第86話:出産の痛みは忘れがち
さて、二度目の出産ともなるとなれたもので、「あ、そろそろだな」なんて感覚がわかってくるものであります。
「あーいたいいたいいたい!」
でもやっぱり痛いもんは痛かった!
きついって何でそんなことも忘れてたんだ!
もう産まない!絶対に次はない!
「で、生まれたのかこの子ってわけ。」
「何というか……お疲れさん。」
「産まれてきたら痛みより安心感のほうが勝っちゃうんだよな。また痛かったこと忘れそうになってるもん。」
「それ前回も言ってましたね。」
確かに言った気がする。
リボルとヴァイスと談笑しているとルーが部屋に飛び込んできた。
「我が子は何処だ!」
「ここにいるけどどうしたテンション高いな。」
「そうか、この子が……耳も生えておるからウェアウルフの血が濃いのか。」
「そうだな~尻尾も生えてる。」
ふさふさのもふもふです。
「うむ、カノイよ。ご苦労であった。」
「どうした改まって。」
「お前と我の子だ。この子は強き子となるだろう。ウェアウルフの長に相応しき子にな。」
「そうかもな~。ウェアウルフ村の村長として頑張ってくれると有り難いな~。」
「……。」
「え?なにその沈黙。」
「ウェアウルフの子は群れを離れ、自分の群れを形成するもの。何時か別れの時が来る。」
「え……。」
「だからこそ、注げる間に最上級の愛情を注ぐのだ!愛しい我が子よ!」
「い、嫌に決まってるだろそんなの!家の子は何処にもあげません!」
「む?何を言うか!自分の群れを持つのは名誉なことなのだぞ!」
「知らない知らない!家にはそんな常識ないない!」
「ウェアウルフはそうやって増えてきたのだ!」
「そんな危ないことしてるから逆に減ったんでしょうが!」
「なに!?」
「なんだよ!?」
「まぁ待て待て。この子の将来がどんな風になるかはこの子次第だろ?」
「まぁ、確かに……。」
「む、それはそうだが……。」
「勝手にどうこう言わずとも、なるようになりますよ。この子が大人になってからの話ですし。」
「うーん……。」
「むぅ……。」
「「自分で決めさせてやろうよ。」」
「「う、うむ……。」」
ということで、子供の将来についての夫婦喧嘩?は一旦幕を閉じた。
確かに将来についてのは子供自身に決めさせてやるべきだが……やっぱり寂しいな。
この感じ、慣れることはないのだろうけれど、覚悟は決めておかなきゃな。
……でもやっぱり寂しいよ!
大人になるまでになんとかルーとこの子を説得せねば!
うん?
「あ!まだこの子の名前考えてない!」
「辞書もってこい辞書!」
「僕取ってきます!」
「うむ、難しいものだな。子育てとは。」
「なに言ってんだ!子育てはまだまだこれからだ!」
そして、厳正な審査の結果、子供の名前は「ルーナ」に決定した。
生まれてきてくれてありがとう!ルーナ!
カノイ・マークガーフ、21歳、早くも子離れの覚悟問われたを春の出来事である。
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