第56話:新人採用は慎重に行わないと詰む
「うーん、ちょっと困った。」
どうも、カノイです。
現在ちょっと困っています。
というのもメイド長と執事長が結婚したことで離職、故郷に旅立っていったわけですが、この結果ギリギリ保たれていた書類の山が決壊した。
物理的に。
そんなわけで新しい執事を雇いたいのだが、若い人って少ないんだよな。
今のところ頼れる成人済みの子はリボルにヴァイス、ファンにジェイルとエイル、なのだが、全員手に職がある。
いや、ヴァイスは家の手伝いを頻繁にしてくれてはいるが、それでも足りていないのが現状だ。
うーんどうしたものか。
「カノイ様……。」
「うん?どうしたグルート?」
「俺、働けるよ?」
「え!?」
いやいやいや子供の手を借りるわけには……いやしかし本当に人手不足でして……。
「う、うーん、一旦お手伝いから始めてみようか?」
「うん。」
そんなわけでグルートがお手伝いをしてくれることになった初日。
ゆ、有能!
主に書類の整理をお願いしていたのだけれど宛先ごとに分類してくれるし、期日が近い順に積んでくれるから仕事がしやすい!
「グルート、正式に家の執事に採用!よろしくお願いします!」
「うん……カノイ様のお役に立ててよかった。」
ふにっと笑ってそんなことを言うなにこの子可愛い。
わしわしと頭を撫でてやりつつこれからについて考える。
グルートの家系は戦士の家系だったはずだ。
ということは秋頃は仕事を割り振らないほうがいいかもしれない。
そうなってくるとやはり処理する速度が肝心になってくるな。
もう一人くらい雇えないものか……。
「あたしにまっかせなさい!」
「ファン!?」
不安しかないが!?
「なによ!水臭いわね!あたし、体を動かすよりデスクワークのほうが得意なのよ?」
「え、そうなの?」
「そうよ!物を作ったり絵をかいたり小説を書いたり。」
「小説!?何それ初耳なんだけど!」
「あ、やっば。」
「見せて見せて!」
「い、いやよ!まだ未完成なんだから!」
「えーじゃあ完成したら見せてよ。」
「しょ、しょうがないわね!完成したらね!」
胸を張って照れくさそうにそんなことを言うなにこの子可愛い。
家の子達って本当に可愛いな?
そんなこんなでファンの小説を読めることに……じゃなくて、ファンが書類仕事に協力してくれることになった。
その結果は?
「……。」
「ど、どうよ?」
「…………うーんギリ合格!今後ともよろしくお願いしまーす!」
「やったー!これで臭い仕事とはおさらばよ!」
そんな風に思っていたのか。
まぁ確かにカトブレパスのフンは臭いが。
今後はトムが頑張ってくれることを願う。
ごめんな、頑張れトム。
さて、なんやかんやで新しい執事を迎えることができたわけだが、書類仕事はまだまだ終わらない!
父上をとっつかまえて早いとこ終らせないと!
カノイ・マークガーフ、13歳、人材の登用を始めた秋の出来事である。
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