第231話:先人の知恵は馬鹿にできない
「昔々、あるところにわがままなお姫様がおりました。」
「カノイおばあちゃん!もう絵本を読んで貰う年でもないよ!」
「マオもレオもリノもアルももう成人したんだから!」
「そうか……そうか。」
「うぐっそんな寂しそうな顔しないでくれよ。」
「おばあちゃん、アルは付き合うぞ。」
「そうか?ありがとな!じゃあ今度はこっちを読むか!『マークガーフ村の日常』!」
「それ字ばっかりの奴だろ!」
「自伝は読み聞かせるものではないのでは?」
「まぁまぁ、おばあちゃんの思い出話も込みで話してやるよ。」
そんなこんなでファンの本は無事出版され、我が家にもやってきた。
ちなみに『マークガーフ村の日常』だが、分厚い本5本分という超大作だ。
彼なりに省くところは省いたっぽい痕跡は残っているが、まだ1巻の途中だ。
読み終わるまでに私の寿命が尽きそうだ……。
まぁ冗談はさておき、ちょうどいい日記がここにあるのだからと最近は皆に私の人生について語って聞かせている。
ご老人の自分語りだ。
見逃してほしい。
「で、どうなったの?」
「ウェアウルフは仲間になっているんだからカノイおばあちゃんが勝ったんだよ!」
「でもルーじいちゃん強そうだぜ?」
「むーどちらが勝つかわかんない。」
「あははは、それが実は戦ってないんだな~。」
「「「「え~!」」」」
「じゃあまず能力の説明からだな。」
そんなこんなで能力についても本に書かれてしまっていたのでネタばらししている。
まぁファンに見せていた側面だけだと瞬間移動ってことになってるんだけどね。
家族にくらい全貌を話しておいてもいいだろうと、この数十年で思い直した。
「おばあちゃんすごい!」
「なにそれ!かっこいい!」
「特殊能力だ!」
「我にもある?」
「う~ん、どうだろうな?遺伝はしてないっぽいが。」
「「「「え~。」」」」
「あはは!まぁおばあちゃんだけ特別、な?」
こんな感じでシェリル達やノア達にも伝えている。
本当は転生賢者だからっぽいのだが、まぁその辺は濁したままでいいだろう。
今ばれたところでどうにかできる年齢でもないが、余計な混乱は産まない方がいい。
ファン……彼は最後に言った。
自分の役割は終わったから安心して死ねると。
そういった意味ならば、私は今、安心して死ねるのかもしれない。
……いや、まだだな!
ひ孫の名前を付けるまでは死ねないな!
よし!まだまだ生きるぞ!
目指せ!60歳!
カノイ・マークガーフ、57歳、決意も新たに長生きっを心に決める夏の出来事である。
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