第98話:誰とでも約束したのなら守ろう
妖精達は人間にはあんまり関わってこないのだが、今年の春はちょっと違うらしい。
(人間人間!)
「うぇ?妖精?君は花の妖精さんか?」
(人間!特別な人間!50年祭に招待するぞ!)
「え、50年祭って何?というか特別な人間ってあれのことであってる?」
転生者的なあれであってる?
え、妖精ってそういうの分かるの?
質問には答えてくれないまま、私は妖精に森へと連れ出されるのであった。
「森の中ってウェアウルフ達のおかげですっかり安全になっちゃったな。」
(人間!50年祭には子供も参加させるといいぞ!)
「子供を?というか50年祭って何よ?」
(50年祭は50年祭だよ!50年に一度のお祭りだよ!)
「うん、だろうね!……で、何をするお祭りなの?」
(うん?50年祭は50年に一度妖精と人間が交流するお祭りだよ!前に妖精と仲が良かった人間が作ったお祭りだよ!)
「へぇ、そうなんだ。で、何するの?」
(色々だよ!人間の世界の物を貰ったり、妖精の世界の物を贈ったりするんだ!)
「ふーん?要は交流目的の物々交換か。」
ふむ、何をあげようか。
というか何がもらえるんだろう?
妖精からもらえるもの……?
危ないものじゃないといいけど。
「じゃあとりあえず子供達を呼んで来るか。」
(宜しくな人間!)
「わー!すごい!お花畑だ!」
「なんかキラキラしてる!これが妖精さん?」
(そうだぞ!人間!)
「喋ったー!」
「可愛いね!」
とりあえず村の子供達を皆連れてきてみた。
まぁ一応安全だけど、保護者もいるしね。
(人間!僕達からはこの綺麗な花の種をあげるぞ!)
「わー!ありがとう!」
「綺麗なお花大好き!」
お、なんかいい感じにファンタジーな贈り物だな。
心配する必要なかったな。
「妖精さん!あのね!私達からはね!楽器をプレゼントするよ!」
(楽器?)
「こうやってね!ポンポンポンって叩くと音が出るの!」
「あとね!これをね!ベンベンベンって紐を弾くと音が出るよ!」
(面白い!)
どうやらこちらからの贈り物も気に入ってもらえたようだ。
楽器を弾く子供達と妖精……うん、絵になるな。
(人間!ありがとうな!)
「妖精さんもありがとうね!」
(50年祭はまだまだ終わらないぞ!ほら!氷の妖精が来た!)
「む!雪が降ってきたぞ!」
「わー!キラキラだ!」
(こんにちはー)
(本当は雷の妖精も呼びたかったんだけどなぁ)
「うん?なんか訳ありか?」
(雷の妖精は人間に捕まっちゃって酷い目にあわされているんだ!)
「うえぇ!?」
衝撃の事実なんだけど!
何となく心当たりもあるぞ!
「もしかして皇国に捕まってたりする?」
(そうだぞ!人間!よく知ってるな!)
「いやまぁ、ちょっとね……。」
あそこの国って科学技術が異常に発達しているらしいんだよな。
電気……雷の妖精が協力しているなら納得なんだが……。
「酷い目って何?」
「可哀そうなの?」
(なんと力をちゅうちゅう吸われるんだ!うぅ、おぞましい)
あ、力を使われるのってそんな感じなんだ。
ちょっと申しわけないな。
「カノイママ……妖精さん助けて……!」
「可哀そうだよ!助けてあげて!お願い!」
「うーん。よし!助けるか!」
(いいのか人間!)
「おう!まかせろ!皇国から雷の妖精を助けてみせる!」
(おお!僕達も協力するぞ!)
「おっと、その前に50年祭だったな。」
(そうだな!雷の妖精が戻ってきたらまた開催してもいいな!)
「え、50年に一回の開催じゃないの?」
(そんなの誰が決めたんだ?)
「?」
(?)
ま、まぁ本人たちがいいならいいのか。
(お祭りの最後には僕達が君達に祝福をあげるよ!)
「おぉ!ファンタジー!」
(来年の麦は豊作になるよ!)
「ファンタジー?」
(今日は来てくれてありがとう!雷の妖精のこともよろしくね!)
「おう!まかせとけ!」
カノイ・マークガーフ、24歳、小さな友人達と大切な約束をした春の出来事である。
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