第237話:信仰の自由は何よりも自由な証
「神様だー!」
「神様がおこしになったぞー!」
「……お前なにしたん?」
「え?いや~奇跡?」
やってきたるは連合国。
しかし忘れていたのはこの国での私の現状。
遠く離れていたし、結構時間がたっているから大丈夫だと思ったんだけどな~?
「なんでしょうこの、待遇といいますか、環境といいますか。」
「なぜこの白装束の者達は長殿を神輿で運んでおるのだ?」
「神様だからです!」
「我が国に恵みをもたらしてくださった神様!」
「う~ん、否定はできないから何とも言い難い……!」
確かに私がこの乾燥地帯に雨を降らせたのだが、それは弟達が外で遊びたがったからであって、なんなら今あがめるべきはその辺でバカンスを楽しんでいる冬将軍様なんだよな~。
でもそれを伝えるすべは今のところない。
て言ってしまうと一生訂正できない。
甘んじて神様扱いを受け入れるしかない……!
「あ、この果物おいしい。」
「お前……余裕だな。」
「それはトマトという作物であります!」
「え?トマト?こんなに甘いのに?」
「甘いものからすっぱいものまで色々とございます!」
「なんでも転生賢者様が水の少ない地域でも育てられる植物として改良しているのだとか!」
「お~リベルタ君やってるね~。」
ちゃんとうまくいっているようでおじちゃん嬉しいよ。
しゃくしゃくとトマトをすべて食べ終わるころには、連合国の中心、お城についていた。
「おぉ!恵神よ!お久しゅうございます!」
「お久しぶりだな~教祖殿。」
「教祖殿って国王ですよ?」
「国王で教祖なんじゃね?」
「それは……忙しないな。」
「おかげさまでこの季節になるとよく雨が降り、よく作物がとれます!植林のおかげで水不足と砂漠化も防がれ、スラムだった場所も今では観光地として生まれ変わっております!」
「あ、スラム何とかなったのか。よかった~。」
「カノイ、お前スラムを何とかしたのか。」
「すごいですね。言葉では言い表せないほど。」
「?要はまた人を救ったのだろう?」
「恵神よ!新たな望みをお聞きください!」
「え?何?普通に怖いよ?」
「怖いことはございません。この国を見て回って欲しいのです。あなた様のおかげで豊かになったこの国を。」
「……ま、まぁそういうことなら。」
「そもそも観光に来ているのだから目的は変わらんだろう。」
「ルー!今は言わんくていい!」
「そうですよルーさん。宗教ってそんなもんです。」
「神官がそれ言うのか。」
「うん!もういいよな!私達はほら!この国を見て回るから!」
「はい!では、いってらっしゃいませ!」
「「「いってらっしゃいませ!」」」
「お、おう。」
「タジタジだな。」
「慣れてないんですよ。神様扱い。」
「可愛いもんだろ?威張ったりできないんだぜ?」
「あーもう!とっとと行くぞお前らー!」
それからは国の人々に神様扱いされながらも普通に観光を楽しんだ。
甘酸っぱい果物や砂を泳ぐ魚の盛り合わせに細工の細かい民芸品、精巧に作られた私の像と豪奢な神殿を見た時には腰を抜かすかと思った。
やめてくれといったが、どうにも受け入れられる気配はなく、あえなくその像は放置することとなった。
は、恥ずかしい……!
「いや~恥ずかしかった~。」
「嘘つけ最後の方慣れて対応が手馴れてきてたじゃねーか。」
「カノイ様は順応力高いですよね。」
「うぅむ。あんなに人に囲まれることは金輪際ないだろうな。」
観光を終えてまた城に戻ってきてしまった。
というのも教祖殿が「本日は城にお泊りください!」と部屋を用意してくれてしまったので1泊させてもらうこととしたのだ。
「この部屋も豪華だし、カノイ様様だな。」
「カノイ様は神の子ですからね。」
「転生賢者という意味でな。」
「やめて!これ以上称号欲しくないよ!」
ただでさえ発明家だの元国王だの色々とプレッシャーかかってるの!
これ以上よくわからん称号はつけられたくないよ!?
「まぁ何やらかしててもカノイはカノイだしな。」
「カノイ様はマークガーフ村のカノイ様であることは変わりませんよ。」
「うむ、神だのなんだの言われようと我々とともに生きていることには変わりない。」
「リボル、ヴァイス、ルー……!」
我ながら言い伴侶を持ったな。
「さて!明日はこの国の反対側を回ってみようぜ!」
「確かこの国唯一の湖があるんでしたっけ?」
「確か転生賢者が魚を作るのに試行錯誤した痕跡が残っているんだったか。」
「植林の結果森ができたとも聞いたな。」
「今日行ったところとは文化が違うらしいぞ?楽しみだな~!」
こうして連合国巡りは2日かけて行われた。
今回もいい旅だったな~なんて思いながらお土産を選ぶ。
帰ったら皆にも教えてやろう。
お前達のカノイさんは神様らしいぞって。
カノイ・マークガーフ、58歳、最後に連合国のその後を見届けた冬の出来事である。
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