第240話:血縁関係者は贔屓したくなる
「え!?生まれた!?」
大ニュース!初ひ孫です!
「レア!?リアン君!?初ひ孫産まれたの!?」
「産まれたの~!リアンが頑張ったよ~!」
「うん……すっごく痛かった……出産って大変なんだね……。」
「お、おぅ!これが……初ひ孫!」
初ひ孫は大きく丸々としていて王家の風格がある子だった。
「それはたぶん身内のひいき目だよ~。リアン似の普通の赤ちゃんだよ?」
「ふふ、でもほら、口元はレアに似てにこにこしてるよ!」
「かわいいな~生きている間にひ孫が見れてよかった~。」
「ふふ、そうですね!レアもあせっていたんですよ?」
「あ!リアン!それは内緒!」
「あせってた?」
「はい、早く木の実を作らなきゃってざっくり傷を作ってしまって。あの時は血の気が引いたな~。」
「うぐぅ……ごめんってば。」
「「おばあちゃんにひ孫を見せるんだ!」って張り切っていたのでまさかとは思ったんですけれど、王国中の治癒魔法の使い手を集めましたよ。」
「ごめんってば!」
いつの間にやら力関係は逆転しつつあるらしい。
いや、結局のところレアには甘いところがあるあたり五分五分か?
「名前は?決まっているのか?」
「うん!」
「そっか……じゃあおばあちゃんの出番はないな。」
「そんなことないよ?」
「え?」
「この子ね、カムイっていうの!」
「え!?」
「絵本の中の勇者カムイ!」
「それって……。」
「おばあちゃんがモデルになっているカムイだよ!リアンがあの絵本大好きなんだって!」
「はい!なので、お名前の方をいただこうと思って、モデルのカノイお婆様にも許可をいただこうかと……お婆様?」
「おばあちゃん!?」
私はいつの間にかボロボロと泣いていた。
ファンのことを思い出して、ファンが遺していったものが確かにここにあるのだと感じて、改めて泣きたくなってしまったのだ。
「あ、ごめんな。涙は止まってないけど大丈夫だから。カムイの件、ぜひ使ってやってくれ。」
「は、はい!ありがとうございます!」
「おばあちゃん本当に大丈夫?」
「うん、悲しいわけじゃないしな。」
「兄上、失礼します。……従兄弟伯父様!?」
「あれ?カノイおじちゃんだ~!なんで泣いてるの?」
「う~ん?感銘深くて?」
「へ~変な涙~。」
「こら!シアン!」
「あはは!二人を見てると安心するよ。」
いつも通りの二人に涙が止まるのを感じる。
なんとか最後の涙を拭いて、リアン君に向き直る。
「カムイ、君はこの国の王になるかもしれない。」
「カノイお婆様……。」
「ならないかもしれない!」
「お婆様!?」
「あはは!好きに生きろ!カムイ!」
きっとこの子達の子供なら、この国の良い方に導いてくれる野心ある王に育つのだろう。
将来を楽しみにしつつ、残りの人生で見守っていこう。
カノイ・マークガーフ、59歳、最後に王国のその後を見届けた秋の出来事である。
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