表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽香の庵 幽霊女子大生、神降ろしのサラリーマンと体を探す  作者: 臣 桜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/71

繋がった

「でも、そこはギブアンドテイク。代わりに千秋の手助けをしてくれないかな?」


「え? ……まぁ、できる事ならいいですけど……。困っている人は助けたいですし」


 優しい……!


 私は光輝さんに感謝しつつ、凪さんの言葉に引っ掛かるものがあったので質問した。


「ギブアンドテイクって言いましたけど、私は誰にギブすればいいんですか?」


 すると彼女は意味深な笑みを浮かべて言った。


「千秋はちょっと変わった体質をしてるんだよね。私はこうやって香りを生業にしている事もあって、千秋で色々〝実験〟してみたいかな」


「実験?」


 物騒な言葉を聞いた私は、彼女の笑顔を見てゾワッと鳥肌を立てる。


「例えばどんな?」


 恐る恐る尋ねると、凪さんはニコニコして言う。


「千秋はいい匂いがするから、迷い人に対して魔除けがどの程度効くかとか、色んな……実験?」


「ただの人身御供じゃないですか!」


 悲鳴じみた声で抗議すると、凪さんはカラカラと笑い、手首のスナップを利かせて空中を叩く。


「そんな人聞きの悪い~!」


(……この人、滅多にお目にかかれない美人だけど、割と軽いよな……)


 私は脱力感を覚えて肩を落とし、溜め息をつく。


「……それより、光輝さんに手伝ってもらったら、本当に現世に戻れるんですか?」


 名前を出された彼は、私の質問を聞いて困ったように凪さんを見る。


 彼は幽霊を視られるだけだし、助けたい気持ちはあっても、実際にどうすればいいか分からないだろう。


 すると凪さんは少し真面目な表情になり、お茶を一口飲んでから言った。


「まず状況を整理しよう。光輝は現世の肉体のままこの店にいる」


「えっ」


 私は目を見開いて驚く。


 てっきり光輝さんも私の仲間かと思っていたからだ。


「それに光輝は〝視えて〟いるわけだから、外に出ても迷い人を回避できる。それに現世と二重は()()()()いるから、二人でどこにでも行ける。だから二人で体探しをするといいよ」


「ちょっと待ってください。交通機関ってどうなりますか? 今の私でも乗れるんですか? さっき、人をすり抜けちゃいましたけど」


 私は挙手して尋ねる。


「乗れるよ。さっきも説明したけど、二重は現世のコピーみたいな世界だ。交通機関も施設も住宅も全部同じ。千秋は現世の物は動かせないけど、二重の物は動かせる。誰かの前で二重のライターを持ち上げても、現世の人の前では何も起こっていない。……まぁ、霊体の電車、霊体のライターって思えばいいのかな」


 凪さんに説明され、私は「ややこしいけど分かりました」と頷いた。


「……それで、俺は何をすればいいんですか?」


 光輝さんに尋ねられ、凪さんは腕組みをし、椅子の背もたれに身を預ける。


「そこからは君たち次第なんだけど、とりあえず友達の柚良ちゃんの所に行ってみてごらん。彼氏の猟沢緋一くんの所にもね」


 凪さんが言った時、光輝さんが「猟沢緋一!?」と声を上げた。


「し、知ってるんですか?」


 光輝さんの反応に驚いた私が尋ねると、彼は混乱した表情で頷く。


「……会社の先輩だよ。エリートでイケメンで、皆から憧れられてる」


 ――()()()()


 私はそう直感し、また鳥肌を立たせる。


〝運命の相手〟が現れると言われて光輝さんが登場し、私と彼の運命が重なったのは理解した。


 けれど本当に光輝さんを頼れば解決するのか、半信半疑に思っていたのだ。


 でも光輝さんと緋一さんに繋がりがあると知った今、彼こそ自分を救ってくれる人だと確信した。


「……まさか、緋一さんが出てくるとはなぁ……」


 光輝さんも職場の先輩が出てくると思わなかったのか、若干動揺している。


 そのあと彼は私を見て質問してきた。


「……とりあえずどうしようか。協力したいけど、今日はもう遅い。柚良ちゃんの所に行ったとして、こんな時間なら怪しすぎるだろ?」


 私は「そうですね」と同意する。


 と、凪さんがパンと両手を胸の前で打った。


「今日はこうして縁を繋ぐ事が目的。とりあえず光輝は外に出て、食事をするなりして帰って、明日店に来て。千秋はうちに泊まってっていいよ」


「どうやってこの店に来ればいいんですか? 俺は()()()()この店に来てしまったわけで……」


「そうだね」


 凪さんはサラッと言うと立ちあがり、「君、何月生まれの何座?」と光輝さんに尋ねる。


「七月生まれの獅子座です」


「じゃあ、スフェーンでいいかな」


 彼女はそう言いながら商品が並んでいるコーナーへ行き、小さな宝石が沢山入っている木箱を覗く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ