第221話:遺伝子は人間より正直
今日も今日とて終活。
今日は遺影用の肖像画を描いてもらっている。
「どうせならもっと若い時に描いといてもらえばよかったな~。」
「あはは!お任せください。5年は若く描きますよ!」
王都の方からわざわざ来てくれた画家さんはなかなかに気のいい人だ。
「お、じゃあもっと若くもできる?20代のころとか一番描いてほしいかも!あと家族全員の集合絵も!」
「お任せください!カノイ様は王都にいらっしゃるたびに面白いことをすると評判でしたからね!よく覚えておりますよ。」
おっと、どうやら昔から知っていてくれる人だったっぽい。
しかし、功績なんか残したか?
最初は剣術大会でリボルとヴァイスが優勝。
その次は冒険者として登録。
ヴェークさんに手を振ってもらう……。
う~ん、認識さているだけだと結構面白いかも?
あ、あと飛竜便か。
確かになかなか愉快だな。
「本当に、カノイ様のおかげで私のような芸術家も生きやすい世の中になりました。」
「え?もともと結構重宝されていたりしなかったの?」
「全然ですよ!確かに王家の御用聞きならともかくとして一般的に芸術を楽しむ人はほとんどいませんでしたから。」
「なんでだ?」
「学がなかったからですよ。効率の良い仕事の仕方から計算まで、気楽に生きていくうえで重要になってくる学びを得る機会がもともとはなかったんです。」
「なるほど?」
「国中の人々がある程度の額を持つようになると、心と生活に余裕が出てきて芸術を楽しむことができるようになってきました。カノイ様のように、死ぬ前に自分の姿を残したいと依頼してくる人も増えてきているんですよ。」
「そうか……皆の生活に余裕が出てきたのはいいことだな。」
「えぇ。ぼったくられることもなくなり、足りない資材は貿易により取引が行われるようになり、余裕があったら人を助ける。いい世の中になったものです。」
いい世の中になったか~……私がここに来た意味があるといわれているようで、ちょっと嬉しいな。
転生賢者なんて大層なものにはなれないと思ってきたけれど、世界っを救ったり、世の中を良いものにしたり、なんやかんやでこの世界に干渉してきたな。
これは結構胸を張っても許されるかもしれない!
まぁ結局は私や子孫たちの生きやすい世の中にしたいだけなんだけどね。
「う~ん、なかなか難しいな。特に目が……。」
「あ。」
そういえば私の眼は金と青色が何とも言えないコントラストを描いている。
か、描きづらそう。
「無理にリアルにしなくてもいいよ?青か金一色でも間違いではないし。」
「いえ!折角綺麗なんですから再現させてください!」
「お、おう。」
褒められちゃった。
まぁそうだよな。
私も私の見た目は大好きだ。
父上と母上を思い出すからな!
カノイ・マークガーフ、54歳、完成した肖像画を見て血の繋がりに懐かしい面影を感じ入る冬の出来事である。
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