【プロットタイプ・執筆】少女が髪を切る時は
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
作者は
湿度マシマシ、感情コッテリ。
が好きなので、
湿度カラカラ、感情あっさり。
は苦手分野です。頑張ります。
俺の恋人は長髪だった。膝小僧まである黒を何時も適当に下ろしている。其れが歩く度に揺れると、シャラシャラと音を立てる。
「お前は今日も綺麗な髪してるな」
――へぇ、君。綺麗な髪をしてるんだね。
そう言われたのが全ての始まりだった気がする。自分の事を褒められた事なんか人生で無かった。別に褒められる容姿もしてないし。だからそんな安い言葉にコロンと落ちてしまったのだ。
その日からまたあの人に褒めて欲しくて、何時もより入念に髪の手入れをする様になった。櫛やブラシを持ち歩いて、何度と通す様になった。
多分、その時からずっと、私はその人に恋をしていたのだ。
だがまぁ、初恋というのは往々にして、叶わないものである。ある時その人を見掛けると、知らない、髪の長い女性と歩いていた。鮮やかな黒。触れたくなる艶。其れは私以上の。
その時、私の想いが成就する事はないと思い知った。
其れでも未練がましいもので、私と一緒に育って来たこの髪を切り落とす事は出来なかった。触れる度に心が酷く軋むのに、鋏を入れる事は絶対に出来なかった。
そんな時に今の彼と出逢ったのだ。
――綺麗な髪だな。そんなに長いと手入れ大変だろ。
欲しかった言葉を別の人に言われた。今までの未練がましさが、今までの淡い恋心が、限界を迎えて溢れ出した。
彼が服の袖を私の頬に押し付けるまで、泣いている事に気が付かなかった。
今日も今日とて彼は私の髪にリボンを括り付け、編み込みを始める。顔の右側で揺らぐのは、リボンが混じった三つ編みだった。
「もう三つ編みしなくて良いよ」
「……これ辞めたらお前、真っ先に髪を切るだろう」
どうやら付き合ったその日に断髪をした事を根に持っているらしい。けれどもあれは絶対に必要な儀式だった。そうしないと私は引き摺り続けてしまう。
「もうしないよ。もう」
切る必要、無くなったから。
「どうだい瑠衣たん!! 君のリボンから思い浮かべて書いた小説は!! 湿度バリ高。クソデカ感情。私達が好きなジャンルであるぞ」
「お前のその一言で全てぶち壊しだよ。言葉を選べ、ノンデリ」
瑠衣はそう舌打ちをして、今の小説をファイリングしていく。君のそういうところ、とても良いと思っているよ。
作者は湿度マシマシ、感情コッテリが好きなんですよ。
今までの傾向をお読みの方々はご存知。
※なんだか○郎系ラーメンみたい。
作者的には服のセンスや顔面を褒められるよりも、髪を褒められた方が嬉しいです。
勿論、褒められる事自体が嬉しいのですが、髪フェチなのも相まって。
だからそういう子を主役に添えました。
褒められてからその人が気になって仕方ない。
けどもその人は別の人を傍に置いた。
でもねぇ、切れないですよ。
失恋したぐらいじゃ、大切に育ててきた髪、切れないですって。
だからそれを断髪する時は、自分だけじゃなくて、相手にも失礼な時かなと。
こういう湿度たっかい話が好きなんです。
感情はみる分には、重い方が良いじゃないですか。