第232話:例外があるから大丈夫ということもある
「カノイ様、あの、そろそろ……。」
「おっと今回は忘れてないぞ!神の木の開放だ!」
10年に一度の大イベント!
神の木、開放でーす!
「使う奴いるか?」
「いやぁ今のところレアしか結婚してないからなぁ。それも王族御用達の神の木使うだろうし。」
「意味ないじゃないですか。」
「いやいや、移民の人達が使うかもしれんし。」
「孫達は望み薄だぞ~。」
「まぁ彼らにはあと50年はあるとも言えますしね。」
「う~む、今回は我が家にはあんまり意味のない開放かも?」
「だなぁ。」
「ですね。」
「カイとケイがうちの子たち貰ってくれたらな~。」
「老年の者からの御厄介は大きなお世話でしょう。」
「それもそうか……あ!フェリスとエリンとデニスなら使うかも!」
「あ~そういや結婚したんだっけか。」
「すぐ冒険に戻っていきましたから忘れてましたね。」
「最近忘れっぽいような……むむむ、老化か?」
そんなこんなで今年は不作の年になりそうだ。
まぁ今までが豊作すぎたともいえるが。
「流石に僕らはもうやめといたほうがいいと思いますね。」
「最後まで責任持てんしな。」
「え、普通に60過ぎたら作ろうかと思ってた。私無責任かも。」
「お前の場合あと10年は生きる気でいるのがダメなんだと思うぞ。」
「持ってあと数年ですよ。」
「やめて!老人の死ぬ死ぬネタは悲しくなるから!」
まだわしは若いぞ!
そういっていた近所のおじいちゃん、元気かな。
腰もまっすぐで元気いっぱいだったからあれくらいのバイタリティで生きていきたい。
「まぁ老いは平等に訪れますし、死もまたしかりですよ。」
「そんな悟ったこと言わないでよ。65歳まで生きようぜ?」
「ファンで61だぞ?俺達には無理だろ。」
「あれだけ元気であれでしたからね。」
「まぁファンは死ぬまで元気だったから……。」
あいつは例外中の例外だよ!
多分あの世から元気に私達を眺めてるよ。
もしくは転生して元気に世界征服とかしてそう。
わぁ、楽しそうな姿が目に浮かぶ!
懐かしい姿を思い出してくつくつと喉で笑ってしまう。
ジェイルとエイルもいつも通り面白いものを見るような目でこちらを見守っているかもしれない。
もしくは転生してまた双子として勇者にでもなっているかもしれない。
そう考えるとちょっと愉快だ。
私が転生しているのだから、きっと彼らも来世を謳歌するのだろう。
世界というのは案外そういうものだ。
「何笑っているんだよカノイ?」
「ファンのことですか?彼は最期まで愉快な人でしたから。」
「うん、まぁそんな感じ!」
さて、私が死んだら次はどうなるんだろうか?
願わくばまた、皆と愉快に暮らしたいものだ。
カノイ・マークガーフ、57歳、新しい世代への不安を覚えつつも信じて待つ心持でいようと思った秋の出来事である。