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第234話:名前の意味は親の愛

「あれ?また来たの?」

畑を耕しながらこちらを見るのはいつぞやの今代の転生賢者君だ。

「よう、後継者!教会とかに閉じ込められるわけじゃないんだな。」

「物騒だな!そもそもこの国の政権をあんたがぐちゃぐちゃにしたんだろ!まぁそのおかげで自由にやらせていただいとりますよっと。」

「あ~なるほど。国としてあんまり機能してないからか。集落ごとの発展は著しいらしいが。」

「そんな一気に発展してたら畑仕事なんてしてないよ~。まぁ楽しいからいいけど。」

「君は何をしようとしているんだ?」

「とりあえず、野菜の改良だな。緑地でも過酷な環境でも育つやつを作りたい。」

「おぉ、ちゃんと考えている。えらぁい。」

「適当にのらりくらり生きてるやつとは違うんだよ!こちとら世界中の期待を背負っているんだからな!」

「押しつぶされないようにね~。」

「失敗してもなんてことないさ。次が何とかしてくれるだろう。今までの信頼っていう遺産もある。」

「……そうだなぁ。」

私はそれをいやに思って、押しつぶされると思って引継ぎはしなかったが、確かに過去に生きた彼らの積み上げてきた信頼という遺産はかなり大きい影響力を持つものだ。

「まぁ一代くらい何にもできなくても誰も怒らんだろう!」

「軽いな!君も信頼を積み上げるんだよ!」

「そんなのできるかわからんだろう。」

「できるよ。君なら。この重みを受け入れようとした君ならね。」

「え~?」

「逃げようと思えば私のように逃げることもできたのに、君は逃げようとしなかったじゃないか。」

「そりゃあ面倒くさいからな。」

「ははは、それだけだったらこんな畑仕事もしてないよ。王国に行けば好待遇で城に幽閉されるだろうしね。」

「幽閉は嫌だな~。」

「自由に定住しているようで、がんじがらめの信頼と期待にまとわりつかれている現状を受け入れた君はきっと成功する!私が保証しよう!」

「いやな言い方だな~。……まぁ、でも、ちょっとは信じてやるよ。偉大な最強の転生賢者様のご意見だからな?」

「だからそれやめて!」

「あはは!俺のこと名前で呼ばないからだよ!」

「だって名前知らんし。」

「あれ?名乗っていなかったか?」

「うん。」

「そうか……そりゃ呼べんは。」

「そうだぞ!さぁ名乗れ!つけられた、残される名じゃなくて!君自身の名前を!」

「……俺はリベルタ!死ぬまで覚えとけよ爺さん!」

「おう!リベルタ君!私はカノイ!あと数年の命だ!」

「そういう爺ジョークやめるよ!早死にするぞ!」

「なぁにこういう奴が案外寿命を全うするのさ!」

こうして私と彼、リベルタ君の最後の会話は終わった。

彼が作った野菜は多くの国の食料問題を解決するのだが、それはまた別のお話。

カノイ・マークガーフ、58歳、次世代の転生者にすべてを託し終えた春の出来事である。

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