第236話:技術は常に進歩する
「お~栄えてる栄えてる。」
久しぶりに来た皇国は見違えるように栄えていた。
くゆる煙とギラギラのライト、ガッチガチに固められたパイプはまさしくサイバーパンク。
「へ~いいじゃんこういうの、かっけ~。」
「ちょっと健康には悪そうですけどね。」
「空を飛ぶ人間か。新しい種族か?」
今回はのんびりするための旅行ということでリボルとヴァイスとルーもつれてきた。
まぁ簡単に言うと慰安旅行だ。
ということで普段できなかった観光を楽しむ!という目的でこの国を訪れた。
「まずは教会からかな~。」
「毎回寄ってるな。」
「浮気ですか?」
「何?」
「違う違う!普通にお世話になってるの!」
そんなわけで教会に向かった。
「ようこそおいでくださいました!解放の旅人さん!」
「神官殿!久しぶり~!」
「カノイ様がお世話になっております。マークガーフ村の神官、ヴァイスです。こちら、つまらないものですが。」
「おぉ!これはこれはご丁寧に、ありがとうございます!」
「なんか持ってると思ったら手土産か。」
「もともとご挨拶に行こうとは思っていたので準備しておいたんです。」
「神官は律儀だな。」
「いや~でも確かにお礼はしたかったから助かった!」
「いえいえそんな!お礼を言うのは私共の方ですよ!」
「そうだ。最近どんな感じだ?」
「はい!まず国の情勢としましては、若い王がたち、外からの技術を取り入れる運びとなりました!外で見ましたでしょうか?街の明かりなどは光魔法を取り入れております!」
「うん、王国でも見たけど綺麗だよな。光魔法の街頭。」
「そこから着想を得て灯となる火魔法の研究が開始されました!王国から流れていた花火という技術も取り入れられ、カラフルなライトや新しい羽根が開発されたんです!」
「あ、空で飛んでたのって火魔法で飛んでるのか。」
「はい!以前ものは"天使の羽根"と呼ばれていた技術ですが、今回のものは"フェニックスの羽根"と呼ばれています!」
「へ~やってみたいな。」
「やってみますか?」
「実は教会の方で観光客向けにお配りしているんですよ。」
「おぉ!昔と同じだ!」
「そうなのですね!では、父も喜んでいますね!」
「だと思うよ~。やってみようぜ!」
「えぇ、普通に怖い。」
「これ安全なんですか?」
「我も飛べるようになるのか?」
「どうせ観光に必要だろうしやるぞ!」
「お~!飛んでる~!」
「これ結構難しいな!」
「でも慣れれば手軽に空を移動できますよ!」
「おぉ!空を歩いておる!」
「では、行ってらっしゃいませ!」
「神官殿~!ありがとな~!」
それから私達は皇国中を飛んで回った。
なんかよくわからない機械で作られたお菓子に羽根で楽しむアスレチック、煌びやかなイルミネーション!
なんというか、前世の遊園地を思い出す観光向きの国だった。
そうして夜になってから、"炉"のあった場所によってみることにした。
「へ~でかいな。」
「ここがカノイ様の部屋の扉があったという。」
「覚え方がなんか引っかかるな~。ここに雷の妖精が閉じ込め……いや、閉じこもっていたんだよ。」
「今では森中の空を自由に飛び回っているが。」
「いや、うん、あれは予想外だった。」
まさか家に住み着くとは。まぁ帝国への牽制になっているからいいけど。
「幸せそうだしいいだろたぶん。」
「なんやかんやで害はないですしね。」
「だよね~。ここにいても遊べないしな~。」
そう言いながら"炉"に上る。
「お~工場夜景だ。きれ~。」
「工場ってなんだ?」
「わかりませんが、確かにきれいですね。」
「イルミネーションとは違った発光の仕方だな。」
のんびりとゆっくりと、観光を楽しみ、夜景まで。
これはかなり贅沢な旅行だな~。
「……15商会に提案してみるか。」
「また仕事の話してるぞ~。」
「もう働かなくてもいいじゃないですか。」
「職業病、という奴だろうな。」
うむぅ、どうしてもそういう目線で見てしまうのはもうしょうがない気がする。
だって50年間村おこしをしていたのだ。
もう身に沁みちゃってるよ。
まぁ、でも今日一日は、楽しんだってことだけを覚えていよう。
思い出はどこまでも持っていけるからな。
カノイ・マークガーフ、58歳、最後に皇国のその後を見届けた秋の出来事である。
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