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第89話:神様なんてなるものじゃない

やって来てしまいました乾燥地帯。

とりあえず行ってみるか~、で来てしまったのだが、

「あーつーいーなー。この国。」

ちなみに今日は一人でのお出掛け。

一応領主としての視察ということになっている。

足は飛龍宅急便である。

飛龍の速度はたった1日で数日かかる旅路が短縮出来るのだから有り難くて仕方がないと飛脚達には評判だ。

そんなわけで乾燥地帯の国、連合国にやってきたわけだ。

しかしこの国、宗教の勧誘がすごい。

「キウイ教に入りましょう!キウイ教に入れば恵神様からの祝福が与えられますよ!」

「お恵みの恩恵を受けたいのならキウイ教にご入信を!必ずや雨を招いて見せましょう!」

キウイ教と言うのは以前からお話ししている雨乞い宗教のことだ。

ちなみに信仰している恵神様とは昔飢えに苦しむ人々のために食べ物になる生き物という恵みを与えて下さった転生賢者のことらしい。

食べ物を配っていた転生賢者は複数人居たらしいのだが、今は一人の神様に纏められているようだ。

そんなわけでこの国でも転生賢者の意向は絶対ということで良さそうだ。

さて、後はどうやって転生賢者と認めてもらうかだが……今回は雨をふらせることにした。


「最高司令官……いや、教祖殿と呼んだ方がいいかな?」

「な、貴様、何者だ!」

「私は転生賢者の吉井一人。」

「は、嘘だな。そんな賢者は報告が上がっていない。」

「いや~、事情があって隠れてるんだよ。」

「……。」

「その証拠、見せてやるよ。今ここに雨をふらせてやる。」

「なんだって!?」

「いくぞ!デバッグモード!」

とりあえず実家の辺りを晴天にして乾燥地帯に雨を降らせるか。

ザーザー

「な?降っただろ。」

「……。」

「あ、あれ?もしも~し?」

「……神だ!神が舞い降りた!」

「え?」

「おお!神よ!是非我が国にお住み下さい!」

「え、やだ。」

「そう言わずに!この国にはあなたのような存在が必要なのです!」

「嫌です。」

「そう言わずに!」

「駄目だこいつ聞いてねぇ!撤退!撤退!」

問題解決は後回しだ!今日は帰ろう!


「どうしようかな~。」

この国に起きている問題。

土地劣化による住める土地の減少。砂漠化だ。

そのせいで済む場所を追われた人々によるスラムが形成されている。

こういうのの対策は種蒔きや植え付けで植林したり水を管理したりと大掛かりな改善策が必要になる。

だからこそ国家の力が必要なんだよなぁ。

どうしよう。

この国普通に居たくないんだけど。

帰りたいんだけど。

どうするかな~。

……。

いっそのこと本当の神様になってやるか?

そうと決まればやってみるか!


「ということで、転生賢者、雨を降らせまーす!」

そう言うと町の人々からは疑念と期待の視線が向けられる。

うんうん、いいよ、この感じ。

ちゃんと疑念を持っている人が居ると安心する。

まぁ今回はそれを払拭しなくちゃなんだけど。

ということでデバッグモード!

ザーザー

雨が降りだすと人々は歓喜の声を上げる。

町をあげての大騒ぎは波紋のように、噂と共に広がっていく。

噂の神様が現れた、と。


「えーそんなわけで皆さんの協力が必要なんだ。よろしく!」

「「「うおー!」」」

うん、大盛り上りである。

今日から数日かけて砂漠化しつつある土地に植林を行っていく。

国民はほぼほぼ全員参加で行う、いわゆる行事ごとのような状態になっている。

というか多いなキウイ教。

メンバーは白い装束を纏っているのでわかりやすい。

集まった人々の半分がキウイ教メンバーだった。

これはあれだな?この行事自体をキウイ教に任せた方が早いな?

そんなわけで、嫌だけど再度教祖殿のところに突撃だ!


「教祖殿~?」

「おぉ!神よ!お戻りになられたか!」

「あ~いや、すぐ帰るけど。そなたにお告げを授ける!」

「おぉ!」

「砂漠に植林を行うのだ!さすればこの季節に周期的に雨を降らせ続けよう!」

「ははー!」

「なるべく長く続けるように!ではな!」

「ほ、本当にこの国にはご滞在いただけないのですか?」

「あぁ、他の国にも行かなければならんのでな。」

「そうですか!世界をお救いになるご使命をお持ちですね!」

「え?まぁ、うん、そんな感じだ!」

「では、お引き留めする訳にはいきませんな!恵神よ、どうかご武運を!」

……思いの外ものわかりのいい奴らだった。

それはそうと神様っぽい喋り方を意識したらルーになったんだけど、あいつさては本当に偉そうだな?


「ただいま~。」

「お!お帰りカノイ!連合国はどうだった?」

「カノイ様!お帰りなさいませ!本日はカノイ様のお好きなシチューですよ!」

「まぁ、何て言うか、うん、実家が一番だな。」

「「?」」

家族達の当たり前の反応が愛おしい。

やっぱり私は神様って柄じゃないみたいだ。

カノイ・マークガーフ、21歳、神様の真似事をして世界を救っていることになった冬の出来事である。

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