第70話:カップルはでき始めると早い
「……ふぅ。」
髪型よし、顔よし、服装よし。
よし、行くか。
最近はこんなことばかり気にしている。
女々しいが、恋人ができたことで浮かれているのかもしれない。
「おはよ~皆!今日は私の生誕祭に来てくれてありがとう!」
「なんかアイドルみたいな登場だな。」
「カノイ様完全に調子に乗ってるね。」
「仕方ないわよ!恋人出来たてのノリノリなんだから!」
「そこ!コソコソ話すんじゃないよ。聞こえてるから。」
やめろよ!付き合いずらくなっちゃうだろ!?
「さて、一昨年にフロージとシュバルツが成人。去年トムとグルートが成人したからそろそろ神の木を一般開放するぞ!存分に子孫繁栄に勤しんでくれ!」
そう、実は神の木って苗字持ちの家系以外には解放されている期間が決まっている。
これから10年間開放して、また10年間閉じる。
そうして神の木の健康を保っているのだ。
これも転生賢者の残した知恵だとか。
しかし、貴族の家系は例外として、子孫が潰えない様にいつでも繁殖をしていいことになっている。
このため例外的に生まれたのがヘディン、来年成人の子供だ。
中々に理にかなっているような、中途半端なような……。
「はい!あたしグルートと結婚します!」
「ふぁ!?」
衝撃の告白なんですが!?
「実は……去年からお付き合いしてました。」
「そういうこと!カノイ様の使用人としてずっと一緒にいたからね!」
「あぁ、そういう繋がりか。」
マジか、気が付かんかった。
「あ、じゃあ俺エイルと繁殖するわ」
「うん、ジェイルとでいいや。」
「うん!?」
それはだめなのでは!?……と思ったが、確か神の木っていろんな遺伝子が混ざり合っているから近親者の繁殖が問題ないんだよな。
「そ、そうか。なんというか、頑張れ?」
「「おー。」」
「トムとシュバルツは誰か好い人はいないのか?」
「それは……。」
「フロージ様……。」
「なんだって!?」
フロージ!?いつの間に誑し込んだ!?
いや、そりゃ年が近いから一緒に遊んでいるのは知っているが、人見知り2人を引き付けるフロージの魅力……恐ろしい子!
「じゃあねぇ!私がトムとシュバルツをお嫁さんに貰う~!」
「うーん明るくていい子!じゃなくて、ちゃんとわかっていってるんだよな?」
「うん!私が養う!」
「よし、覚悟は固いな。3人の結婚を許そう!」
「「「やったー!」」」
あらあらまぁまぁあんなにはしゃいじゃて、お姉ちゃんも嬉しい!
じゃなくて、続々と結婚していくな。
もしかして私、行き遅れか?
い、いや、お嫁さん候補2人もいるし。
何ならヘディンもいるし。
「ヘディンはね~クーちゃんと結婚する~!」
「ふぁ!?」
クーちゃんとは、ウェアウルフの少年である。
年齢はフロージと同じ、来年成人だ。
だから問題はないのだが……え、ウェアウルフとの結婚って合法なの?
「一応戸籍は取ってあるからできるっちゃできるな。」
「マジか。パパ有能。」
「いや、ママが王国に掛け合ってくれたんだよ。」
「え?ママが?」
「あらあら?だってかわいいウェアウルフちゃん達が市民権を持っていないなんて可笑しいじゃない?王国の住人になったわけだしね?」
「わ~ママ天才!」
「クーちゃん!よかったね!」
「う、うん!」
「ルーもいいよな!」
「ふふふ!ふはははは!ウェアウルフと名実共に家族となる訳だな!よいではないか!クーの輿入れを許そう!」
「よかったな!フロージ!クー!」
「「うん!」」
は~幸せがいっぱいだ~。
というか家族が一気に増えたぞ?
結婚式も大変だ!祝い金も包まなきゃだし……。
「もう!そういうのいいじゃない!そもそもこんなのなくてもあたし達は家族よ!とっとと全員で結婚式よ!」
「ファン……!……いや、式は大事だが全員で式って何?」
「皆家族よ!」
き、聞いてねぇ!
まぁお祝い金とか式とかは後々、とにかくまずはスーツの準備からだな……。
あ、その前に生誕祭か。
「皆~遊ぶぞ~!」
「「「おー!」」」
えへへ!全員が大人になっても続けるぞ!
カノイ・マークガーフ、17歳、愛の嵐が吹き荒れる春の出来事である。
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