番外編:ウェアウルフルーの一生
「大長様、これは誰の日記?」
「……懐かしいな。これは我の伴侶の日記だ。」
「へぇ……大長様にもこんなに愉快な時期があったんだね。」
「ふふ、そうだな。あの頃は……それはそれは楽しかった。」
「……今は楽しくない?」
「いや、我が伴侶の子孫達を見守るのは、存外楽しいものさ。」
「……大長様、今日の体調はどう?」
「あぁ、不思議と体が軽いのだ。久しぶりに散歩にでもいこうか。」
「え!はい!」
「この木の下だ。」
「なにが?」
「我が伴侶が眠っている。」
「……そっか。土葬だから。」
「……私が死んだらこの木の下に埋めてくれ。」
「縁起でもないな~。」
「……。」
「……わかったよ。約束する。」
「……あぁ、そうか。」
「今時土葬なんて流行らないよ?まったく。」
「迎えにきてくれたのか。」
「え?」
「……。」
「……大長様?」
こうして大長様、ルーと呼ばれたウェアウルフの長は静かに眠りについた。
約束通り、大長様は木の下に埋葬した。
興味本位で、昔のマークガーフについて調べてみた。
どうやら大長様の伴侶、ウェアウルフと人を繋いだ偉大な先祖の名は、私と同じカノイと言うらしい。
そういえば私が産まれた時に名前をつけたのは大長様だったと聞いた気がする。
なぜだろう、似ていたのかな?
いや、カノイと言えば、皆が知ってる絵本の主人公の名前だから、あの頃には定番だったのかもしれない。
大長様ももしかしたらあの物語が好きだったのかもしれない。
真相は村一番の大きな木の下だ。
「お~い!カノイ!」
「カノイ様!」
「今行く~!」
カノイ・マークガーフ、12歳、私が成人を迎えた翌日の出来事だ。