第61話:名前は大切な贈り物
「さて~今日も青空教室始めるぞ~。」
「はい!長様!私剣の練習がしたいです!」
「お~いいぞ~え~とウェアウルフ君。あ、これ分かんねぇわこれ。」
ウェアウルフの個体名を付けよう!
「え~君は……ルー、君はラン、君はロボ、ルプス、リュコス、ヴォルク、あ、狼知識が切れた!えーっと、ルーチェ、リヒト、ルス……。」
「長殿よ、名付けはいいが覚えられる気がせんぞ?」
「気合で覚えて!」
がんばって!がんばって覚えて!
「よーし!全員ネームプレートを貰ったな?では、発言の際はネームプレートを主張するように!話しかける時は名前を呼ぶんだぞ?」
「「「はーい!カノイ先生!」」」
「よーしよしよし、いいこだいいこだ。」
本当に認めた相手には素直で従順だな。
そんなわけでウェアウルフ一同には首輪とネームプレートを付けてもらった!
これで安心安心、
「ヴァイスー!カノイ様が変な趣味に目覚めてー!」
「あ!リボル!だから急に様付けするんじゃない!」
「ウェアウルフ達は名前を覚えられません。」
「「はい。」」
「ということでネームプレートと首輪を用意したわけで……。」
「「いやいやいや。」」
「だって!しょうがなかったんだよ!」
「名前分かるようにネームプレート作ったー!皆どこにつける?」
「む?ふは!では、首輪でもつけてもらおうか?」
「え?首輪?」
「飼い犬には着けるものであろう?」
「うん、まぁ、え、えー?」
「しょうがなかったんだよ……!」
「今の話のどこにしょうがない要素が……?」
「カノイ様、流石に人に首輪は……。」
「本人が申告してきたんだもん!しょうがなかったんだもん!……私も覚えられる気がしなかったし……。」
「そこ"も"問題なんだよなぁ。」
「カノイ様、ウェアウルフとのコミュニケーションだけ壊れますよね。」
「うぅ、だってワンちゃんなんだもん……。」
昔飼いたくても飼えなかったポメラニアンを思い出すんだもん……。
「ちゃんとお世話するから!というかしてるから!」
「いや、ほんとにペットじゃないんだからな?」
「お世話をちゃんとしているのは知っていますが、ちょっとやりすぎなような。」
「む?我らは長殿の飼い犬だが?」
「「うわ!?」」
ぬっとあらわれたのは元長こと現在ルーと名付けたウェアウルフだ。
ちゃんと首輪にルーと書かれたネームプレートが輝いている。
「え~……いいのかそれで?」
「ま、まぁご本人が良いならいいのですが……。」
「うむ、構わん。このように愛されることはこれまでも、これからもないだろうしな。」
「「あ、愛!?」」
「あ、愛情は感じてくれているのか。」
それはありがたい。何も感じていないわけではないのである。
「もういい!知らん!」
「そうですね、当人同士、合意の上みたいですし、これはしょうがないかと。」
お?何とか解決したぞ!
それにしても私の感性ってそんなにずれているのか?
ちょっと、色々考えなおす必要があるかもしれない。
とりあえず首輪とネームプレート作戦は成功を収めた!
カノイ・マークガーフ、14歳、新しい家族達の名付け親になった冬の出来事である。
感想、レビュー、ブクマ、評価、待ってます!