の中には千秋ちゃんみたいに、こんな俺でも受け入れてくれる人がいると分かって、……なんかホッとした」


 その時、今まで黙っていたカクが口を開いた。


「僕は千秋の明るさと正直さは評価してるよ。保身のために言葉を偽る奴は幾らでもいるけど、恐れずにまっすぐ行動し、他人に言葉をぶつけられる人は貴重だから」


「……ど、どうも……」


 カクから褒めてるんだか、けなしているんだか分からない評価を受けた私は、軽く手を挙げて彼に感謝を示す。


 沙織さんはお茶を一口飲み、私に微笑みかけてきた。


「千秋ちゃんってチャラい女子大生かと思っていたけど、意外と根性が据わっているわね。気に入ったわ」


「ありがとうございます」


 と、凪さんはピッと光輝さんを指さした。


「君は父親が勢いで言った言葉にショックを受けて、自分の可能性に蓋をしているだけだ。……それを解放すれば、緋一くんや柚良ちゃんに憑いているモノを祓う事もできる」


「……でも俺はあくまで一般人で……」


 否定した光輝さんに、凪さんは首を横に振る。


「神職じゃないと祓っちゃいけないの? そりゃあ、素人が真似事をすれば痛い目を見る。けど、霊能者は自己責任でやってるし、できるかできないかの世界だ。光輝が個人的に何かを祓っても、誰かに怒られるわけじゃない。神主は資格がないと名乗れないけど、いま君たちが対面しているのは別問題だよ」


 それでも彼は硬い表情で唇を引き結び、視線を落としている。


「その歳で父親が怖いのかい? 出来損ないって言われて傷付いているのは分かるけど、その言葉一つで緋一くんを見捨てるの? 自分には彼を救える力があるのに、父に叱られるのが怖いからやめる?」


 煽るように言われ、光輝さんは顔を上げてキッと凪さんを睨む。


「やります!」


 彼が言い切った瞬間、光輝さんから香る匂いがさらに清らかさを増した気がした。


「どうすればいいんですか?」


 光輝さんが真剣な表情で凪さんに尋ねると、彼女はニヤッと笑って言った。


「古武道の剣術をやってるんだろう? 気持ちを込めてやれば、刀がなくても〝切る〟事はできる。すべては光輝の気合い次第だ」


「……真似事でも悪霊を断つ事ができると?」


 光輝さんは両手に刀を構え、空間を斜めに切る真似をする。


「そう。霊体って実体がないでしょ? どんなに鋭利な刃物を振り回しても、刺さらないし血も出ない。やるなら模造刀か木刀でも持って祓えばやりやすいかもしれない。でも、イメージさえできれば道具に頼らなくても可能だ。竹刀での素振り、ラケットやバットでの素振り、何回も繰り返される正拳突き。あれらは正しい動きを無意識にできるようにするためのものだ。光輝は子供の頃から剣術をやっている。相手が〝視える〟なら、素振りでも切れるね?」


「…………はい」


 彼は覚悟を決めた表情で頷く。


「光輝が覚悟を決めたなら、僕も力を貸してあげようか」


 カクが会話に入り、私は彼を見て目を瞬かせる。


「中継役以外にも何かできるの?」


 するとカクは目を細め、歯を出して笑った。


「僕ってこう見えて神様だから、割とオールマイティだよ? でも人の子に力を貸しすぎると上からメッされるからね。大丈夫な範囲なら、力の一部を貸す事は可能だ。……光輝が悪霊を切る時は、僕の神気をちょぴっと分けてあげる。加えてどこを切ればいいか、見極めるための〝目〟も貸してあげる。そういう〝乖離線〟があるんだよ」


「破格の待遇ですが、光輝くんに害はないんですか? 神様の力を人間に宿すって、かなり負担が多そうに思えるんですが」


 沙織さんに尋ねられ、カクはニヤリと笑う。


「光輝にもらうのは、覚悟かな」


「……覚悟?」


 彼は不思議そうに言葉を復唱する。


「光輝は三十歳になったら真剣に神職と向き合うだろう。橋川神社は僕の主人――、大国主命(おおくにぬしのみこと)を祀ってる。だから僕は光輝に協力したいし、なんならファミリー的に思ってる。僕が望むのは、いつか光輝が神職として勤める時、心から神様に仕えてほしいという事だ。……それに今後、僕や凪が君に関わった事で、普通に〝視える〟以上の事が起こるだろう。体に何度も神様が降りているから、体に害はなくても、魂に神気が宿っていくんだ。それによって、一般人として過ごす事は難しくなっていくと思う。死者が視えるだけじゃなく、精霊的なもの、人と神の中間にいる者にも注目されるようになる。……それでもいい?」


 とんでもない事を言われたけれど、光輝さんはもう退かないと決めたみたいだ。


「構わない。カク、力を貸してほしい」


「OK!」


 光輝さんの声に応え、カクはニカッと笑う。


 多分、人間だったらとてもいい笑顔なんだろうけど、鹿頭なのが格好つかない。

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