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幽香の庵 幽霊女子大生、神降ろしのサラリーマンと体を探す  作者: 臣 桜


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信じる

「光輝くんが言うなら信じる。あなたは嘘を言うタイプじゃないし、人を傷つける冗談を言わない。だから緋一は目を掛けているし、私も君を気に入ってる。私はまったく幽霊が視えないから、信じるかどうかハッキリ言えない。でも光輝くんの事なら信じる」


 その答えを聞いた私は、「聡明な人だな」と感じた。


「ありがとうございます。……実は……。柚良ちゃんと話していた時、彼女は〝祓われた〟んです」


 光輝さんはとても不安そうな顔で言う。


 確かにこんな事を言えば、普通なら〝ヤベー奴〟扱いされて終わりだろう。


 沙織さんは真剣な表情で彼の言葉を聞いたあと、何度か小さく頷いた。


「……確かに彼女、最後に変な声を出して体を揺らしてたわね。店としても激しい喧嘩をされると、警察を呼ばないとならないから見守っていたけど、いきなり大人しくなって『あれ?』と思ったのよね。……それで『ああああ……』って低い声を聞いて、近くを通ったスタッフが『普通じゃない感じでやばいです』って報告してきたのよ」


 あの時の柚良は正気とは言えない状態だったから、そう思われても仕方がない。


「あれ、祓われた直後だったんです」


 光輝さんが声を潜めて言うと、沙織さんは興味深そうに彼を見つめる。


「……光輝くんがお祓いしたの? 神主さんの息子だったよね?」


「や、俺の力じゃないんです。……いや、でも器的な問題ではあるけど……」


 光輝さんはブツブツ言い、私は思わず口出ししてしまう。


「全部言っちゃったらどうですか? 沙織さん、信頼できそうですし」


 彼は私を見て少し困った顔をし、溜め息をつく。


 その時マルゲリータピザが運ばれ、二人はとりあえず食べ始めた。


「……俺の言う事、どれぐらい信じてくれますか?」


「逆に尋ねるけど、私が『信じない』って言ったら光輝くんは諦めるの? 私が信じなくても君の中にある真実は変わらないでしょう? 私はさっき光輝くんを信じると言ったし、あとは君が話すか話さないかの問題だと思う。私はどんなに突拍子もない事でも、君が言うなら信じたい」


 潔い答えを聞き、光輝さんは腹を決めたみたいだった。


 そのあと、彼は食事をしながら自分が凪さんの店に行った事、二重と呼ばれる世界で霊体の私と出会い、私の体を探す手伝いをする傍ら、緋一さんや柚良ちゃんが関わってきて他人事ではなくなった事を打ち明けた。


「……それで、柚良ちゃんに取り憑いていた悪霊を祓ったのは、店の鹿頭に宿っていた〝アメノカク〟という鹿の神様なんです」


 すべて話し終える頃には食事が終わり、二人はコーヒーを飲んでいた。


 沙織さんはしばらく黙っていたけれど、「……うん」と頷く。


「信じる」


「いいんですか?」


 あまりにあっさり言ったので、光輝さんは逆に押しとどめようとしている。


「だって普通、そこまで凝った設定を作って人を騙さないでしょう。信じても損するわけじゃないし、光輝くんが言うなら信じる」


「……ありがとうございます」


 光輝さんは力が抜けたように椅子の背もたれに身を預け、溜め息をつく。


「……実はその千秋ちゃんが、沙織さんの隣に座っていまして」


「えっ? ホント?」


 彼女は弾かれたようにこちらを向き、しげしげと見つめる。


「……見えないけど……、宜しくね?」


「宜しくお願いします!」


 私は沙織さんに向かって勢いよく頭を下げた。


 光輝さんが私の反応を沙織さんに伝えると、彼女は「うん、宜しく」と頷いたあと、おもむろにスマホを出して何かを打ち込む。


 何かを検索して記事を読んだあと、彼女は溜め息をついた。


「……羽根谷千秋ちゃん、十九歳。……行方不明になってるね」


「…………はい」


 そのやり取りを聞いて、私は現実を思い知る。


「……もう死んでるのかな……」


 絶望に襲われて溜め息をついた時、明るい声がした。


《千秋の取り柄は馬鹿明るいところなんだから、落ち込むなって》


 ハッと顔を上げると、カクが降臨している。


《しんみり落ち込んで悲劇のヒロインになっているところ悪いけど、千秋はまだ生きてるよ。何のために迷い人から逃げてた? 何のために凪の作ったお守りをつけてる? 千秋から生者の匂いがしている限り、君は生きてるよ》


「そ……、そっか」


 希望を見いだして頷くと、カクは目を細めて舌を出し、憎たらしい顔で笑った。


《落ち込んだら迷い人を引き寄せるよ。彼らは生者が自分と〝同じ〟になる事を望んでいる。落ち込んで絶望して、深い悲しみに浸って『生きる希望なんてない』って思う事を願ってるんだ。……気持ちで負けるなよ。千秋は気合いがものを言う世界にいるんだから》


 カクに激励され、私は「押忍!」と両手で拳を握り、グッと肘を引いて返事をした。


「光輝さん、緋一さんには会えないんですか?」


 カクが出たあと彼に尋ねると、光輝さんは私の代わりに沙織さんに尋ねる。


「……緋一さん、会ってくれると思いますか?」

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