第74話:欲張りすぎると損するよ
生誕祭、そろそろ覚悟を決めなければと赤い木の実を見る。
……。
「いやー!無理無理無理!ドクドクしてるー!」
で、でも二人の気持ちを考えると……。
「……一気に行くぞ……せーの!」
ぱくっ!と思いっきり食らいつく!
「あ、あれ?」
口の中に入った木の実は甘みと酸味のあるさわやかな味だった。
「……美味しい、かも?」
もぐもぐとリボルとヴァイスの木の実を残さず食べる。
これを食べるということは、まぁ、覚悟を決めたということだ。
よし!行くか!
「「そうしてできたのがこの子達です。」」
そういうジェイルとエイルの腕には赤子が抱えられていた。
いや、早いな!?
「いやーヴァイスの奴にざくーっといかれてさ。」
「一発で実ったよね。」
「ちょうどエイルがいたので回復もすぐですしね。」
「あ~なるほど?確かに血気盛んな若者だな?」
「「そういうことでーす。」」
「で、お名前は?」
「おう!こっちがカロン!」
「こっちがマロンだよ!」
おぉ!双子ではないけど双子っぽい!
「というかあれな、やっぱり二人に似てるのな。」
「そりゃーな。血が繋がってるからな。」
「そっくりでしょ?」
「うん、可愛い。」
「「……。」」
「カノイ様あれだな。惚れちゃいそう。」
「あれ言われると自己肯定感上がるんだよね。」
「ふぁ!?」
これ以上養える気はしてないぞ!?
「まぁまぁ、生活は勝手にするからさ。」
「そうそう、結婚して縛られるのは嫌なんだよね。」
「「愛人でもいいよ~?」」
「いやいやいや!不誠実!あったとしてももっとちゃんとお付き合いするわ!」
「あははは!じゃあ将来的によろしく!」
「老後の心配がなくなったね~!」
くそぅからかいやがる。
でも、今後本当に結婚する相手を増やしたりもするのだろうか?
正直……わからない。恋は盲目っていうしな。
今のところ大丈夫だけど、こう、判断能力が低下したりとかするんだろうか?
そういうのしてみたい気もするし、今その状態な気もするし……。
あ、あんまり考えないでおこう!
「え!?木の実食べた!?」
「うん、思いのほかおいしかった。」
「ということは……覚悟を決めたんですね。」
「うん、決めたよ。……私産む!」
「おう!……で、どっちを食べたんだ?」
「え?」
「どちらを先に産むことにしたのかは勝負しているので、教えていただけるとありがたいですね!」
「え?」
「今度こそ俺が勝つ!……うん?どうしたカノイ。」
「……りょ、両方食べた。」
「「……え?」」
「両方食べちゃった。」
「「「………………。」」」
「え!?どうなるのこれ!?」
「さ、さぁ、過去に記録がないので何とも……。」
「え!?私破裂して死ぬのかな!?」
「ど、どうしてそうなる!ほ、ほら!ジェイルとエイルだって一緒に生まれて来てるわけだし、いけるいける!」
「きっと双子ですよ!双子!」
「い、いやー!」
その後、話し合った結果「とりあえず産んでみないとわかんない」という結論になった。
カノイ・マークガーフ、18歳、1年後には死んでいるかもしれないと思う春の出来事である。
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